様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「さてと到着だな」

「しかし、『瞬間移動』って便利なんだな」

 人数が増えたので、セイと一緒に『瞬間移動』を使いファブレ家本屋敷の裏にある森へと移動した俺達であった。
 ヴィルマは、飴を舐めながらグラムの護衛達と何か話し合いをしているようだ。
 多分、護衛計画の相談なのであろう。

「ヴィルマは、ルーク付きだからな」

「はあ……」

 リョウと話をしている間に五人での相談は終わったようだ。
 五人共、俺を護衛するのが任務なのだが、リョウには地方巡検視の仕事がある事になっている。
 とはいえ、普通なら通達が来てから山道を2ヶ月半かけて来るしかない地方巡検視が俺達と一緒に姿を見せ、しかも団長はリョウ。
 さすがにトニーでも、額面通りに受け取るはずがなかった。
 王国政府が、この領地の統治体制に不満を持っているのだと、ある意味、宣戦布告とも言えたからだ。

「親父は知らんが、トニー兄貴の恨みは俺にも向く。そうするとルークへの圧力も減るわけだな」

 ともかく、まず最初にリョウは、父やトニーに挨拶に行かなければならない。
 なぜなら、地方巡検視としてここを訪れた事になっているからだ。

「ハルト達は警備隊に所属しているし、貴族の子弟ではあるから団員に任命されている」

 なので、リョウと一緒に挨拶に行かなければならないのだ。

「ところが、ヴィルマは団員ではない」

「私は、ルーク様の私的な護衛」

 俺から貰った飴をバリバリ食べながら、ヴィルマは自分の役割を語っていた。

「あと、必要に応じて伽もする」

「それは、ハクカとスズネと相談という事で」

「ルーク様がそう言うなら」

 ヴィルマは、意地でも伽をするとは言わなかった。

「その飴、美味しいか?」

「前から食べたいと思っていたお店ので美味しい。自分では買えないから」

 王都にある貴族御用達のお店の飴なので、ヴィルマは今までに食べた事がなかったらしい。

「ただ、飴は舐めた方が美味しいと思うぞ」

「次からそうする」

 とにかく、全員の移動と事前の相談なども終了したので、合計14名にまで増えた俺達は、ファブレ領本屋敷裏の森を出て、父やトニーの元に急ぐ。

「リョウ……・・・いや、ファブレ騎士爵でしたな」

 二年ほど前、グラムが王都ストラトス家に婿入りし、リョウもヘルムートも法衣騎士爵位の爵位を与えられている。
 なので父は、実の息子相手に同爵位の貴族としての言葉遣いを崩さなかった。

「お久しぶりです。実は、先日王国から地方巡検視に任じられまして」

 王国政府から、領地が開かれてから百年以上も経つのに未だに一度も巡検視が行っていないのはおかしい事であると、だが、視察にかかる移動時間などを考慮すると、そう簡単には巡検視は送れない。

 そこで、魔法で移動可能なファブレ男爵を移動役に現地の情勢に詳しい王都警備隊所属のリョウを巡検視に任命したのだと。
 と言いながら、リョウは王国政府発行の正式な巡検視への任命状と父に宛てた王国政府からの巡検視への協力命令書の二枚を見せていた。

「これは、オフレコですけど。地方巡検視の実情は、噂通りなのでそこまで警戒をする必要はないかと」

「我が領では、滅多に犯罪も起きませんからな」

「それは、私でも知っていますから」

 リョウと父との間で、白々しい会話が続く。 
 ここに来た理由などリョウ自身も含めてわかり切っていたのだ。

「それで、隣の男爵殿」

「これは失礼。トニー殿」

 リョウの顔を見てから余計に顔を渋くさせているトニーであったが、今度は俺にその来訪目的を聞いていた。

 昨日の今日なので、例の任務が成功したのか?

 それとも失敗したのか?

