様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 ヴィルマを連れて、戻ってくる。

「ヴィルマ・エトル・フォン・アスガハン。ルーク様に頼まれてバザーの手伝い」

「マリーよ」

 ヴィルマの自己紹介は問題なく終わった。

「あなた」

「手伝えって事ですね。わかります」

「(ルパン兄さん、見事に尻に敷かれているな……)」

「(ルーク。あの分家の男達は、基本みんなそうだから)」

 こうして始まったバザーであったが、さすがに7人では人手が足りなかった。
 戦力として当てにしていたセイは、その足でどこかに出かけてしまった。



 そこで、ルパンと分家の婿さん達の出番となる。
 悲しいかな、この世界における男尊女卑の枠から外れている彼らは、マリー義姉さんからの命令で、本村落と残り二つの村落との間の広場でゴザを広げ、俺が魔法の袋から取り出した品物を並べ、持って来た木切れに値段を書く仕事をしていた。

 子供達も全員手伝っている。
 バザーが始まれば、店番も手伝ってくれるそうだ。
 こういう光景を見ていると前世で子供の頃に自治会の夏祭りで縁日の屋台を手伝った記憶が蘇ってくる。
 今度、唐揚げでも作ってみようかと思ってしまうほどだ。
 ルパンはその様子を、まるで手品師だなと感心しているようだ。
 ゴザの上には、塩が置かれ、これがメインなので1kgを百個ほど置いている。
 他にも、胡椒などのスパイス類、黒砂糖やメープルシロップやはちみつといった砂糖類、ラムやエールなどの酒類などだ。
 売れる保障も無いが、別に売れなくてもバザーを開けばヒルゼンからの依頼は達成なのだ。

「これは、結構な品揃えで感謝いたします」

「ところで、父上との条件はちゃんと履行されるんだろうな?」

「はい。それは、確実に」

 販売利益の二割を税として収める。
 これが、このバザーにおける俺達の義務であった。
 つまり、利益が上がらなければ税を収める必要が無いのだ。

 最初は、トニーが売上高の三割を収めろと言ってきたらしい。

 当然、ヒルゼンの説得で撤回させられていた。

「そこは、無事に交渉が成立したという事で。私、先ほどから全領内を回って宣伝して参りました」

 次第に領内中から、人々が家族連れで集まり始めていた。

「人数が、多くない?」

「緊急の仕事がある人以外は、全員がここに来るはずです。仕事が終われば、その人達も来るでしょう」

 驚くファラにヒルゼンが答える。
 ほぼ全員が、商隊以外から物など購入した事が無い人達なのだ。
 全員、今日までに集めた金を持ち、目を輝かせながらこちらにやって来る。

「みんな、お金があるのかな?」

「無い事もないんですよ」

 小麦や薬草や特殊な動物の素材などを売り、決められた量の塩や僅かな嗜好品のみを買える生活なので、外地の人達に比べると現金収入は少ないが、貯蓄が無いわけでもないのだ。
 食べるのは、自給自足や領民同士の物々交換で済み。
 あとは、たまに鍛冶屋から農機具などを買ったり、職人から基本的な生活用品を買うくらいだ。
 あまり、現金が必要な生活をしていなかったからだ。

「税と食べる分以外の麦を売って、何年もコツコツと貯めるのですよ」

「なるほど」

「ここは、そんな田舎なのですな」

 ヒルゼンは、ファラに領民達の懐具合を説明していた。

「さて、そろそろ始めるか」

 ようやく始まったバザーであったが、みんな飛び付くようにして品物を購入していく。
 まず最初に、塩を男達が纏めて複数購入し、次々と家へと運んで行く。
 皆、領内で自給が出来ないので、万が一の事を考えて備蓄しようと懸命なようだ。

「そんなに安くないんだけどなぁ」

 現在、塩は、ブライヒブルクでは一キロ五セントくらいだ。
 日本円で五百円くらいで、ここ暫くは相場は変動していない。
 王都は内陸部にあるので、一キロ八〜十セントくらい。
 前回の商隊は、領民達に一キロ10セントで販売したそうだ。

 高いのか?

