様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 リネンハイム氏から屋敷を購入して以降、浄化魔法の練習も兼ねて週に4回ほど依頼も受けていた。

 依頼主は、ラングレー卿とアスガハン準男爵の縁威のエドガー軍務卿と教会と王宮である。
 依頼回数が一番多いのは教会と王宮であった。
 
「なぜ、俺が」

「浄化魔法は冒険者としての修行の一環として行っていると聞いたので王宮が依頼しているのである」

「確かにラングレー卿やアスガハン準男爵に伝えましたけど、それがなぜ王宮に話が行くんですか?」

「冒険者の修行を出したのは陛下である」

「そういえば、そうでした。しかし多くないですか?」

「王宮に大物貴族や政商などがルーク少年の修行依頼にこれはいかがですかと持ち込むのである。王宮としても王都にある瑕疵物件の浄化は必要であると認識しているので、許可を出したのである」

「俺に何の得が?」

 今のところ、何一つ得がない。



 先生役のエリーゼと助手のハクカと時折、婚約者のスズネと一緒である。
 エリーゼが一緒なのは、聖魔法が高レベルなためである。
 ハクカとスズネは、俺の婚約者なので問題ない。
 俺は、ハクカとエリーゼの柔らかくて温かい手を繋ぎながら歩いていた。
 商業街や工業街は、人通りが多いため迷子や誘拐されても面倒だからである。
 
「しかし、王都と周辺は瑕疵物件が多くないか」

「人が集まりますから」

「その分妬みとか溜まりやすいだって」

「ふ〜ん、逆に人が少ないと瑕疵物件が少ないのか」

「そうです」

 貴族街と商業・工業街の依頼全てが性質の悪い瑕疵物件の浄化であった。

「それなりのレベルなら、教会に任せれば良いから当然だと思うよ」

 長年浄化されていない性質の悪い悪霊やレイスなどの排除には、俺のような極稀に出現する強力な魔力で一気に消滅させる力技の方が有効だったりする。

 なお、同種である導師は、聖の魔法が苦手であるらしい。

『これなら、使えない方がマシである』

 と良くこぼしていた。

「(導師の場合、悪霊でも殴り殺すのかな?)」



 翌日。
 導師との特訓に行くと急遽、その日の特訓が取りやめになった。

「決闘かよ。えらく久しぶりに聞く単語だな」

 ヴェルの屋敷のリビングにアームストロング導師、ブランタークさん、ブライヒレーダー辺境伯と俺がいた。そして、エリーゼが全員分のお茶を淹れてから話は始まる。

「久しぶり?」

「ええ、ブランタークの言う通りです」

 ブライヒレーダー辺境伯様の説明によると貴族同士の決闘はこの王国がまだ小国であった頃から存在していたそうだ。

 名誉、女、土地、利権、財貨などだ。

 どんな理由でも構わないが、決闘を行うには明確なルールが存在している。

「相手に白い手袋をぶつけて、決闘を宣言するのである」

 導師も決闘のルールを知っていたようだ。

「それ、二回ともかわしました」

「では、成立していないのである」

 導師によると白い手袋が相手に触れない限りは決闘を申し込んだ事にならないそうだ。

「白い手袋をぶつけられない時点で、決闘なんて止めた方が良いと思うけどね。あの公爵様は」

「ルイーゼ嬢の言う通りではあるが、決闘には代理人も認められる故に」

「でも、何でここまで時間が経ってからなのかしら?」

 イーナの言う通りである。
 エリーゼが欲しいのであれば、婚約した直後に異議を申し立てれば良いはずだ。
 それが、今になってというのが怪しかった。

「念のために聞きますけど、エリーゼさんはヘルター公爵の事は?」

「はい、知っております」

 今から二年ほど前から、『ぼ、ぼっ、僕の二十五番目の妻に相応しいんだな』と言われ、しつこいくらいに妻になるように誘われていたそうだ。

「御爺様が、断り続けているのですが……」

 諦めが悪く『し、しっ、子爵如きが、公爵たる僕に逆らうのは不敬なんだな』と逆に向こうがホーエンハイム枢機卿を非難する有様なのだそうだ。

「子爵如きって、あの公爵様」

「ええ、バウマイスター男爵の言う通りです。表向きは、ちょっと困った方だと皆は言いますね」

 本音は、教会の幹部を考え無しで侮辱する空気の読めないバカという評価を受けているらしい。
 他にも色々と問題を起していて、バカだけど公爵だから公に非難されていないだけなのだそうだ。

