様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「すまんな」

「ルパン兄さんが謝る事でもないでしょうに」

「ここ二〜三年、何かおかしいんだよな。トニーの兄貴は」

 ファブレ家の本屋敷を出た俺達は、ルパン兄さんの案内で彼の屋敷へと向かっていた。
 共にファブレの家名を持つ、代々従士長を勤める家で、先代の当主は俺達の祖父の弟であったと聞いている。
 ところが先代は、例の天地の森遠征で三人の息子達と共に戦死し三人共、子供が娘しかいなかったそうで、長男の最初の娘にルパン兄さんが婿入りして家を継いだのだ。
 ルパン兄さんが、俺とハクカ以外の面子に自己紹介を兼ねて説明していたのだが、みんなどこか納得いかないような顔をしていた。

 それもそうであろう。

 いくら家臣とはいえ、親戚筋の家の男手を全て出兵させて全滅させてしまったのだ。
 更に、その後継に本家から次男を婿として入れた。
 何か、意図的な物を感じてしまうのであろう。

「言いたい事はわかるけどな」

 長男のトニーは除くとして、目の前のルパン兄さんは当時にはもう十八歳前後であったはず。
 なのに本家からは一人も従軍させていない。
 まるで、全滅する事がわかっていたので、わざと出さなかったと言う風にも受け取れるのだ。
 そして、男手が全滅した分家に多過ぎる息子を婿に入れて家を乗っ取る。
 陰謀論かもしれないし、事実かもしれない。
 少なくとも、そう疑われても仕方の無い情況であった。

「親父は、危ういと思ったんだろうな。だから、本家からは子供を出さなかった。分家は、最低でも一人くらいは戻って来ると思ったんじゃないかな?」

「それにしても……」

「ああ、リッド君だったな。おかげで、新婚当初は針の筵だったさ」

 分家の人間からすれば、ルパン兄さんは家の乗っ取りを謀る父の尖兵にしか見えなかったであろう。
 なので、相当に苦労しているはずだ。

「どうやって、馴染んだんですか?」

「簡単な事さ。分家の人間になって、本家の都合よりも分家の都合を優先させる」

 先ほどのファブレ家側の遺品を寄越せという陳情も確かに分家の都合が最優先だ。
 分家だって、戦死した先代当主やその息子達の遺品が欲しいはずだからだ。

「それをルーク達への手間賃を惜しんで断ろうとしやがって」

「どうせ、拾えるだけ拾って後で選別するんだから、大した手間でもないんですけどね」

 拾った物は魔法の袋に収納しておけば良いので、他の冒険者とは違って荷物が重いという事もないのだから。

「交渉されて、上納金の率が下がるのを恐れたんだろう」

「セコっ!」

「確かに、お嬢さんの言う通りにセコいよな」

 ユリアの率直な感想にルパン兄さんも一切否定はしなかった。

「さてここが、俺が当主を務めるファブレ分家の屋敷だ」

 見た感じは、本屋敷よりも少し造りが小さくて外見も少し古いような気がする。
 多分、本屋敷に気を使っての事なのであろうが。
 元々、本屋敷ですら豪農の家に毛が生えた程度なので、そんな気遣いも考えないといけないとは、ただルパン兄さんの苦労が偲ばれるという物であった。

「ただいま」

「旦那様、おかえりなさいませ」

 本屋敷と同じく、七十歳近い使用人の老人が出迎える。
 やはり、人件費やら、住み込みで働かせるほどスペースに余裕があるわけでもないようで、分家の使用人も農業をリタイアした老人達が主戦力となっていた。

「アンネは? お客さんがいるから顔を出せと伝えてくれ」

「はい、私はここにいますよ」

 そんなに広い屋敷でもないので、ルパン兄さんの奥さんはすぐに顔を出していた。 

 年齢は、24歳くらいであろうか?

 親戚だからなのか?