 安いのか?

 判断に悩むところであったが、輸送の手間を考えると完全に足が出る。
 商隊が、ブライヒレーダー辺境伯からの支援で運営されているのも納得できるという物だ。

 ちなみに俺達は一キロ五セントで販売している。

 ブライヒブルクにおける標準的な塩の値段であった。
 黒砂糖も値段を下げて売っていた。

「白い砂糖は売ってないんだな」

「あれは健康に害があるので、取り扱っていないんです」

「そうなのか」

「ええ」

 白砂糖の害に関しては、前世でかなりやっているのだ。
 あれの製造工程を見ていたら、人間に害悪しか起こさない代物だと思うのだ。
 ちなみに黒砂糖は、サトウキビを搾って、煮沸させて濃縮しただけの代物なのである。
 かえって黒砂糖の方が健康的なのである。
 これもブライヒブルクと同じで一キロ50セント。
 王都だと、一キロ100セントから200セントくらいだ。

「おっかあとガキが喜びそうだな」

 結構な値段なのに砂糖類も飛ぶように売れていく。
 他の調味料やスパイスや酒なども小量ずつ試しに購入しているようだ。

「綺麗な生地」

「素材は木綿ですけど、王都で流行の色に染めてありますから」

「思っていたよりも安いですね」

 値段は、大体相場を知っているファラやリーリンやハクカが安目に付けていた。
 購入者は女性ばかりで、みんな自分や家族の分の服を自作するからだ。
 加えて、裁縫道具なども良く売れていた。

「お母さん、お菓子買って!」

「はいはい」

「私は、絵本が欲しい」

「聞いた事が無い話だな。買うか」

 外地とさほど値段が違わない様々な品が、飛ぶように売れて行く。 
 売れ残っても構わないなどと言ったが、逆にまだ在庫はあるかと聞かれ、魔法の袋から追加で取り出しているくらいだ。

「エンス、その弓矢のセットを買うのか?」

「当たり前だ。やっぱり、プロの職人が作った品だな。自作だと限度があるわ。ゴルフはどうするんだ?」

「当然、買いだ。これで、ホロホロ鳥を毎日狩るんだ」

「無理じゃないのか? 主に腕の問題で」

「五月蝿いわ! お前だって、俺と大して腕前なんて変わらないだろうが!」

 領内の猟師達は、こぞって王都の職人が作った弓矢を購入しているようだ。
 領内にも鍛冶屋や職人はいるのだが、鍛冶屋は釘や包丁や農機具などをメインに作る程度。
 職人も普段の生活必需品に剣や鎧の修理が精々だ。
 弓矢も自作していたが、やはりブライヒブルクの職人達に比べると腕は落ちる。
 これが現実であったのだ。

「(この領内の職人は、悪い意味で独占企業だからな)」

 競争相手がいないので、出来が悪くても売れてしまうのが良くないようだ。
 外部から、新しい技術が入り難いという点も大きかった。

「いやあ、大盛況ですな」

 何を出しても次々と売れていく情況にヒルゼンも笑みを浮かべていた。
 毎回こんなに売れるはずもないが、初めてこんなに色々な物が買えるという情況に領民達のサイフの紐も緩んでいるのであろう。

「最初だからだな」

「そうですな。次回からは、もう少し小商いになるでしょうが。ところで……」

 続けてヒルゼンは、商品と領民達が持参する換金物との物々交換や買い取りの要請までしてくる。
 彼の魂胆はわかる。
 このまま俺達だけが物を売っても、それは領内からの財貨の流失しか招かない。
 俺達が、商隊では輸送コストの関係で断られた品を買い取るようになれば、それは経済の循環を生む。
 領民達も自分達で何か現金になる産物を探し始めるはずだ。

「ルパン様、分家ですとハチミツ酒は売れると思いますよ」

 セイが気に入った物なので、ブランド化すれば結構な値段で売れるはずだと確かに俺もそうは思っていた。

 というか、ヒルゼンは商売にも詳しいようだ。
 内心はともかく、この男は優秀だと認めざるを得ない。

「マリーが喜びそうだな」

 代々従士長を務める分家なので、やはり現金の貯えは欲しいところだ。
 それが自家製のハチミツ酒で得られるのであれば、本家よりも有利に金を貯められる。

 そんなところであろうか?

