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 翌日。

「お待ちください。ルーク殿」

 ザフト邸を出ようとした俺をトガーさんが呼び止めていた。

「大変に申し訳ないのですが、教会本部から本洗礼の準備が出来ていると」

「しまった!」

 教会本部で箔付けのために本洗礼を受ける件は、最初に陛下に謁見した際にホーエンハイム枢機卿と約束してしまっている。
 しかも最初の予定も急遽決まったグレードグランドの討伐任務で潰れているので、これを無視するわけにはいかなかった。
 この世界で、教会を敵に回すわけにはいかないからだ。

「本洗礼ねえ……リッド達も来る?」

「遠慮しておくわ」

 リッドは、速攻で断っていた。
 堅苦しいのは、嫌なのであろう。
 俺も嫌なのだ。

「私も」

 ハクカたちも断っていた。
 そして俺は、教会で面白くも無い本洗礼を受けに聖教会本部へと出かけるのであった。

「ようこそ、おいでくださいました。ファブレ男爵」

「これもひとえに神のお導きかと」

「神は、ファブレ男爵に良き加護を与えたようですな」

 王都のほぼ中心部にある教会本部に到着した俺は、入り口で待ち構えていたホーエンハイム枢機卿以下十数名の高司祭や司教達の出迎えを受けていた。

 しかし、さすがはヘルムート王国のみならずアーカート神聖帝国でも唯一信仰されている宗教の総本山である。
 ただ、アーカート神聖帝国では新教派プロテスタントを国教としているので、まるで別宗教のように教会本部同士の仲は悪いそうだが。

 教会本部の敷地も広大で、建物も相当に金をかけて作っているのが誰にでもわかるほどであった。
 洗礼などの神事を行う大聖堂などは、天井一面が巨大なステンドグラスで覆われ、なるほど宗教ほど儲かる商売は無いなと俺を実感させていた。

 更に、このような会話となるわけであったが、これは定例の挨拶とでも言うべきであろうか。
 俺は正統派カソリックの敬虔な信徒であり、『神様のおかげで、無事に竜を二匹も倒せました。ありがとう』とお礼を述べ、ホーエンハイム枢機卿達が『あなたに神の加護があって良かった』とお祝いを述べる。

 別に俺は、神のおかげで竜が倒せたなんてこれっぽっちも思っていない。
 向こうも俺が真剣に神に感謝しているなんて思ってもいないであろう。

「あれほどの聖光が使えるファブレ男爵は、さぞや神に愛されているのでしょうな」

「ただ神の愛に感謝するのみです」

 前世では八百万というなの無宗教で、今も実家時代は洗礼以外で教会に行った事は数回だけだ。
 それ以外で、碌に神に祈った事など無い俺に神の加護があるとは思えなかった。
 どうやら、この聖の魔法は信仰心とはまるで関係ないらしい。
 もし信仰心が使用条件なら、もっと聖職者に聖魔法を使える人間がいてもおかしくないであろう。
 まあ、それを言わぬが華でもあり、教会はその有り余る金で聖魔法を使える人材を確保もしている。
 聖魔法は、数少ない例外である人間の領域に顔を出すレイスなどのアンデット退治に便利な物であるし、聖の治癒魔法には威力が高い物が多い。

 高位の聖治療魔法の使い手だと千切れた腕くらいなら簡単に繋げるし、癌などの病気も治せ、心臓が止まっても数時間以内くらいなら生き返らせる事も可能らしい。

 俺の聖魔法は高威力の聖光のみなので、治癒は水系統の魔法しか使えないのだ。
 厄介な事に治癒魔法は水系統にもほぼ同じ物が揃っている。
 聖の治癒が使えると水の治癒が使えず、その逆もまた同じなので俺は水系統の治癒しか使えない。

「では、早速に本洗礼を始めましょう」

 最初の予想では、長々と時間がかかるのかと思われた本洗礼であったが、実際には三十分をかからずに終了していた。

 普通の洗礼と違う点は、司祭役がホーエンハイム枢機卿で、その他の高司祭達などがその雑用に回ったくらいであろうか?

 お得意さんなので、高位の聖職者をケチらなかったようだ。

「本洗礼も無事に終わりました」

「ありがとうございます。これは、心付けですが」

 必要ないとは言われたのだが、寄付を貰って喜ばない坊主はいなかったので、俺はホーエンハイム枢機卿に綺麗な絹の袋に寄付金を入れて渡していた。

 金貨140枚

 尚、この寄付額は、ハクカの分も入っていた。
 さすがにハクカがパルケニア草原で陣狩り者や冒険者や兵士相手に治療で貯めたお金、327万6千セントの全額寄付はやめさせ、俺の寄付額と同レベルの寄付にさせたのであった。
 トガーさんに教会の寄付がいくらぐらいがいいか聞いたら

