様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「それで、ルークは?」

「ちょっと、海まで」

「はあ?」

 それから約一時間後、みんながそれぞれに宴会に向けて準備をしている最中、俺はヴィルマと共に天地の森の北東方の海岸に立っていた。
 一番近くにある南方の海は天地の森を越えないと来れないのだが、子供の頃に飛翔で天地の森の上空を突破してポイントを覚えたので、瞬間移動ですぐに来れていたのだ。

 昔は、魔法で大量に塩を作ったり、海産物を獲ってから焼いて食べたのを思い出す。

「海」

「海と言えば?」

「海の幸」

「正解だ」 

 肉類の確保は他の人達に任せるとして、俺はヴィルマを使って魚介類を確保しようとしていた。
 せっかくの宴会なので、珍しいご馳走があった方が良いと考えた。
 俺が単純に食べたかったからだ。

「お魚、食べたい」

「食べた事が無いのか?」

「コヌルとか、ナマサはある」

 コヌルとナマサとは、見た目はそのまま地球で言う鯉とナマズの事であった。
 河川などで大量に獲れるので、王都では比較的安価で売られている。
 泥抜きをしてから、塩や香味野菜と共に煮込んだり、フライのように油で揚げて食べるのが普通であった。
 他にもウトクと呼ばれるウグイにフーハと呼ばれるフナなどが、庶民の味となっているようだ。

「今日は、海の魚介類を食べるぞ」

「おーーーっ」

 少々抜けた感じのヴィルマの返事であったが、その目はいつもの食べ物を貪欲に欲する目となっていた。

「それで、海に潜って獲るの?」

「まさか」

 肉類に人数を回したせいで二人しかいないが、俺は魔法が使えるし、ヴィルマは怪力の持ち主である。
 ならば、あの手しかあり得なかった。

「二人だけの地引き網作戦です」

「網で獲るの?」

 事前に使う事があるかもしれないと魔法の袋に地引き網を購入して入れていたので、それを飛翔で海上から投入。
 すぐにヴィルマと魔法で身体機能を強化した俺とで引く作戦になっていた。
 網の投入ポイントとかは素人なので詳しくは無かったが、あまり獲れなければ何回か試してみれば良いと思う事にする。

「ヴィルマ、この地引き網の片方の紐を持っていて」

「わかった」

 続けて俺は、もう一方の引き綱と網を持って飛翔で海上へと向かう。
 持っている網を少しずつ沖合いで弧状に投入してから、ヴィルマの待つ砂浜へと戻って来たのだ。
 厳密にやると網船なども必要なのだが、それは俺の飛翔魔法によるバラ撒きで対応する事とする。

「駄目なら、何回か試すさ」

 元々怪力であるヴィルマと身体機能を魔法で強化した俺で海上に弧状に撒いた網を引き寄せていく。

「お魚」

「ゆっくりと俺とタイミングを合わせて引け」

 本当に獲れるのか心配だったのだ、今までに誰も網を入れていなかったのが幸いしたのか?

 砂浜へと引き揚げた網には、大小数百匹にも及ぶ魚が入っていた。
 サバに似た魚、アジに似た魚、ヒラメに似た魚。
 他にも沢山いるが、今は準備した魔法の袋に仕舞っていく。
 毒探知の魔法で怪しい魚は除外していたのだが、中には変わった獲物もかかっていた。

「カメさん」

「それも食える」

「美味しいの?」

「美味しいらしい」

 全長二メートルほどの海亀が網に引っかかっているのをヴィルマが見付けていた。
 肉は食べられるし、甲羅はべっ甲細工の材料として王都では高額で取り引きされている。

「わかった」

 ヴィルマは、躊躇する事なく海亀に止めを刺してから魔法の袋に放り込んでいた。

「もっとお魚が欲しい」

「そうだな」

 思ったよりは獲れていたが、もう少し魚はあった方が良いかもしれない。
 そう思った俺達は、もう三回ほど別のポイントで地引き網漁を行う。
 その結果、結構な量の魚が獲れた。
 更に近くの岩場で、エビ、カニ、貝類なども獲る事にする。

