様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 三日後。
 グラム兄さんのお見合いが予定通りに行われる事となった。
 会場は、エドガー軍務卿の家臣が手紙を持参したのでそちらへと向かう事にする。
 メンバーは、いつもの俺達6人とスズネとヴィルマである。
 ハクカは、エドガー軍務卿の家臣の人は『是非つれてきて欲しい』と言っていた。
 何でも側室まで紹介する人は、相手に懐を開いていると思われるらしい。
 グラム兄さんの見合い相手に良い印象を与えるそうだ。
 王都のストラトス家は、エドガー軍務卿の寄り子なのだそうだ。
 正確には、法衣侯爵家で代々王国軍の重鎮を輩出しているエドガー軍務卿の実家シュタイベルト家の寄り子にダート男爵家という同じく法衣男爵家があり、その寄り子に王都ストラトス家があるそうだ。

 ダート男爵家は、軍関連の仕事を世襲する法衣男爵家であったが、その職とは王都周辺にある森や河川などの管理であった。
 軍の仕事とはかけ離れているような気もするが、普段は人がいない場所なので流民などが勝手に入り込んだり、人の住む場所で犯罪を犯した人間が逃げ込んだり、密猟者が出没したり。

 その発見と排除や捕縛なども仕事に入っている。
 たまに荒事もあるので、仕事が軍の管轄に入っているそうだ。
 滅多には無いが、山賊団などの討伐なども請け負うらしい。

 仕事は、王都近郊にある水源地も兼ねた森林地帯の管理であった。
 スラムの住民が住み着こうとしたり、密猟を試みるので、それなりに仕事は忙しいようだ。

「当代の当主様は仕事ぶりも堅実で、ダート男爵様の評価も宜しいのですが……」

 この家も子供が娘しか居ないのだそうだ。
 そこで、ダート男爵に婿養子の斡旋を依頼していたらしい。

「手頃な御相手を探している所に、ちょうどグラム様のお話が出まして……」

 エドガー軍務卿が、常にいち騎士爵家の家庭事情などを把握している暇など無いはず。
 たまたま俺の兄達が警備隊に居る事を知り、何とか縁を結ぼうと模索した結果、王都ストラトス家への婿入り話を持ち込んだのであろう。

「(なら、先にリョウ兄さんに話を持って行けよ……)」

 俺は、エドガー軍務卿の間の悪さなのか、わざとやっているのか気になる部分を感じていた。
 こういう時に、アンディ兄さんの助言が欲しいと思う。
 今日は普通に仕事なので、今日は付いて来て欲しいとは言えなかったのだ。

「リョウ殿には、我が主が折を見て騎士爵家を任せるものかと」

 王国の財政状況から考えても、そう簡単に貴族の枠は増やせない。
 だが、貴族の子弟達に貴族家の数が飽和状態だと知られるのは困る。 
 希望が無くなったと現存当主の暗殺にでも出られると困るからだ。
 なので、大物貴族達や陛下との協議は必要であったが、ある程度は余剰枠が存在していた。
 その余剰枠を増やすため、時折りあまりに酷い貴族は改易されるわけだ。
 あとは、未開地の開発成功などで貴族家が増える事もあった。
 うちの実家も、その一例である。

「我が主は、リョウ様とグラム様の才能に期待しておりますれば」

 エドガー軍務卿の家臣の言葉に上の兄達は苦笑していた。
 彼らとて、自分の才能くらいは理解している。
 貴族一家の維持なら出来るが、他に極端な才能など無い事を。
 俺だって、魔法には自信があるが貴族としての才能など未知数なのだから。

「では、入りましょうか? 当主様もお待ちです」

 エドガー軍務卿の家臣に促されてストラトス邸に入ると、玄関では三十代半ばの少し父に似た男性と同年代のその奥さんらしき人に。
 18歳くらいの可愛い娘さんが出迎えてくれた。

「ヴァン・フォン・ストラトスです。こちらが、妻のリンナと娘のリンです」

「グラム・フォン・ストラトス・ファブレです」

 グラム兄さんを皮切りに順番に自己紹介を行い、それが終ると屋敷の中に案内されてリビングに通される。
 メイドが全員分のお茶を淹れてくれてから、ストラトス家の当主ヴァンさんが話を始める。

「このお茶、森林マテ茶ですよね?」

「さすがは、ラングレー家のお嬢様。良くおわかりですね」

 スズネは、出されたお茶が高級品である事にすぐに気が付いていた。 

「森林警護の役得ですから、無料ですけどね」

 決められたエリアの森林を不法侵入者や密猟者の手から守る。
 最下級である騎士爵の者が多数任じられていたが、当たりを引くと大変に美味しい役職であるらしい。

「我が家が守る森林の奥に森林マテ茶の木の自生地があるのです」

 森林警護の役職を慰労無く行えば、ある程度その森林から産出する物を自由に得られる権利があったのだ。
 あとは、人数を決めて入森料を狩人達に課したりも可能で爵位と役職以上に豊かな者が多かった。

