様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「……バウマイスター上級伯爵、魔族とゾヌターク共和国に関する報告書は読んだ。それにしても……」

 俺達の魔族の国訪問はあまり意味があったとは思えない。
 最初は奥さんや子供達を連れての登場だったので好意的な世論も多かったのだが、進まない両国の交渉に魔族の他国に対する興味の薄さも手伝って、注目されなくなるまでさほど時間はかからなかった。
 人の噂も七十五日というが、俺達の話題は一か月保たなかったな。
 魔族という種族はあまりに長い期間自分達だけで生きてきたので、人間に興味がある者が少ないのだと思う。
 後半は特に何もする事がなく、辛うじて血脈を保っている魔王様ご一行と遊んでいただけだ。
 彼女達が農村復興運動を進めていたので、そこで農作業を手伝ったり、収穫物を一緒に調理して食べたり、魔王様がカイエン達の面倒を見たり、ヴェルが魔王様に算数を教えてみたり、政府に相手にされなくなったので、彼女達とばかり一緒にいたというわけだ。
 交渉が進まない以上、あまり長くゾヌターク共和国にいても意味はなく、俺達はヘルムート王国に戻ってきた。
 西部へ出陣命令も既に終了となっている。
 両国が交渉を続けており、ホールミア辺境伯もテラハレス諸島の基地規模や敵の少なさから判断して金がかかる動員を解除し、即応可能な少数精鋭部隊のみをサイリウスに配備するのみとなっていた。
 交渉が長期化するのが確実な以上、あまり大軍を動員していたらホールミア辺境伯も他の貴族も破産してしまうからだ。
 ただ、西部の準戦時体制は解かれていない。
 ホールミア辺境伯としても早く平和になる事を望んでいるはずだ。
 俺もそれは望んでいるのだが、交渉のチグハグさは王宮でも問題になりつつあるようだ。
 だが、魔族側の主張を受け入れるとヘルムート王国は国が成り立たなくなる。
 魔族側には妥協するという考えがなかった。
 普通の政府なら進まない交渉に批判が集まるものだが、魔族は基本的に外国に興味がない。
 大新聞社が政府に気を使って交渉に関する報道を控えるようになると、すぐに領空侵犯事件から始まる人間との接触に興味を失ってしまった。

 たまに大本営記事で、ゾヌターク共和国側は強気で交渉しているという記事が書かれ、それならいいと国民は満足してしまうそうだ。

『強気の交渉といえば聞こえはいいっすけど、ただ言いたい事を言っているだけともいえるっすね』

 ゾヌターク共和国を出る時、見送りにきたルミが事情を説明してくれた。
 交渉団には、人権団体のトップや動物保護団体のトップがいる。
 彼らはヘルムート王国における男女平等と民主主義の導入、狩猟と捕鯨の禁止などを条件に入れて引かない。
 こういう連中が原理主義者なのは、どこの世界でも同じだ。

「彼らはなぜこうなのだ?」

「生活が豊かだからです」

「それにしては、人口が減少傾向なのか……わからぬ」

「このまま粘り強く交渉を進めるとユーバシャール外務卿は言っておった」

 粘り強くねぇ……。 
 あの人は、内弁慶という欠点があるからなぁ……。
 向こうに押されて、不平等条約でも結ばなければいいけど。

「外交に関わる者達をすべて手伝わせておる。そういう事はないはずだ」

 内乱があった帝国との交渉に続き、久々の大仕事というわけで、他の外務卿に就ける貴族達も積極的に手伝いに行っているそうで、つまりユーバシャール外務卿がポカをしても他の者達が止めるシステムが出来上がったようだ。
 その代わりに『船頭多くして船山を行く』の諺どおり、何も決まらない可能性もあるけど。

「交渉には時間がかかると覚悟しておる」

 焦って不平等条約を結ぶよりは、なかなか決まらないで停滞していた方がマシという考えなのだろうな。
 魔族側は国民に批判されるかもしれないけど、それをヘルムート王国側が気遣ってやる必要などないわけだ。
 向こうの焦りは、こちらの得にもなる。
 どうせ、狩猟、捕鯨の禁止、女性の社会進出、民主主義の導入など王国が受け入れるはずがない。
 地球でも纏まらない外交交渉など珍しくもないので、纏まらない以上は放置しておくのも手ではあるのだ。

「もう一つ、リンガイアとその乗組員達の返還交渉についてだ」

「それは、ユーバシャール外務卿が交渉しているのでは?」

「これが上手くいっておらぬのだ」

「どうしてですか?」

 この件は、俺もほぼすべてのリンガイア乗組員達から事情を聞いているが、副長の一人であるプラッテ伯爵の跡取りが、魔族の船に魔法をぶっ放させたから事件が発生したという結論で一致している。ゾヌターク共和国警備隊による事情聴取でも同じ結論に至っており、その副長による暴走であるが、上官である艦長や空軍にも管理責任があるので謝罪する。プラッテ伯爵の跡取りは命令違反なので、現法あるいは過去の資料に基づいて処罰する。リンガイアと乗組員達の拘留にかかった費用を王国が負担する。

 このくらいの条件で手打ちにした方がいいと俺は思い、陛下に提案したのだ。
 陛下もそのくらいでケリをつけた方がいいと思っていた。
 ところが、ここでその条件は断固として呑めないと言い始めた人物がいる。
 勿論、プラッテ伯爵だ。

