様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「あーーーあ、ヴェルは重いよな」

「エルは、ヴェルが男だから重いんでしょう?」

「そうだな」

「それとも代わろうか」

 ブランタークさんを背負っていたリッドが言う。

「いや、やっぱりヴェルでいい」

 ブランタークさん、ヴェル、ハクカ。

 三人もの魔法使いが全ての魔力を消耗して意識を失っている中で、俺達は頭部を破壊されたドラゴンゴーレムの後ろにある扉へと歩いて移動していた。用心のためにルイーゼとイーナには、斥候をやってもらった。

「罠はないと思うけどな」

「経験者が気絶しているのは痛いよね」

「地味にな」

「地下遺跡の探索は、ヴェル達が目を醒ましてからだな」

「ええ」

 その前に、ちゃんと休める場所を確保しないといけない。

 あとは、地上への出口であろうか?

 幸いにして、あの大量の存在するゴーレムはもう一体も動いていない。
 更に先にある扉を開けると、そこには直前まで人が住んでいたかのような居住空間が広がっていた。

「大昔の地下遺跡の部屋なのに……」

 ルイーゼは、埃一つない書斎やリビング、キッチン、バスルームなどに驚いているようだ。
 だが、古代魔法文明時代の遺跡では、そんなに珍しい物でもない。
 何でも、今はロストマジックになっている『状態保存』の魔法がかけられているからだそうだ。
 この魔法が効いていると数千年前の物でもまるで劣化しないらしい。

「とにかく、三人を寝かせないと」

「そうだな」

 見付かった寝室にはベッドが4つ置かれていたので、一つにリッドが背負っていたブランタークさんをおく。
 もう一つにエルが背負っていたヴェルを寝かせる。
 次にハクカをベッドに寝かせたところで、俺は安心し、突然の睡魔に襲われ、そのまま意識を失ってしまうのであった。



 ドラゴンゴーレムの頭部を吹き飛ばし、魔力が尽きて気絶していた俺は、丸一日ぶりに目を醒ましていた。
 一週間弱ぶりのまともな睡眠で、昨日のように精神的な疲労から来るダルさも無く、久しぶりの爽快な目覚めだ。
 それと魔力切れギリギリの状態を何度か経験し、精神的にも緊迫していたようで、自分でもわかるほどに魔力量が上がっている感覚も実感している。

 無事に地下遺跡の防衛システムも解除できたわけだし、生き残る事も出来た。
 いきなり素人にこんな依頼を寄越す連中に文句も言いたくなるが、それは後だ。
 何しろ、俺にはもっと切迫した事情が存在するのだから。

「・・・ルーク、おはよう」

「ルーク、おはよう」

「おはよう、ルーク」

 正面にハクカが左右にミュウとキャロルがおり、抱きしめて寝ていた。ほぼ同時に目を醒まし、状況に気がついたハクカとミュウとキャロルが頬を赤く染めて挨拶して来た。

「・・・おはよう・・・ハクカとミュウとキャロルは、体調とか大丈夫か?」

 ハクカとミュウとキャロルの柔らかな肢体と胸の感触に心臓がバクバクしながらも挨拶した。

「うん、魔力も回復したよ」

「私もばっちり」

「大丈夫よ」

 キャロルとミュウが笑顔で言ってくれた。
 よく見れば、ミュウとキャロルは鎧や向こう脛当てをはずして寝ていたようだ。

「ルーク、ハクカ、ミュウ、キャロル、おはよう」

「おはよう、リッド」

「起きていたのか?」

「交代しながら寝ていたから大丈夫だぜ」

 その一言で安心する。
 ベッドでは、ブランタークさんが左端のベッド、次のベッドはキャロル、ヴェル、ルイーゼ、ミスミ、3番目がミュウと俺とハクカとキャロル、4番目のベッドにエリーゼ、ユメイが寝ていた。入り口付近には、エルが寝ていた。

