様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「はあ……」

「何だよ。そんなに嫌なのか?」

『瞬間移動』で、俺は久しぶりにファブレ家の屋敷の前に立っていた。

「今さら、挨拶ってのもなぁ……」

「そうだよね」

 俺には、ファブレ家や両親兄弟への執着や愛情はなかった。
 ルークの5歳前の記憶から見る限り、俺は明らかに放置されていた。
 虐待もなく、家の手伝いをしなくてもよく、ただ勉学や魔法の勉強に費やし、ご飯代としてて多少の獲物を出せばよかった。
 俺が魔法を使えると知ってからは余計にその傾向は強かった。
 東端の辺境貧乏騎士爵にとって必要なのは、一族と領民たちによるある種の閉鎖的な協力関係であり、その中で俺の魔法は邪魔だったのだろう。
 彼らの願いは、俺に早く独立して欲しいということだけだった。

「面倒くさいなぁ……」

「仕事よ」

「わかってます」

 セイに言われたので、俺は屋敷のドアをノックする。 
 一応は貴族なので屋敷と呼んではいるが、相変わらずファブレ家は零細貴族なようで、その大きさは豪農の家に毛が生えた程度のレベルでしかなかった。

「はい、どちら様で?」

 約三年ぶりの実家であったが、ドアを開けて出て来たメイドに変化は無かった。
 メイドとは呼んではいるが、近所の農家から手伝いに来ているただの老婆なので、三年くらいではそう年を取ったように見えなかったのだ。

 ちなみにメイド服すら着ていない。
 七十歳超えの老婆なので、あまりメイド服姿を見たいとも思わなかったのだが。

「これは、ルーク様!」

「やあ、レナ。久しぶりだね」

 思えば俺は、家族などよりも使用人達との会話の方が多い子供であった。
 魔法の鍛錬の成果で得た獲物を渡しながら、普通に世間話くらいはしていたのだから。

「この前に来た商隊の方々が、ルーク様の噂をしておりました」

 アンデッドになった古代竜に王国近辺の魔物の住まう領域をを縄張りにしていた老属性竜を討ち、それによって多くの褒賞と爵位を得た事に公爵家の娘と婚約した事など、王都滞在中の武芸大会までレナは知っていた。

 さすがは、商人とでも言うべきであろうか?

 かなり正確に情報を南部辺境にまで持ち込んでいたのだから。

「おい、レナさんや……おおっ! ルーク様!」

 狭い屋敷ではあるし、仕えている者の大半は既に農作業はリタイアしている老人達でしかなく、俺が戻った情報はすぐに他の使用人達にも伝わっていた。

 続けて、執事のアールンも顔を出す。
 当然執事服など着ていない普通の老人で、彼も農作業をリタイアした七十歳超えの老人である。
 ここでは、ある程度読み書き計算が出来て父の補佐が出来れば、あまり高度な専門性など求められないので勤まってしまうのだ。

「大きくなられましたな。ルーク様」

「アールンも元気そうだね」

「いつ、お迎えが来るかわかりませんけどな。ところで、魔法使いとして大きな功績を挙げられたとかで。ルーク様は、我らの誇りであります」

 家を出るまでは世話になっていたので、俺はなるべく彼らとは笑顔で接していた。
 いや、こういう言い方をすると俺が彼らを鬱陶しいと思っているように感じてしまうかもしれないが、寧ろ逆だ。
 彼らがこれからも安定した生活を送れるように俺を褒めるのを止めて欲しいと思っていた。
 父はとにかく、トニーの事を考えるとそう思ってしまうのだ。

「聞けば、綺麗な婚約者様もいらっしゃるとかで」

「お子が生まれるのが楽しみですねぇ」

 アールンもレナも他の使用人達も喜んでいるので、俺はもう他の家の当主なんですとは言えない空気になってしまったほどだ。

「とにかくめでたい」

「ルーク様がお戻りならば、このファブレ家も安泰ですな」

 しかも、話が妙な方向に進んでいってしまう。
 どうやら彼らは、俺が王都での功績を掲げて故郷に凱旋して来たと思っているようなのだ。

「ルーク様が、未開地の開発にお入りになられれば」

「ここも豊かになりますとも」

 更に話がヤバい方向に進んでいく。

「(この話題は不味いだろうに……)いや、俺は冒険者として依頼で来ているんだ。父上を呼んで欲しい」

「お館様をですか? 少々お待ちください」

 話を切り上げてから父を呼んで貰うのだが、奥から現れた父は前よりも頭に白髪が増えている状態であった。
 確か、今は65歳くらいであったはず。
 この世界ではまだ現役の人も多いが、そろそろ老後の事も考えなければいけない微妙な年頃になっていた。ちなみにこの世界の一般人の寿命はおおよそ150歳ぐらいである。