「自生地を減らさない程度に収穫を行うと副収入にも自分で飲んで楽しむ事も可能です」

 この世界において、一番普及しているお茶は間違いなくこのマテ茶であった。
 見た目は、前世のお茶の木と葉に良く似ている。
 葉の色が、少し黄色がかっているくらいだ。
 値段は本当にピンキリで、同じ重さの銀やそれ以上で取り引きされる王侯貴族専用の購入品に庶民が飲む茎なども利用した安い茶葉と両方が存在していた。

 そして高級品の方であったが、実はこのマテ茶の木。
 元は自生している植物で、自然環境が困難な場所に生えている葉ほど甘くなるという性質を持っている。
 その甘さも砂糖のようなハッキリとした甘さではなく。
 ほんのりと上品な甘さで、後味が残らない物ほど高級品とされていた。
 最高級品は、北方アーカート神聖帝国の標高八千メートル級の山脈頂上付近に自生している物。
 これは、同じ重さの銀よりも値段が高かった。
 環境が苛酷で三年に一度しか葉が採れないので、どうしても高くなってしまうし、採りに行くのに命がけなのもある。
 そして次に貴重なのは、この原生林などに生えているマテ茶の木であろう。
 葉の質が良いのだが、良いので野生動物に食べられてしまう事が多く手に入り難かったのだ。

「お茶の木の自生地警戒で、別に人を雇っているくらいですから」

 売れば儲かるし、偉い人への贈り物にも最適なのであろう。
 なるほど、役得というやつであった。
 放置しておくと野生動物に食べられてしまう自然の高級茶葉を森林警備のついでに保護管理の名目で採集する。
 そんなに沢山採れるわけでもないし、王都に近いので警備は忙しい方の森に入る。
 実際ヴァンさんも今日は見合いなので戻っていたが、普段は休息日以外は森の中にある管理小屋で生活をしているそうだ。

「一族の男手が欲しいのですよ。この屋敷と警備小屋と交代で男が居た方が良いですし」

 王都の治安は良い方ではあったが、スラムも次第に広がっているし、警備関連の仕事なので恨んでいる人がいるかもしれない。
 なので、出来るだけ早く一人娘に婿を入れたいのだとヴァンさんは説明していた。

「そういうお話でしたら。私は、弟達ほど有能ではないですけど」

「グラム殿は警備隊で部下を指揮しているし、うちの連中を上手く使って、真面目に根気良くやってくれれば良いのさ」

 それなりに教育を受けているとはいえ、いくら貴族でもそう有能な人ばかりと言うわけでもない。
 普通でも、真面目にノウハウに従って気長に勤める。
 職務は森林警護なので、そのくらいで丁度良いのだそうだ。
 何しろ、基本が何も起こらなければ御の字の事件を待つのがお仕事なのだから。

「初代ストラトス家から36代。そこに居るルーク殿のような魔法使いなんて初めてですからな。うちは、本当に平凡な騎士爵家ですから」
  
 どうせ最初から決まっていたのだが、お見合いは無事に終了する。
 グラム兄さんとお嫁さんのリンさんは、『あとは、若い人達だけで……』という言葉と共にデートに出かけていたが、思うに俺達の方が圧倒的に若かったりする。

「ルーク殿は一番若いのですが、一番爵位も上なわけで」

 式の日取りなどを相談しているとヴァンさん曰く。

「我が王都ストラトス家は、グラム殿が婿入りして、事実上男爵殿の派閥に吸収されますから。要するに貴族社会ではそう見られるという事です」

「ええと……本家はほぼ孤立していて。分家のはずのルークをトップにアンディさんのザフト家とグラムさんのストラトス家が一門を形成していると」

「あとは、旦那様がリョウ殿の独立した騎士爵家の創設を必ずや。リョウ殿も一門に入りますな」

 ファラに続けて、今まで静かにしていたエドガー軍務卿の家臣が説明を付け加える。

「それで、ルークはブライヒレーダー辺境伯様の寄子で、アンディさんはルックナー財務卿の寄子。グラムさんとリョウさんは、エドガー軍務卿の寄子ね。面倒くさいわね」

「面倒だけど、貴族ってこんな物だと思う事にする」

 ファラからの指摘に俺は半分涙目で答えていた。

「うーーーん。ルークを良く見ると様々な柵で雁字搦めのような……」

「ううっ、早く冒険者として働きたい……」

 以上でお見合いの付き添いは終了していたが、最後にヴァンさんからとんでもない発言が飛び出していた。

「今年は三年に一度の王国主催武芸大会です。ルーク殿も一度は出場しませんと……」

 何でも、エドガー軍務卿から絶対にと言われているそうだ。

「あの、その大会って魔法は?」

「使えません」

「一回戦負けだな」

 大会は、一週間後らしい。
 なので、時間があったら最後の足掻きくらいはしてみようと心に誓うのであった。
 それと、この後にエドガー軍務卿に夕食に招待されたのだが、特に面白い事も無かった。
 グラム兄さんとリョウ兄さんは、相手が雲の上の人なのでガチガチに緊張していて。
 アンディ兄さんは、所作は自然であったが内心では物凄く緊張しているようであったし。
 俺はなぜか普通に振舞えていたが、それは普段から導師を相手にしているせいであろう。
 何食わぬ顔でデザートのお替りまで要求するヴィルマがいた。



 ファブレ一門

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