「ルーク・・・その」

 ミュウとキャロルが頬を赤く染めながら言いづらそうにしていた。

「気にするな」

 女性陣を床で寝かせるよりはマシだ。

「あの・・・ルーク」

 ハクカが頬を赤く染めて言いづらそうにしていた。
 俺の息子は、ハクカの柔らかな股で元気になっていた。

「・・・悪い」

 意識するごとに徐々に硬度と長さが増していく。
 俺の状態に気が付いたキャロルとミュウも頬と耳を徐々に赤く染めていた。

「えっと・・・キャロルとミュウ」

「あ・・・ごめんなさい」

 キャロルとミュウも抱きしめていたので、キャロルとミュウがベッドから抜けないとハクカも動けないのだ。
 慌てて起き上がったキャロルとミュウとハクカと俺は、ベッドに『浄化』をかけた。
 ハクカとミュウとキャロルから先にお風呂に入らせる。

「俺、寝るわ」

「ああ」

 リッドが、エルの寝ている付近で寝た。



「やっと、探索に入れるか」

 全員が十分に睡眠を取ったので探索を再開する事にする。
 起床後にハクカとエリーゼが今も普通に使える居住エリアのキッチンで作った食事を食べた。
 探索後の食事もエリーゼとユメイが担当である。一応念のためにエリーゼの護衛役を兼ねてである。

「多分、何もないと思うが」

「警戒しすぎじゃねえか」

「冒険者やるなら警戒して損はないぜ」

 ブランタークさんの同意を得てである。
 あとの全員で探索に入る。
 ドラゴンゴーレムが守っていた扉の奥は、地下遺跡の終点地であった。
 数千年以上も前の物のはずなのに、まるでつい先程まで誰かが使っていたようにも見える書斎。
 他にも室内には、地下水を吸い上げてからろ過をして出す水道や魔晶石を利用したコンロやお風呂やシャワー、洗濯機、冷蔵庫なども置かれ、この中に篭って生活が出来るようになっていたのだ。

「・・・へえ・・・すごいな」

 シャワーや洗濯機を見ながら言う。
 今は、エリーゼとユメイが甲斐甲斐しく食事を作っている。

「隣は、作業場だな」

 部屋には他に二つのドアがあり、片方はエルが作業場のような部屋だと報告していた。
 ブランタークさんと共に見てみると王都で見た事もある魔道具の製造工房に造りが似ているようだ。

「魔道具の工房か?」

「らしいですね」

 書斎の本を見ていたイーナが、その本の中から一冊の日記を見付けてブランタークさんに渡していた。

「イシュルバーク伯爵か……」

 その日記の持ち主の名前らしいが、もし本当ならかなりの有名人である。
 古代魔法文明時代における魔道具造りの第一人者で、今でも現存している彼の作品は高い評価を受けている。
 実は、現在稼動している魔導飛行船はそのほとんどが彼が設計をした物なのだ。
 なるほど、あんな危険な防衛システムを構築できるのだから、天才なのは確かなようだ。

「それで、この部屋も工房も綺麗なのか……」

 現状保存の魔法をかけてあるのだが、その効果が数千年以上も持続していた。
 それだけで、イシュルバーク伯爵がいかに優秀な魔法使いであったのかを証明する物でもあった。

「この書斎の本とかも研究をすれば魔道具作りの技術進歩に繋がるかもしれないと?」

「その可能性は高いな」

 良く見ると魔法や魔道具関連の書籍が多い。
 一部の本棚などは、彼の研究ノートらしき物が数千冊も収められているようであった。

「ねえ、もう一つの部屋だけど」

 続けて、もう一つの部屋の様子を見に行ったルイーゼも戻って来るが、その報告は驚きの内容であった。

「向こうの部屋は、格納庫の入り口だったんだ」

 ルイーゼの案内でもう一つのドアを開けると、そこにはドラゴンゴーレムが置かれた広場よりも広大な空間が広がっていた。
 その部屋というよりも空間は、まるで造船所のような造りになっていて、造船用の船渠が十以上も連なり、それぞれに重量物専用の魔導クレーンが複数設置されていた。

「壮大な光景だな」

 船渠は半分以上が空いていたが、それでも数えると七隻の魔導飛行船で埋まっていた。
 大きさは、定期飛行をしている魔導飛行船とほぼ同じ大きさのようだ。
 どうやらこの施設は、魔導飛行船専用の建造・整備ドッグのようであった。