 当然、裏ではボロカスであった。 
 王都の住民達などは、

『ちゃんと勉強しないと、あの公爵様のようになるぞ!』

 と子供を叱るのだそうだ。

「ヘルター公爵は、前国王陛下の末の弟なのですよ」

 王族だが行き先が無く、たまたま子供がいなかったヘルター公爵家に養子に入った。
 陛下からすると叔父に当たるわけだ。
 今までの不祥事でも注意はしているが、相手が甥なのでその場では素直に頷いても裏では聞く耳を持っていない。
 その繰り返しで、王族間でも鼻ツマミ者扱いなのだそうだ。

「ホーエンハイム子爵、怒ったでしょうね」

「みたいですね。王都在住の家臣から報告も上がりましたし」

 子爵風情とは言うが、実はヘルター公爵とホーエンハイム枢機卿では、貴族としての力は後者の方が上であった。
 それもそのはずで、この王国における公爵とは半分名誉職のような物である。
 余った王族に恥をかかせないレベルの生活を保障する程度の物でしかなかったからだ。
 なので、公爵に領地持ちはいない。
 大昔に国王が崩御した際、数名の公爵が同時に反乱の兵を挙げた事があるそうだ。
 それ以降は、公爵は王都在住で法衣貴族なのが決まりであった。
 地方で王権の正当性を訴えて、反乱を起せないようにだ。
 あと公爵家の数も決まっていて、そう簡単には増やせない仕組みになっている。
 そもそも階位というのはこの時に作られたらしい。
 王国成立初期には、貴族の中で一番階位が高い者が国王という意図でだ。
 その後に王権が確立されると、支給される年金の基準額が階位毎に決められたそうだ。
 昔に

『余の財産である、国の資産を自由に使って何が悪い!』

 と浪費に走り、国の財政を傾けた国王が居たとかだ。
 現在では、国王も第一位の階位に定められた年金を支給され、それを個人的に使うシステムになっていた。
 さすがに公費や歳費は予算から出るので、国王のお小遣いとしての年金であったのだ。
 あと公爵も当然、階位に従った年金を貰っている。

「年金は、貴族で一番多いですけどね。領地は、無しですけど」

 普通なら、法衣子爵如きに後れは取らないはずなのだが、ホーエンハイム子爵は教会の枢機卿でもある。
 当然、それ以上の実力があるのだ。

「エリーゼさんは、ホーエンハイム枢機卿のご令孫となります。それが、公爵の二十五番目の側室とか。父親が騎士爵以上なら、間違いなく誰でも怒ります」

 よほど食い詰めないと二十五番目という時点で問題になってしまうはずだ。
 その順位だと規模の大きい商人でも娘は差し出さないレベルであった。

「御爺様は、陛下に事情をお話になり、それを聞いた陛下は、ヘルター公爵を呼び出して叱責されました」

 しかし、この人は評判通りの人であった。
 都合の良い時には、陛下の叔父である事を鼻に掛ける癖に、このように怒られると

『甥如きの叱責など気にしない』

 という人のようで、全く懲りずに定期的にエリーゼを妾に欲しいと言い続けている。

「ある意味、凄い人だな」

「ええ、ただ自分の欲望のままに動いていますから」

 エルの指摘にブライヒレーダー辺境伯は困ったような表情をしながら答えていた。
 実際、今までに迷惑を被った事があるのであろう。

「俺が驚くのは、あのヘルター公爵に二十四人の奥さんが居る事実ですね」

「籍に入っていない愛人なら、これの三倍はいますけど」

「良く破産しませんね……」

 法衣とはいえ、公爵なので年金は多いはずだ。
 だが、それに準じて人を雇ったり、貴族として様々な付き合いなどもあるはずだ。
 あと王族と縁戚なのでそっちの付き合いもあって、公爵でそう余裕がある人はいないらしい。
 なのに彼は二十四人も奥さんが居る。
 どのようにやり繰りをしているのか、気になってしまうのだ。