 そのどちらかしかないのであった。

「任務は無事に成功しました。ファブレ諸侯軍の遺品の回収にも、粗方成功したものと」

「そうか」

「遺品に関しては、遺族の方に見て貰うしかないでしょうね」

 そうなると、どこかに遺族達を集める必要がある。
 確かファブレ諸侯軍の犠牲者は約43名だったので、その遺族が全員集まれる場所となると先にバザーを行った広場しかなかった。

「夕方にでも集まって貰い、そこで遺品を見て貰うと」

「いや、必要ない。それらしい物は、全て置いていけ」

「はあ?」

 ところが、ここでトニーがアホみたいな事を言う。

「うちは貧しい農村なんだ。先日のバザーもそうだが、そう簡単に領民達を集めろとか言われても困る。遺品の照会作業は、俺がやっておく」

「いえ、お断りします」

「何だと!」

「怒る事ですか?」

 怒るということは、なにかやましいことでも考えているのであろう。
 今の時期は、農閑期なのでさほど忙しくないので、集まってもらうことは可能なはずだ。
 もしトニーに任せてしまったら、彼が全て自分のポケットに入れかねない。
 どうも遠征先で狩りの成果があったようで、先々代ブライヒレーダー辺境伯から臨時報酬を得ていたようだ。思っていた以上に金貨等がびっしりとあった。

「俺は、ブライヒレーダー辺境伯様から責任を持って遺族に直接返すようにと言われているのです」

「貴様! 俺はこの領地の!」

「次期当主就任予定者ですよね?」

 俺の言葉にトニーは更に顔を真っ赤にさせる。
 そして、その情況を良くないと思ったのであろう。
 珍しく父が、先に俺に話しかけてくる。

「遺族を呼んで遺品を見せるのは構わないが、本当に判別が付くものなのか?」

「実は、ブライヒレーダー諸侯軍よりも簡単にです」

 ブライヒレーダー諸侯軍の場合、幹部連中、魔法使いなどは装備の差で判別が容易であった。
 ところが一般兵士ともなると皆同じ装備品なので誰の物か判別が難しい。
 逆に、もう一方のファブレ諸侯軍の方は判別が容易だ。
 みんな、統一されていないバラバラの装備であったからだ。

「わかった。許可をしよう。遺族の者達には、夕方にでも広場で遺品を見に行くようにと」

 夕方なのは、農作業を終えてからという事であった。

「あと、この領内にはいないと思うが、成りすまして遺品を持ち去る輩が出る可能性もある。その補佐にヒルゼンを使うと良い」

 父は少しだけ表情を曇らせながら、俺にヒルゼンを助けに出すと伝えてくる。

 父とヒルゼン。

 過去の因縁などもあり、その関係が良好とはとても言えない。
 だが、能力的に考えて父は使わざるを得ないという事なのであろう。
 もう一つ、この仕事をトニーに任せるとトラブルしか起きないとわかっているのであろう。

「今日はこんなところかな? 巡検視殿は、私の案内で領内を視察して貰う事にして」

 今日、父は、リョウ達を領内に案内する予定なのだそうだ。
 地方巡検視本来の仕事を行うのであろうが、既にトニーでもリョウ達が俺の護衛戦力である事に気が付いている。
 かと言って、建て前を放棄するわけにもいかない。
 父は何食わぬ顔でリョウ達を実家なので見慣れている領内へと案内し、リョウも領内の治安に問題はないかと形だけのチェックを行う。

「ところで、ファブレ男爵殿は本日の予定は?」

 遺品の照会が夕方なので、それまでは何をするのかと父は尋ねてくる。

「数日、大人数で滞在するので、出来れば」

「確かに狩りや採集は必要ではあるか」

 と言うか、それをしないとまた飯はパンと塩スープになる可能性がある。
 さすがに今の俺でも、あの食事は勘弁して欲しいところだ。

「採集と狩猟は許可をしますが、その前に……」

「その前に?」

 俺は、父から一番大切な事を忘れていると指摘されてしまうのであった。



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