 髪の色は同じブラウンで、顔立ちも少し似ているような気もする。

「あら、噂の竜殺しさんね。お久しぶり」

 そういえば、又従兄妹の関係になるのに、俺は一度も彼女と顔を合わせた記憶がなかった。
 いや、確かトニーとルパン兄さんの結婚式で二度顔を合わせているはずだ。
 変に知己になって、継承問題で結託されても困るからなのであろう。
 一回だけ、父から紹介されて挨拶をしただけであった。
 そして式の間中も俺は出された飯を食っていただけなのだ。

「そうだ。トニー兄貴が絶賛敵視中のな」

「良い年して、本当にケツの穴が小さい男ね。あのバカは」

 そんな下品な事を言う女性には見えないのだが、彼女はトニーをボロカスに貶していた。
 いくら親戚同士でも、これまでの経緯を考えると仲良しなはずもないので、納得は出来るのだ。

「あの、次期当主にそんな陰口を叩いて大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ。たまに本人にも言っているから」

 顔を引き攣らせたユリアからの質問にもアンネ義姉さんはサバサバとした物だ。
 彼女からすれば、本家の人間は祖父と父と叔父達の仇。
 そして、分家の人間も意見を同じくしている。
 何となく想像は出来たが、胡散臭い名主のヒルゼンの件と合わせると次第に、この領地はいつまで存続可能なのか疑問に思ってしまうのだ。

「お客様は歓迎します。それが、あのトニーと喧嘩してきた人達なら余計にね。あと、この村って本当にお客さんが来ないのよ」

「確かに……」

 ここに居た頃に見た外部の人間といえば、少なくとも俺は商隊の人達のみであった。
 なので、この領地では基本的にお客さんは歓迎される。
 外の情報に飢えているので、それを聞きたくてしょうがないからだ。

「どうぞ、中に」

 アンネ義姉さんの案内で屋敷の中に入ると外部とは違って中は本屋敷よりも綺麗に整えられているようだ。
 外部は本家が五月蝿いので粗末にして、内部は造りも合わせて内装なども綺麗にしている。
 多分、ルパン兄さんや沢山いる分家の女性陣が整えたのであろう。
 先代従士長の奥さんと戦死した息子三人の奥さん達に。
 アンネ義姉さんとその妹を始めとする、俺の又従姉達にと。
 残りの男性陣であるルパン兄さんを始めとする婿達は、どこか所在なさ気にしていた。
 この家は、完全に女性優位の家のようだ。
 そして、彼女達は反本家で纏まっている。
 婿達も家に馴染むためにルパン兄さんなどは、元からさして実家に愛着など持っていないので、早くこの家に馴染むためにさっさと反本家になってしまったのであろう。

 というか、あの家庭環境ならば、トニー以外はよほどのマゾでもないとそうなってしまうのだ。
 これが、リビングに案内されてお茶を出された俺達が見た、このファブレ分家の第一印象であった。

「(表面上は従士長の家柄で親戚なのに潜在的な反本家って……)始めましてじゃないのか? ルークです」

「何年も前から、早朝に出かける姿は見ているわ」

 アンネ義姉さんを始めとする分家の人間は、俺が子供の頃に魔法の修行で外に出かける姿は目撃していたようだ。
 ただ、彼女達は全く話しかけて来なかった。
 反本家の立場を隠そうともしない分家なので、俺と接触する危険性を理解していたのであろう。
 今は、俺が別家の人間なので問題はないと思っているようだ。
 それに今の俺達はこの領地を訪れた冒険者という立場の方が強い。
 本家が泊めない以上は、分家が面倒を見る必要があると思ったようだ。
 ファブレ騎士爵領の面子の問題として。

「それに、お爺さまやお父様の遺品を回収に行ってくれる冒険者を泊めるくらい。常識のある人間なら当然よ」

 そう言いながら、アンネ義姉さんは一瞬本家の方角に視線を送る。
 トニーのバカぶりと老いて彼を止められなくなっている父を内心で非難しているのであろう。

「なので、セイさんも機嫌を直して」

 アンネ義姉さんは、そう言いながらも未だに不愉快そうな表情を浮かべているセイに何かの液体が入ったコップを差し出した。

「ごめんなさい。あら・・ハチミツ酒ね」

「うちの特製よ」

 セイは、ハチミツ酒を貰ってようやくご機嫌が直ったようだ。

「いいお味ね」

「うちの秘伝ですから」

 セイがハチミツ酒をコクリと飲んでいた。

「夕食まで時間がある。ゆっくりとしていてくれ」

 とはいえ、珍しい外部の情報を持っている客である。
 女性陣は、アンネ義姉さん達に捕まって、王都などのファッション情報などを根堀り葉掘り聞かれていたし。
 リッドも婿達に王都などの情報や冒険者稼業などについて聞かれているようだ。
 そして、俺はと言うと……。