「今度は、カニ獲り用の網でも準備しておくか」

「今日は、私が獲る」

 そう言うなり、ヴィルマは着ている服を脱いでから岩場近くの海へと飛び込んでいた。
 そう言うとヴィルマのヌードでもとか予想しがちであったが、下に全身タイツのようなアンダーウェアを着ていたようだ。ハクカやファラやイーナより胸があったらしく、割と巨乳であった。

「川や湖や沼でも獲物を獲るから」

 沢山食べるためにヴィルマは泳ぎなども達者なようであった。
 そして海に潜ってから数秒後、まず最初の一匹が海上から顔を出す。

「一杯いる」

「大きいのだけを獲ってくれよ」

「わかった」

 ここでヴィルマだけに任せるのも何だったので、俺は素早く水中呼吸の魔法を唱えてから海へと潜って行く。
 別に泳げないわけでもないのだが、ヴィルマのように海中で漁をしながらというのは難しかったからだ。
 その点、この水中呼吸の魔法を使えば海中でも地上と同じように行動が可能だ。
 何しろこの魔法は、自分の周囲を空気の層で覆ってしまうのだ。

「一杯いるなぁ」

 俺も加わり、二人で全長一メートル近いエビに、同じく全長一メートルを超えるカニ。
 リンゴほどの大きさのサザエに、全長三十センチほどもあるアワビなどを次々と採取していく。
 確か正式名称を前に図鑑で見たような気もするのだが、今は食べられるので良しとする事にする。

「ルーク様、美味しそう」

「試食するか?」

「食べる」

 結構な量が獲れたので、まずは一休みという事にする。
 魔法の袋からバーベキュー用の金網を取り出し、それを竈型に組んだ岩の上に乗っけてから、火を付けた炭をくべていく。
 ある程度金網が熱せられてから、そこに貝や切り分けたエビやカニなどを載せた。
 暫くすると、ほど良く焼けてきたので、少し醤油を垂らせば完成であった。

「美味しそう」

「火傷しないようにな」

「いただきます」

 ヴィルマは、美味しそうに焼けた貝やエビ、カニを次々と口に入れていく。
 やはり良く食べるので、次第に焼く作業が間に合わなくなるほどであった。

「ご馳走様」

「美味しかったか?」

「うん」

「そうか、良かったな」

「もっと一杯獲る。ハクカ達の分も一杯」

「そうだな」

 ヴィルマは良く食べるし怪力であったが、見た目は大変に保護欲を誘う女であった。

「そろそろ帰るか」

「沢山獲れた」

「そうだな」

 数時間後、宴会分と暫くは俺達が食べられる分を確保したので、今日はこれで戻る事にする。

「ヴィルマ、服を着る前に・・・・」

 海水なので、俺は海から上がってきたヴィルマの姿に赤面した。
 濡れたアンダーウェアがヴィルマの素肌に張り付き、髪の毛から海水がヴィルマの胸元に落ちていき、乳首がうっすら見えた。

「ルーク様」

「・・・なんでもない」

 ヴィルマの声にワレに帰り洗浄魔法をかける。

「ベタベタしない」

 この魔法は、冒険者は冒険中に風呂に入れないので、自然と開発された魔法であった。
 あまり魔力を消費しないので、初級レベルにでも簡単に使えるのが特徴で、これを使える魔法使いは女性比率が高いパーティーでは引っ張り凧になるそうだ。
 冒険中でも身嗜みには気を使いたいというのが、女性心理なのであろう。
 俺も自分の体に洗浄魔法をかけて体に付いた塩分を落す。
 ヴィルマの着替えも終わり、さて帰ろうとしたその時であった。
 突然、彼女が愛用の戦斧を構え、海上に向けて鋭い視線を送る。
 続けて俺が海上を見ると、その沿岸には全長二十メートルほどの竜に似た生物がこちらに向かって来るのが確認できた。