『魔族という存在が王国の取り巻く状況を大きく一変させるかどうかの瀬戸際に王国側が謝って魔族の風下に立つ必要があるのか? それは危険だ!』

 一見いい事を言っているように見える……とは俺は思わない。
 ようするにプラッテ伯爵は跡取り息子が厳罰を受けてキャリアに傷がつくのを怖れているのだ。
 プラッテ伯爵家は空軍司令官を世襲できる家柄であるが、さすがに厳罰を受けた人物を順当に出世させたり、司令官の職を回すわけにいかない。

 彼を次のプラッテ伯爵家当主から外さなければいけない空気になるわけだが、どういうわけか彼はあのバカ息子を溺愛している。
 だから国家のプライドなどという事を言い出して、すぐに実現可能なリンガイア解放を邪魔していた。
 俺からするとバカバカしい言い分なのだが、この意見、軍部と外務閥では一定の支持があるので解放交渉はまったく進んでいなかった。

「つまりプラッテ伯爵は、ヘルムート王国が謝るのはよくないと?」

「そう言っておるな」

 プラッテ伯爵の言い分は、国家間の関係などを考慮すると必ずしも間違っているとは言えないんだよな。
 だから王宮内にも支持者がいて、それがより問題を複雑化させている。

「どこか落としどころはないのですか? 乗組員達の拘留が長期化してしまいますよ」

 相手が人権を考慮する魔族の国なので、拘留された乗組員達が虐待を受けているような事はない。
 それでも長期の拘留となればストレスも溜まるはずだ。

「ご子息の拘留について、プラッテ伯爵は何と言っているのです?」

「向こうの状況を知るために先に奴だけ解放させようと抜かしておる」

 何だよ。
 結局自分の息子が可愛いだけじゃないか。

「こういう場合って、彼が最後に解放されるのがいいと思いますけど」

 建前としては、高貴な貴族が平民達の解放を優先し、自分は最後まで残る。
 高貴な者としての責務ノブレス・オブリージュというやつだ。
 実際に貴族が実践するかは別として、あのバカ息子は自分だけ解放しろと迫ってきたから、確実に実践しない方の人間なのであろう。

「そうじゃな。プラッテ伯爵の息子は最後に解放された方がいいであろう。例え、本人が嫌がろうとな」

 陛下もプラッテ伯爵のバカ息子が嫌いなようだ。
 好きな奴は、息子ラブの父親くらいであろうが。

「ユーバシャール外務卿はどうお考えなのです?」

「あの男、外部からの圧力に弱い部分があるからの。プラッテ伯爵とその賛同者に突かれてオロオロしておる。ただ、プラッテ伯爵の子息だけを先に解放するという交渉は、逆に魔族側に舐められてしまう危険性があると他の外務閥の貴族達に言われて受け入れていないそうだ」

「それもありますが、貴族の息子だけ先に解放するとヘルムート王国は傲慢な貴族が政治を壟断する国だと魔族から思われてしまう可能性があります」

「民主主義とやらか? 今、概要を学者達に精査させておるが、よくわからない統治システムじゃの」

 これまで数千年も王政に馴染んできた人達に民主主義を説明するのは難しい。
 俺やヴェルも理解できる範囲で陛下からの問いに答えていたが、上手く説明できたかどうか怪しいところだ。

「交易などの交渉が長引こうと問題はないが、やはりリンガイアの乗組員達だな。余は決めた。バウマイスター上級伯爵を正式に特命大使に任命する。リンガイアの乗組員達を解放してきてくれ」

「私がですか? ですが……」

 あきらかにユーバシャール外務卿がいい顔をしないと思う。
 自分の職権を犯されるからだ。

「バウマイスター上級伯爵に任せるのはリンガイアとその乗組員達の解放だけ。そもそも、ユーバシャール外務卿にはその交渉を第一にと任じておる。念のために二ルートで交渉を行わせるだけだ」

「わかりました。お引き受けします」

 ヴェルは、引き受けたようだ。

「ファブレ上級伯爵よ。向こうの技術はどうであった」

「そうですね。鉄などの合金技術と金属の成形技術などはヘルムート王国では勝てませんね。また魔道具ギルドが製作している魔道具の技術も向こうが上ですね。農作物や畜産も向こうが上ですね」

「なるほどの・・・」

「確かに魔族の魔道具技術等は上ですよ。ただおそらくリンガイア大陸では厳しいですね」

「どういうことかの」

「最大の問題は、魔族側は魔法使いにしか使えない魔道具しか作れないのです」

「なるほどの・・・いかに魔道具技術が優れておっても魔法使いにしか使えない魔道具しか作れないのでは、リンガイア大陸では使えぬというわけじゃな」

「はい、ですので向こうが魔道具を売りたいといってもこのリンガイア大陸では厳しいとおもいますよ」

「汎用性にすぐさま移行するのに時間がかかるわけじゃな」

「はい、それに1万年前に交流があったといってもその時ですら汎用品の製造は古代魔法王国が圧倒的だったよう上に魔族は使い道がなかったみたいで、1万年を境にだんだん汎用品は廃れていったみたいですね。魔法使い専用の魔道具を作るだけならヘルムート王国の魔法使いでも作ることが可能になります」

「ふむ」



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