『貴族ですと年収分の10分の1の寄付金が普通ですな』

『やっぱりか』

 なので法衣男爵と双竜勲章の年金分の10分の1の寄付なのだ。

『所でヴェンデリンの所は治癒代で2倍ほど支払ったと聞いたのですが』

『通常ですとルーク殿も教会に納める必要性があるのですが、ハクカ殿が陣狩り者や兵士達を『治癒』をしたので、教会に納めなくてもよろしいですな』

『そういうもんか』

『ええ『治癒』をしてない人間に『治癒』代を請求なんて出来ませんな』

「これは、ご丁寧にすいません」

 ホーエンハイム枢機卿は、すぐにその袋を横にいた高司祭に普通に渡していた。
 さすがに、この場で中身を見るような真似はしないようだ。

「さて、本洗礼も終わった事ですし、お茶でもいかがですかな?」

「申し訳ありませんが、仲間を待たせているのでこれで失礼いたします」

「そうですか。分かりました」

 神殿を後にすると

「ルークお兄様、私が王都をご案内いたしますわ」

 神殿の前で侍女の手を借りて馬車から降りたスズネが言ってきた。

「スズネの案内なら、安心して任せられるよ」

「では、ご案内しますね」

 俺は、スズネと共に王都に遊びに行くことにした。



「似合っていますよ」

「普段着として良いね」

「はい」

 王都の観光地やお店などに詳しくは無かったが、スズネほどの実家になると服などは大抵オーダーメイドで作って貰ったりする。
 なので、彼女の服のセンスはとても良かった。

「ありがとう」

「いえ、私に出来る事はこれくらいですから」

 俺は、スズネと楽しい時間を過ごしていた。

「綺麗な所だな」

「私、この景色が好きです」

「俺も結構好きだな」

 王都の建物の高い所から夕焼けを眺めたりした。
 王都で買い物や食事に観光にとこれで楽しくないわけがない。

「あのレストランはどうでしたか?」

「美味しかったよ」

 俺は、スズネをラングレー家に送り届けると灰色の中年男性が現れた。

「スズネお嬢様・・・お帰りなさい」

「ただいま、帰りました」

「ファブレ男爵ですかな?」

「はい」

「ラングレー公爵家の執事でございます。当家の主がお話があるそうです」

 執事に誘われ、ラングレー家の応接間に案内された。
 応接間に1人の中年男性が上品なソファーに座っていた。金髪に青い瞳、縫製のしっかりしている上品な服を着ている男性である。
 執事に案内されるまま、ソファーに座った。
 男性の隣には、スズネが座った。

「アスラン・フォン・ラングレーだ。この家の当主だ」

「ルーク・フォン・ファブレです」

 メイドがお茶を入れてきた。

「どうぞ」

「いただきます」

 お茶を飲む。
 今まで飲んだお茶の中で、非常に香り高く上品な甘みがあった。

「本題に入るとしよう。ファブレ男爵は、スズネについてどう思われましたか」

「スズネですか?」

「ああ」

 俺は、スズネに視線を向けた。

「とてもいい子だと思います」

 スズネは、頬を赤く染めていた。

「ファブレ男爵には、スズネの婚約者になってもらいたい」

「・・・え」「お父様」

 俺とスズネの驚きの声が響く。

「無論、ファブレ男爵が困惑するのは分かっているのだが」

 ラングレー公爵が説明すると、どうやら中央の高位貴族たちがこちらに婚約者を仕立て上げるように画策しているようだ。もちろん各辺境伯達も同様に婚約者を宛がおうと画策しているそうだ。拒否しても陛下の勅命などあらゆる手で婚約者を宛がうように画策している中央貴族たちがいるそうだ。
 俺は、それを聞き渋い顔をした。

「・・・俺は・・・」

 ハクカが頭の中に思い浮かんだ。
 ラングレー公爵がさらに説明した。どうやら王家には30代ぐらいのお姫様がいて、このままだとその一人と婚約されかねないそうだ。
 俺は、ハクカを思い浮かべ、次にスズネを改めて見る。
 腰下まで伸びた透き通るような柔らかな金髪、澄んだ青い瞳、澄んだ鈴のような高い声、シミひとつない白い肌の綺麗系の美少女。
 俺は、決意を固めた。

「・・・・分かりました。スズネと婚約します」

「すまないな」

「あ・・・いえ」

「それとスズネとの婚約はルーク殿が成人するまでになる。もちろん、成人後にスズネとの結婚が嫌なら断って構わない」

 こうして、俺は、スズネと婚約した。
 ラングレー家は、ルークに命を救われたためにこのようなゆるい婚約が成り立ったわけだ。要するにスズネはルークが成人するまでの盾でありルークを縛る鎖でもあったわけだ。



 主人公一行紹介 貴族の紹介

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