「サーペント(海竜)か……」

 サーペント(海竜)は、見た目は竜に見えるが実は魔物ではない。
 大型海生肉食動物のカテゴリーに入る海の野生動物であった。
 普段は、大型の魚類や、鯨・イルカなどを捕食し、時には、海上を飛ぶ海鳥などを食べる事もある獰猛な奴なのだそうだ。
 ただ、基本的に臆病なので大型の船ならば襲われない。
 向こうが先に逃げてしまうからだ。
 それに人間の活動領域には滅多に姿を見せず、普段はもっと遠洋を生活拠点にしていると、前に見た図鑑には書かれていた。

「デカいな」

 ところが、二十メートルでは平均的な大きさなのだそうだ。
 このくらい大きくないと鯨など狩れないのであろう。

「しかし、あの海竜はなぜ俺達に向かってくる?」

「餌だと思っている」

「だよなぁ」

 たまたま沿岸に来たら、俺達という餌があったので捕食しようとしている。
 サーペント(海竜)に限らず、この手の大型肉食獣は毛が少ない人間を見付けると喜んで捕食しようとするのだ。
 なので、海上で遭難して小船や筏の上で遭遇すると、まず生き残れないと考えた方が良いであろう。

「ルーク様」

「何だ?」

「私が倒す」

「分かった」

 サーペント(海竜)は大きな海生肉食動物なので、当然一般人や漁師の手には負えない。
 普段は遠洋に居るので滅多に捕獲されないのだが、肉は味が良い珍味として。
 骨・牙・ウロコなどは、武器や防具の材料として高値で取り引きされていた。

「ここは、私の大技で」

「駄目そうなら、すぐに俺に言ってね」

「わかった」

 一言頷くとヴィルマはこちらに迫り来るサーペント(海竜)に向かって戦斧を構え、そのまま目を閉じて集中に入る。
 すると数秒後には、徐々にヴィルマの体から探知される魔力の量が増えていた。

「(そうか、一瞬で少ない魔力を爆発させるのか)」

 ヴィルマは、精々で初級から中級の間くらいの魔力しか持っていない。
 魔法も普段は筋肉に効率良く魔力を循環させるくらいしか出来ないそうだ。

「(普段は、節約しながら使っている魔力を一時的に大量に燃やすか)」

 一時的に爆発的に身体能力が上がるが、後は魔力が枯渇してしまうので、もう後が無い時に使う大技のようであった。
 ヴィルマは、目を瞑ったまま集中を絶やさずにいた。
 その間にサーペント(海竜)はこちらの至近にまで迫っていた。
 そして、水際からその長い首をこちらにかまげて俺達を捕食しようとしたその時、ヴィルマはまるでブーメランでも投げるかのように戦斧をサーペント(海竜)に向かって投げていた。

「あんなに重い戦斧を投げた!」

 もう少しで二つの餌が食べられると思ったサーペント(海竜)にとっては、寝耳に水であったと思う。
 わけもわからないままにヴィルマによって投擲された戦斧によって首を切り落され、頭部を無くした首の切り口からは血が噴水のように湧きあがる。

 暫くすると投擲した戦斧が上空で弧を描いてから戻ってくるが、それすら彼女は普通に柄を掴んで回収していた。
 恐ろしいまでの動体視力と、とっておきの大技とも言えた。

「血抜きは早い方が、お肉が美味しくなる」

「確かにそうだけど……」 

「もしルーク様なら、どうやって倒した?」

「そうだな……」

 鱗が高く売れるし、大型ではあるが竜ほどパワーがわるわけでもないのだ。
 凍結の魔法で胴体部分を動けなくしてから、脳天に岩製の槍を魔法で作って一撃。
 もしヴィルマが駄目なら、こんな作戦を考えていたのだと教える。

「私と同じ。ルーク様も海竜の胴体を傷付けると食べられる部分が減ると思った」

「まあ、そうだね」

 最後に思わぬ収穫物もあったが、俺達は無事に海産物を得てファブレ領へと戻るのであった。



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