「(実はやり手で、財テクに勤しんでいるとか?)」

「いえいえ。あの人は、借金だらけですから」

 さすがは、ブライヒレーダー辺境伯とでも言うべきか。
 彼は、ヘルター公爵家の懐事情にも詳しかった。

「彼の代で、急激に借金が嵩みましてね」

「理由が、簡単過ぎる……」

 浪費に、女性遍歴に、寄り子達への支援。
 毎年貰う年金は、借金の返済だけに消えているそうだ。

「(それって、自転車操業じゃん)」

 そんな状態(借金まみれ)でエリーゼを嫁に欲しいとか、ある意味お目出度く出来ているようであった。

「私がヴェンデリン様と婚約したと発表したら、大人しくなったんです。それで、諦めた物ばかりと」

「何か必勝の策があるのかな?」

「必勝の策と言いますか、バウマイスター男爵に勝てる決闘の代理人を見付けたのでは?」

「決闘か……」

「そもそも竜殺しの坊主に対抗可能な代理人かぁ。厳しいよなぁ……」

 元冒険者であるブランタークさんは、可能な限りヘルター公爵が雇えそうな高名な魔法使いを含む冒険者を思い出し始める。

「爆炎のキンブリーは、代理人なんて受けないからな。ブリザードのリサは、あの借金公爵が出せるような依頼金じゃないし……」

「物騒な二つ名ですね」

「冒険者でもあるから、二つ名のインパクトって重要なんだよ。仕事の依頼数に関わるし」

 プロレスラーに派手な名前を付けるのと同じ事のようだ。
 両名とも現役の冒険者としては有名人なのだそうだ。

「決闘形式だから、魔力と魔法威力に優れた坊主を出し抜く技が使えないのが厳しい」

 なまじ互いに公平な状態からのスタートなので、対戦相手は、経験に基づいた奇襲や相手の意表を突くような戦法が使い難い。
 そうなると単純に魔法使いとして高出力なヴェルに勝つのが難しくなってしまう。
 これで代理人を引き受ける人は、相当なマゾであるとブランタークさんは答えていた。

「相手が、俺なんて実は弱いと思っているとか?」

「あるかもしれないな」

 魔法の才能がある事に気が付き、ある程度の鍛錬で中級くらいにまでなった新人が陥り易い罠なのだそうだ。

『俺でも、あの骨竜は倒せた。むしろ、もっと余裕だったと思うし』

 などと思い込んでしまう。
 これも、その気になればほとんど独学で学べる魔法の悲劇というやつだそうだ。

「坊主、俺と導師で決闘方法を仕込んでやるから引き受けろ」

「良いんですか? いや、大丈夫ですか?」

「俺や導師なら坊主の負けだけどな。生憎とヘルター公爵からは代理人の依頼は受けちゃいないよ」

「某もである。しかし、五十七年ぶりの決闘であるか。楽しみであるな」

「あの、楽しいイベントってわけじゃないですけど……」

「前に気に入らぬ貴族に申し込んだのだが、泣いて断るので興醒めであった! 大の男が、みっともない!」

「(導師と決闘なんて、未来が死しか無いような?)」

 導師を除く全員が、心の中でその貴族に心から同情してしまうのであった。



 3日後

「さーーーて! 今日は、注目の大イベントだぁーーー! あの竜殺しの英雄バウマイスター男爵とヘルター公爵の代理人による決闘が、五十七年ぶりに行われまぁーーーす!」

 俺は郊外の空き地で行うのかと思っていたのだが、実際には何と王都コロシアムで行われるようだ。
 この王都コロシアムは、各種武芸の王国大会に幾つかある騎士団による模擬戦闘試合など、三万人ほどの観客を入れてイベントを行える、石造りの豪華な施設であった。



 俺たちは、関係者専用の席に座りながら軽食と飲み物を飲み食いしていた。
 リッド、ファラ、スズネ、ハクカ、リーリン、クララ、ヴィルマ、エル、イーナ、ルイーゼ、ブラント一家、ザフト一家、導師、ブランタークさん、ブライヒレーダー辺境伯とその家臣達たちであった。