「トニーから、税金を請求されたりして」

「まさか、家臣から税金を取るなんて話、聞いた事が無いですよ」

 とは言ったが、まるで否定できないのが恐ろしい話でもあった。

「さすがに、それはお諌めいたしますけど」

 乾いた笑顔を浮かべながらそんな事を言うヒルゼンを見て、俺は、『トニーは、ヒルゼンに相当舐められているんだろうな』と感じてしまう。

 だが、全く同情はしていない。
 次期当主が名主に舐められるなんて、ただの愚か者でしかないからだ。

「そろそろ夕食の時間だから、終わりにするか」

 だが、結局暗くなるまで領民達はバザーの会場から離れず、それから二時間あまりも商売に勤しむ事になってしまうのであった。



「すごい売り上げですね」

「その凄え売り上げを上げるために、みんな大忙しだったんですけどね。ところで、セイは何処に?」

「散歩よ」

「まあ、良いですけどね」

 どうやら、セイはいう気はないようだ。
 たぶん、トニーの監視だと思う。
 分家での夕食後、俺達は今日泊る部屋で今日の売り上げをカウントする作業を行っていた。
 部屋割りは、男性部屋と女性部屋であったが、今は全員が男性部屋に集合している。

「銅貨が多いわね」

「それで、トニーはどうでした?」

「大人しくしていたわよ」

 俺達の付き添い役兼護衛も兼ねたセイが、バザー中に姿を見せなかった理由。
 それは、トニーの動きを監視していたからだ。

「途中で、変な人たちが何か言い付けに来たようだけどね」

 多分、本村落出身で変化を嫌う連中にバザーで売っていた品から鍛冶屋や職人達が来たのかもしれない。

「鍛冶屋に職人?」

「腕が悪いから、外部から品物が入るとピンチだからね」

 井の中の蛙で、独占企業である事に胡坐をかいてきたのだから当然であろう。
 俺も初めてブライヒブルクの職人街で商品を見た時に実家の屋敷に置いてある生活用品とのレベルの違いに驚いたものだ。
 その代わりに、ある程度は作れる物の幅が広いわけだが。
 何でも作れるというわけでもなく、品質の悪さを補強する利点にはあまりなっていなかったようだ。
 なぜ、全く期待していなかった生活雑貨などが飛ぶように売れたのかが、良くわかるという物だ。
 
「経費と税金を差し引いて273696セントかぁ……」

 日本円にして、2千万以上である。
 とても、バザーの売り上げとは思えなかった。

「何で、こんな売り上げになるんだ?」

「領民がほぼ全員参加したとして、売り上げ単価は子供も含めて一人頭684セントか……」

 あまりの額にリッドは首を捻っていたが、別段おかしい事ではない。
 確かに、この村の平均現金収入は少ない。
 だが、逆に使う機会も少ないので、彼らは現金を貯め込んではいた。
 長い家だと数百年単位でコツコツと金を貯めていたはずだ。

「一人頭684セントで、四人家族として平均2736セントの買い物。しかも、商隊以外から初めて自由に買い物できたわけだ」

 当然、サイフの紐も緩むというわけだ。
 臨時のバザーなので、二度と手に入らないかもという心理も影響していたのであろう。

「別に貧しくないじゃん」

「塩を除けば自給自足できるからな。ファブレ領の一番の問題は、行商人が1年に2〜3回しか来ないことと経済の循環が出来ていないことだからね」

 商隊が来ないと領内での僅かなお金のやり取りだけだ。
 今日だって、ヒルゼンがいなければ俺に一方的にお金を支払っただけだ。

「むしろ内部の人間なのに。それに気が付いているヒルゼンさんが……」

「そうですね。私がどこかおかしいのでしょうね。このファブレ領の常識でいいますと」

「ヒルゼンか」

 ファラの発言に呼応するように入って来たヒルゼンであったが、その表情には先ほどと同じく乾いた笑みが浮かんでいるのであった。



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