様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「じゃあ、僕はこれから剣の稽古があるから」

「ありがとう、アンディにいさん」

「なあに、可愛い弟のためさ」

 朝食後、まだ見た目がまだ幼い僕に一通り詳しく自分の家についての説明をしてくれたアンディ兄さんとアリス姉さんであったが、彼は剣の稽古があると言って屋敷を出て行ってしまう。
 昨日の夢の内容から、アンディ兄さんはあまり剣が得意ではないようで、下級とはいえ貴族の嗜みとして早く剣を覚えようと自主的に訓練を重ねているようであった。とはいえ、実はこのファブレ家に優れた資質を持つ剣の使い手など存在していないらしい。
 それと、あとは空いた時間に剣や弓矢などの武芸や乗馬などの稽古も行うらしい。

「あれ?れいぎさほうやじのよみかきやけいさんはならわないの?」

「礼儀作法は、当主就任以外で、王都に用事がないのと周囲から孤立しているファブレ騎士領だと習う意味がないのよ」

 意外と稽古の内容が少ないので、僕はアリス姉さんに聞いてみたのだが、このファブレ騎士領に居る限りは、当主が代替わりをする際には長旅をして王都に行きそこで叙勲を受けるが、後は貴族としての礼儀作法など特に必要は無いという事らしい。
 それにその叙勲も代々ファブレ家に伝わる鎧を着て謁見の間へと行き

『我、ヘルムート王国国王ヘルムート○○世は、汝、○○に第9位騎士爵を授ける事とする』

『我が剣は、陛下のため、王国のため、民のために振るわれる』

 このやり取りだけで終わってしまうらしい。
 王国には騎士など沢山いるので、忙しい王様が長時間相手などしないのであろう。
 アリス姉さんは、糸を製作しながら説明してくれた。
 確かに一生に一回このやり取りだけならば礼儀作法も必要ないであろう。
 高級貴族や中央で官職に就く法衣貴族は別としてだ。

「もじのよみかきやけいさんは……」

 これも、あまり必要性が無いらしい。
 貴族なのにと思ってしまう俺であったが、中央の王宮に居る貴族がそれでは駄目だが、治安維持や戦争で活躍できればさして問題にもならなかったらしい。
 どうせ普段は自分の領地に篭っているので、そのスキルを披露する機会も無いのだから。
 話を戻すが、うちも全員名前くらいは書けるが、あとは人によっては簡単な文章を読み書きできる。
 その程度であるらしい。

「ルークは簡単な文章を読み書きできるわよね?」

 八男であるが、領民のように幼い頃から労働力として数えられているわけでもない。
 そんなわけで、僕が乗り移る前のルークはアリス姉さんに文字や文章を習っているような子供であったらしい。
 僕の一番の仕事は、仕事をしている家族の邪魔にならない事であった。

「すこしだけど」

「もっと頑張らないとね」

 アリス姉さんに頭を撫でられしまうが、考えてみれば僕は八男なので当然家は継げない。
 アンディ兄さんが懸命に苦手な剣を習っているのも、きっと将来を見越しての事なのであろう。
 それとアンディ兄さんとアリス姉さんは、この家では例外的にかなり文字の読み書きや計算が出来るようだ。

「しょさいでほんをよんでいます」

「頑張ってね」

「はい」

 アリス姉さんとの話を終えた僕は、急いで書斎へと向かっていた。
 書斎に行く途中にトニーたちに会ったが特に会話なんてなかった。

「意外と本がある?」

 貧乏貴族家でもそれなりに歴史があるので、父の書斎にある蔵書の数は、多かった。
 分野も歴史、地学、文学、数学、鉱物、生物、魔物学などの平成日本で言うところの高校卒業レベルから、簡単な童話や絵本や料理の本まであった。

「ふつうによめる。というか、にほんご」

 家族と日本語での会話が成り立っているでそんな予感はしていたが、この世界は日本語が共通言語になっている。
 ただ、若干の違いはあるようであった。
 まず、庶民や中央の王宮に縁の無い下級貴族などが少しは読み書きが出来るという文章。
 これは、全く漢字が使われていなかった。
 漢字部分をひらがなで、ひらがなの部分がカタカナで記載されているのだ。
 この世界に普及している大半の文章がこの形態らしく、俺にはかえって読み難いと感じてしまう。
 次に王国や隣の皇国でも、王族や皇族、高級貴族、中央政府で発行される公文書や教会や各種ギルドの上層部、各分野の学者や学会など偉い人達が使用しているのが普通の日本語の形態に近い文章であった。
 僕には、物凄く読みやすかった。
 というか見慣れた物であったが、一部に意味不明な物も存在している。
 なぜか一部名詞に英単語が混じっているのだ。
 あと、日本語をローマ字表記した物とかだ。
 大半の文章は日本語なので問題なかったが、本によっては漢字で書かれた名詞がローマ字表記だったりとイマイチその法則は不明であった。更に美しい失礼の無い公文書とは、ひらがなとカタカナが七割、漢字が二割、その他が一割というのが黄金比率らしい。
 正直どうでも良いような気がするが、そんな事を気にするのがどこの世界でも官僚や役人という生き物なのであろう。
 とりあえず今は5歳児なので、今は出来る限りの体力作りや武芸の訓練に励み、後はこの書斎の本を読んでこの世界の知識を蓄えるのが良いであろう。
 そう考えながら本棚の端に目を向けると、そこには僕が今一番見たいと思っていたジャンルの本が並んでいた。

「はじめてのまじゅつ、ちゅうきゅうまじゅつ、じょうきゅうまじゅつ、れんきんじゅつのきそ、はじめてのまほうぐづくり!」

 僕は、もしかしたら魔法が使えるかもと心躍らせながら本を手に取るのであった。  



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