「外見上は、完成しているようですね」

「問題は、中身の『巨大魔晶石』が無事かどうかだな」

 過去の遺産である魔導飛行船が再就役可能かどうかは、機関部に使っている『魔晶石』が無事かどうかにかかっている。
 年数が経っているので、質の悪い『魔晶石』だと既に壊れている事が多いからだ。
 現在の技術で、魔導飛行船を飛ばせるだけの『魔晶石』を造る事は難しい。
 過去にあった小さい魔石を複数材料にして大きな魔晶石を造る技術が失われているからだ。
 滅多に手に入らない属性竜以上の魔物から得た巨大魔石からでないと造れないのだ。
 二年前に俺たちが倒した二匹の竜の魔石が強制的に王国によって買い上げられた理由でもあった。

「これ以上の調査は・・・・王国側に任せるか。ルーク・・・お前は」

「とりあえず、魔導飛行船を調査してみる」

「分かった」

「地下遺跡の様子の方も見に行かないと駄目だろう」

「あのゴーレムとか、再稼動しませんよね?」

「さあな?」

 今度は『逆さ縛り殺し』の地下遺跡に戻って調査をする事にする。
 全地下十階で、各フロアーは巨大な長方形の石壁の空間であり、数十箇所に防衛用のゴーレムを供給する穴が開いている。
 フロア内には、俺達が突破後に再配備されていたゴーレムが活動を停止したままで置かれており。
 俺達が近付いても無反応なので、ブランタークさんの推論通りに、あのドラゴンゴーレムの頭部に防衛システムの大元が内蔵されていたのであろう。

「ミスリル含有の鋼で作られ、動力は頭部に人工人格の結晶と並立配置された魔晶石か」

 全員で停止中のゴーレムを一体バラし、中の構造を確認する。

「でも、このくらいの造りなら今でも」

「問題は、人工人格の性能だな」

 人工人格は、見た目は透明な水晶の結晶に似ている。
 この中に特殊な魔術言語を特殊な魔法で記録させるのだそうだ。
 当然、魔術言語を理解していないとそれは不可能だ。
 理解していても記録魔法が使えないと結晶に記録できないし、その前に人工人格の結晶が作れないと意味が無い。
 よって、現在では作れる人が非常に少なかった。
 一番難しいのは魔術言語だそうで、前世で言うところのコンピュータ言語に似ているのだ。
 数万種類にも及ぶ象形文字に似た物がビッシリと書かれている本を見た事があるのだ。基本的な法則とか分かればその法則に沿っていろいろなことができる。

「しかし、イシュルバーク伯爵も何を全力で守りたかったのか……」

「この地下遺跡全部でしょうね」

 使っているミスリルとオリハルコンの材料費だけでも目の玉が飛び出るドラゴンゴーレム二体に合計で万を超える兵士型と騎馬騎士型のゴーレム。

 更に調査で、地下十階部分に隣接している、ゴーレムを修理して補給する無人工房まで設置されているのを確認していた。
 そこでは、損傷したゴーレムを運搬専用ゴーレムがベルトコンベアーの端に載せ、コンベアーを移動中に上半身だけの修理用ゴーレムが効率良く修理を行う。
 修理が終わったゴーレムは、自力で移動用の専用通路から侵入者の居る階層へと向かう仕組みになっていた。

「オーバーテクノロジーの極みだな。久々の大発見でもある」

 そして、これらの設備全てを動かすための魔力を供給する、巨大な魔晶石の存在も確認される。
 その大きさは、前に倒した骨古代竜の魔石を遙かに超えていた。
 あれだけ派手に魔力を使ったのに、その巨大魔晶石はいまだに赤く輝き続けていたのだから、多分、相当に気合を入れて魔力を補填していたのであろう。

「イシュルバーク伯爵は、全財産と全研究成果をこの地下遺跡に隠したと?」

「うあぁ、偏屈な人だなぁ」

 家族が、信用できなかったのか?

 その家族すら、実は居なかったのか?