「さーーーて! そろそろ、選手入場です!」

 ヴェルと4人の男たちがコロシアムに登場した。

「さ、さっ、最後なんだな。り、りっ、竜殺しもここで終りなんだな」

「よほど自信がおありなようで」

「さ、さっ、最高の代理人なんだな」

「どこにいるのです?」

「げ、げっ、元気が良過ぎるからまだ出せないんだな」

「はあ?」

 4人組は後ろへと下がり、その直後に対戦相手が入場する入り口の扉が開く。
 中から巨大な檻を載せた台車が前へとせり出し、所定の位置に着くとその檻の扉が開く。
 中からは、高さ五メートル全長十メートルほどの金属製の山のような物体が飛び出していた。
 いや、それは良く見ると魔物であった。
 属性竜には劣るものの、小型種のワイバーンよりは大きい。
 中型で群れを作って生活し、獰猛な肉食で時にはワイバーンさえ狩ってしまう中型竜。
 飛竜と呼ばれるそれが、ほぼ全身を金属製の鎧に包まれていたのだから。

「おいっ! 代理人なのか?」

「決闘のルールに代理人は人でなければ駄目とは書かれていません」

「そりゃあな……」

 決闘のルールには、『決闘者は、代理人を指名する事も可能である』としか書かれていない。
 だが常識から考えて、代理人なのだから人以外は駄目に決まっているのは当然であった。

「反則じゃないのか?」

 ヴェルの発言に観客席からも

『卑怯だ!』

 という声が上がっている。
 逆に

『面白そうだから戦え!』

 という野次も飛び交っていた。

「魔物では駄目とは、一つも書かれておりませんので」

「ささっ、早く戦わないと」

「バルシュミーデ男爵、あんたも戦う準備をしておけ」

「はあ? 何を仰っているのです?」

「そのクソ竜は、まずは弱そうで一人のあなたに向かいますよ。死んでください」

 檻を解放した。

「はあ……。忠告はしたからな」

 全身鎧の竜は、ヴェルを食おうと突っ込んで来る。
 途中、ヴェルは小さめの火矢魔法など放っていたが、あのミスリルコーティング鎧がちゃんと仕事をしているようで、全く効き目が無かった。

「まあ、予想通りか」

「強がりですか?」

 飛竜はそのまま全力でヴェルの魔法障壁にぶつかり、そのまま数十メートルほど弾き飛ばされてしまったようだ。

「なっ!」

「俺にも攻撃は効かないわけだ。それで、次だが……」

 飛竜は食欲と言う本能を満たすために、四匹の獲物に飛び掛っていた。
 そう、ヘルター公爵達という獲物にだ。

「ひいっ!」

 飛竜の標的が自分達に変わり、ヘルター公爵達はその場で腰を抜かしていた。
 どうやら、あの中に貴族の責務を果たせそうな人はいないようだ。

「く、くっ、喰われる!」

 ヘルター公爵が叫ぶのと同時に飛竜が四人の目前にまで到達するが、またも飛竜は魔法の壁に阻まれて数十メートルほど弾き飛ばされる。

 ヴェルが、あの四人の周囲にも障壁を張り巡らせたのだ。

「喰い殺されたら、後で事情が聞けないからな。決闘に制御不能な竜を持ち込むとか大不祥事ですぜ。公爵様」

「……」

 ヴェルの発言にバルシュミーデ男爵は顔を俯かせてしまうが、逆にヘルター公爵は元気になっていた。

「ち、ちっ、チャンスなんだな。い、いっ、今の内にバウマイスター男爵に一撃を!」

「バカ過ぎる……俺も魔法障壁で囲まれているからな! あと、代理人は竜じゃないのか!」

「か、かっ、関係ないんだな!」

 バルシュミーデ男爵以下三名は、もう観念して大人しくしているようであった。

「坊主、竜をどうにかしろ!」

「わかりました」

 観客席から、ブランタークさんが竜の始末をヴェルに依頼して来た。
 グラウンドの土を鋭い槍状にして複数空中に浮かせ、それを超高速で飛ばして飛竜の両目に突き刺す。
 飛竜レベルなので、鎧が被さっていない両目から脳の部分を破壊する事に成功した。

「本当に……。決闘をするなら、普通に申し込めよ」

 ヴェルは、死んだ飛竜を氷漬けにしてから魔法の袋に仕舞う。

「久々の決闘を汚す愚か者達を捕らえよ! 裁定は、陛下に一任する!」

 アームストロング導師の命令で、四人はコロシアムの警備兵達によって捕らえられていた。
 すぐに観客席中から、拍手が鳴り響いていた。



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