「すげえ! 本当に、竜殺しの英雄様がいる!」

「お父さんの弟だって、本当だったんだ」

 ルパン兄さんの子供達を始めとして、分家の子供達多数に囲まれていた。
 しかし、子供の目とはとても純粋で綺麗な物だと思う。

「レン、俺は嘘なんてつかないけどな」

 一番の年長者であるレンは現在7歳で、ルパン兄さんの長男にして、この家の跡取りである。
 他にもイオスという四歳の妹がいて、彼女もその純真な瞳で俺を見つめていた。

「俺も叔父さんですか」

「いや、ルークが八歳くらいの時からずっとそうだから」

 実は、昔からルパン兄さんに子供が二人居るのは知っていたのだが、年齢や性別や名前なども知らなかったのだ。
 顔を合わせたり、下手に可愛がったりすると。
 それだけで、父に文句を言われそうな気がしていたからだ。

「思うに今まで接触が無くて正解でしょう。今のトニーの態度を見るに」

 あの男の事だから、俺が実家を乗っ取るために従士長の家の跡取りに好かれようと媚を売っているとか思われかねないからだ。

「確かにな。でも、もう今更だろう」

 確かに、もう今更なのだ。 
 勝手に疑って、勝手に苦しんでいれば良い。
 そう思った俺は、子供達に次々と魔法の袋からお土産を出し始める。
 せっかく実家に行くので、フェイト義姉さんやその子供の分も含めて準備していたのだ。
 今の時点で渡すと彼女がトニーに何か言われかねないので、魔法の袋に仕舞ったままだったのだ。

「何でも出て来る魔法の袋だ」

「さすがに先に入れていないと出てこないさ」

 俺はそう言いながら、レンを先頭に王都で購入したお菓子やボードゲームなどの玩具を渡していく。
 相手は子供なのだが、お土産を渡す順番も貴族は気を使わないといけないのだ。
 レンは、この分家の跡取りで。
 妹のイオスを除くと他の子供達は外に嫁に出たアンネ義姉さんの妹や従妹達の子供なので、序列はハッキリとさせないといけないからだ。

「ありがとう、ルーク叔父さん」

 まだ十五歳なのに傷付く呼び方であったが、この世界では珍しい事でもない。
 みんな結婚が早いのと年齢差がある兄弟が多いので、どうしてもそうなってしまうのだ。

「竜退治のお話を聞かせて!」

「聞かせて!」

 時間はあるし、トニーの事など思い出したくも無い。
 なので俺は、子供達に骨竜を退治した話などをし始める。
 子供達は、お土産の飴を舐めながら懸命に話を聞いていた。
 こういう光景を見ていると、久しぶりに心が洗われるような気がする。

 一時間ほど話したであろうか?

 子供達はまだ話をせがんでいて、俺も時間があったので良いと思ったのだが、そこに思わぬ人物が姿を見せる。

「さすがは、ファブレ男爵様。ルパン様のお子達にも大人気ですな」

「ヒルゼンか……」

 俺と分家の組み合わせだけでもトニーにとっては危険なのに、そこに名主のヒルゼンが現れたのだ。

「あの……、アンネ義姉さん?」

「何か頼みたい事があるって、強引に押し入られてしまって……」

 以前に俺が次期当主になったら協力するとまで言ってしまう反本家の立場を取る分家なので、裏の行動が怪しいヒルゼンの行動に掣肘など加えないのであろう。
 分家からすれば、ヒルゼンと本家の仲が悪くなるのは好都合なのであろうし。

「頼みたい事?」

「はい、少し冒険者としての仕事からは外れますが、決して危険な仕事ではありませんので」

 突然、俺達に仕事を頼む怪しい名主ヒルゼンの存在に。
 さてどう対応した方が良いのかと考えてしまう俺。
 久しぶりに里帰りと、それに伴うゴタゴタはまだ始まったばかりであった。



 主人公の親族紹介
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