 真相は不明だが、案外天才とはこんな生き物かもしれなかった。

 孤高の天才という奴かもしれない。

「粗方の調査は終えたんだがな。ルークとヴェルの坊主は、これからどうする?」

「どうすると言われても……」

 安全に地下遺跡の全てに入れるようになったし、お宝の大半が、魔導飛行船やら、ミスリルとオリハルコンを大量に使用した巨大な魔晶石で動いているドラゴンゴーレムというのも拙い。

 残されている文献なども場合によっては国家機密になってしまう可能性もある。
 既に、この遺跡にある全ての物の権利は俺達に確定しているわけで、あとはプロの査定が必要になっていたのだ。

「国家機密されるまでは、調査するよ。ということでキャロルとリッドとハクカとミュウとユメイ・・・手伝って」

「・・・え・・・何をすればいいの?」

「これだよ」

 魔法の袋から、木製の四角い物体と黒い四角い物体と小さい丸い球を取り出した。

「それって・・・あの時の・・?」

 ハクカが聞いてきた。

「ああ・・・ちなみにこっちの黒い物体は、結晶に文字を記録する記録魔法を応用して作ったもので、この四角い物体の裏側の白い部分を文字が書かれている箇所に押し付けると文字が記録されるわけなんだ」

「へえ〜・・・便利だね」

「このクリスタルが赤くなったら記録できなくなるから・・・出来れば魔導飛行船あたりの書籍を優先的に調べて欲しい」

「分かったわ」

「この白くて丸い球を手に持つかどこかにつけておいて欲しい。これは、周囲を記録するわけなんだが」

「ああ、確か魔導撮影機とかいうやつだっけ」

「そう」

「そういえば、結局見てないな」

「リッドよ。まさかあれを見たいだなんて言うなよ」

「さすがにそれはない」

 桃色カバさんは鬼門だから当たり前である。

「撮影機で見られるのは、『武芸大会』と『導師との修行』と『浄化の様子』と各種の『演劇』と今いる『地下遺跡』だからな。今のところおすすめが『武芸大会』と『演劇』だな」

「後で『武芸大会』を見てみたい」

「私も」

「そうね。強い人の武芸を見るのも勉強になるわね」

 リッド以外にキャロルとミュウが賛成していた。

「分かった」

「決まったようだな。俺が一足先に王都に戻って、王城から調査団を送るように言って来る。坊主達は、見張りでもしながら待っていろ」

「はあ……」

 結局、俺達の冒険者初仕事は、もう少しで死ぬ所であった上にワクワクするような金銀財宝なども得られなかった。
 それよりも高額なお宝を見付けてはいたのだが、これを換金可能なのはこの依頼を寄越した王国というのも性質が悪い。
 それと、この地下遺跡の出口であったが、呆気ないほど簡単に見付かっていた。
 あの魔導飛行船専用ドッグに屋根の開放装置があり、レバーを入れると天井部分が開いて日の光が差し込んでいた。
 魔導飛行船のドッグが地下深くにあっても仕方がないので、当たり前と言えば当たり前なのだ。
 地下遺跡の場所も最初の遺跡より王都側に位置する台形状の巨大な岩山の中というオチだ。
 正直、今まで良く発見されなかったと思う。
 パルケニア草原内にあり、この二年半は草原内の開発に忙しかったからであろう。
 あとは普通に考えて、こんな岩山の中とその地下に巨大な地下遺跡があるとは誰も思わなかったのであろう。

「ヴェンデリン様、ルーク様、夕食の支度が出来ました」

「美味しそうな匂いだな。腹減ったし、飯にしようぜ」

「頂いた材料で、味噌煮込みを作りましたよ」

 既に、この地下遺跡に脅威など存在していなかったので、エリーゼとユメイは居住エリアに残って食事の支度をしていた。
 さすがに、もうハンバーガーモドキとスポーツドリンクモドキ水だけの食事は暫く勘弁して欲しい。
 これが全員の一致した意見であったからだ。
 料理は、エル以外はある程度出来るのだが、一番腕が良いのはエリーゼであり、彼女が料理担当になる事が多かった。

「俺も飯食ってから外に出るわ」

「落ち着いて食える飯の素晴らしさよ」

「ヴェルは、飯に拘るからな。確かに毎食肉挟みパンだと飽きるけど……」

「エリーゼ、ユメイ、次はボクとイーナで作るから」

「そうね。エリーゼとユメイに任せ切りなのも悪いし」

「ルイーゼとイーナの次は、私が作る」

「私も作る」

 その後は、ブランタークさんが王宮とギルドに地下遺跡攻略の報告に向かい、その間、俺は魔導飛行船の調査とハクカ達は、本を記録するのであった。



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