「久しぶりだな」

「お久しぶりです」

 三年ぶりに会ったのだが、正直何を話して良いのかわからない。
 それは向こうも同じようで、二人の会話はそれだけで終わってしまっていた。

「失礼いたします、アルト卿。本日は、ブライヒレーダー辺境伯様からの要請をお受けしてほしくて参上しました」

「要請か……」

 あくまでもブライヒレーダー辺境伯からの使いであるという態度を崩さないセイに父は俺と交互に視線を送りながら渋い顔をしていた。
 父から言わせると今世の俺が生まれた頃くらいから、ファブレ家は寄親であるブライヒレーダー辺境伯によって碌な目に遭わされていない。

 いくら先代の罪とはいえ、そう簡単に割り切れる物はないのであろう。

「父上っ。……っ!ルーク! 何で生きている!」

「はあ?」

「控えよ、トニー! ファブレ男爵殿である」

 続けて室内に入って来たトニーは、俺を見て大変に驚いているようであった。
 しかし、『何で生きている!』は正直ないと思うのだ。

「兄上、どういう事なのです?」

「いや、それがだな……」

 何か、情報の齟齬が発生しているらしい。
 明らかに慌てているトニーの代わりに父が説明を始める。

「中央から、ある噂が流れてきてな。ファブレ男爵達が、地下遺跡探索で命を落としたかもしれないという物だ」

 間違いなく、情報元はルックナー弟であろう。
 俺達が、初めての依頼で地下迷宮に入ってから約1ヶ月ほどだ。
 この僻地に『瞬間移動』の魔法以外で情報を流すとなると商隊では片道でも2ヶ月はかかる。
 だが、もし腕の良い冒険者などが、己の身一つで山道と海路を急ぎ情報を伝えたとなると1ヶ月で伝えられるはずだ。

 ギリギリ、俺が死んだかもしれないという噂は得られているはずであった。
 その後の実は生きていてとんでもない大金を押し付けられた事実は伝わっていないようであった。

「それは、いつ届いたのですか?」

「昨日だ」

 また、えらくタイミングが悪い。
 それと俺は、今度は明らかに残念そうな表情をしているトニーを見て悟ってしまう。
 この兄は、俺の死を望んでいたのであろう。
 多分、財産目当てなのであろうが、どうせ俺が死んでもトニーの係累には1セントも入って来ない。
 そういう遺言にしているからだ。
 彼の態度を見るに教えてあげる義理もないのだ。

「(嫌な現実を見たな……)」

 このまま一生顔を合わせなければ、知らずに済んだ事を知ってしまう。
 正直、ブライヒレーダー辺境伯を恨んでしまいそうになる俺であった。

「(ルーク、ごめんなさい……)」

「(ルーク、大丈夫)」

 そして、そんな俺の気持ちに気が付いてか。
 セイは、俺に申し訳なさそうな表情を向けていた。
 ハクカとミュウとユメイとキャロルとアクアとユリアは、心配そうにこちらを見ていた。
 リッドは、こちらに視線を一度だけ向けたまま周囲を警戒していた。

「とりあえず、中にどうぞ。ブライヒレーダー辺境伯殿からのお話も聞かないといけませんしな」

 父は、その話は棚上げにし、本来の交渉を行おうと俺達を屋敷の中へと案内する。
 久しぶりに入る屋敷の中であったが、相変わらずというか全く変化が無い。
 豪農に毛が生えた程度の屋敷なので、多分王都の人間なら貴族の屋敷の中とは思わないであろう。
 一応、客も持て成せる事になっているリビングへと移動し、大き目の机で差し向かいで座る。
 所謂、お誕生席と呼ばれる位置に父で、その右隣にトニーが。
 左隣が空いているが、そこには名主のヒルゼンを座らせるらしい。

 今、レナがヒルゼンの家まで呼びに行っているそうだ。

 今回の交渉では、俺達が得た成果からファブレ家側に何%を収めるのかなど、計算が必要となるので、それが出来るヒルゼンを呼んだのであろう。

「お待たせいたしました。お久しぶりです、ルーク様」

 暫くしてから、レナと一緒にヒルゼンも姿を見せる。
 また前のようにおかしな事でも言うのかと思えば、今回は挨拶だけであり、それが逆に彼の油断ならない部分なのであろう。



 主人公一行紹介 主人公の親族紹介

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