様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 翌日の五の日。
 五の日とは、日本で言うと曜日みたいなものだ。
 一の日から七の日まであり、五の日から七の日までは学校がお休みのようだ。

「随分とお休みが多いのね」

 イーナだけじゃなく、俺達人間はみんなそう思っていた。

「そんなに急いでカリキュラムを達成しても上が詰まっているからさ」

 モールの説明によると、これも教育期間を伸ばす苦肉の策らしい。
 早く教育を終えても就職先が少ないから無職が増えてしまう。
 無職が多いと政府への批判が強まるので、休みを増やして教育期間を伸ばしたというわけか。

「バウマイスター上級伯爵殿、到着しました」

 その村には古い港があると聞いていたので、俺達は自家用の中型魔導飛行船で過疎地に移動していた。
 もう一隻、小型の警備隊の船も同行している。
 すぐに注目されなくなったが、一応国賓である俺達の護衛のためであった。

「陛下、ようこそお越しくださいました」

 魔王様と一緒に村に到着すると百名ほどの若者達が出迎えてくれた。
 見た目はみんな二十前後に見えるが、魔族はなかなか年を取らないので本当の年齢はわからない。
 だが、みんな百歳にはなっていないはずだ。

「皆の者、今日はわざわざの出迎え感謝する。村も活気が出てきて余は嬉しく思うぞ」

「みんな、やる気を出していますからね」

「陛下、農業って楽しいですね」

「なかなか作物が育たなくて落ち込む時もありますが、収穫した物を手に持った時の重みでそれも吹き飛びます」

「陛下、自分は鶏を飼い始めたのです。ようやく卵を産んでくれるようになりました。前の年寄りに高価な羽毛布団を売りつける仕事よりも充実していますよ」

 若者がなかなか就職できない社会ってのは深刻なんだと思った。
 それでも、農村で暮らす事に生きがいを感じ始めたのだから、お飾りでも魔王様はみんなのお役に立てているのだな。

「今日はお客さんも多いのですね」

「うむ、遥か東リンガイア大陸にあるヘルムート王国よりバウマイスター上級伯爵とファブレ上級伯爵とその家族が来てくれた。余の客人である」

「それでは歓迎しないといけませんね。今日は、芋の収穫を利用して芋掘りをしようと思うのです」

「芋掘りか! 楽しみだな!」

 いくら魔王様でも、やはり年相応の子供だ。
 村の代表から芋掘りができると聞くとはしゃいでいた。

「芋掘り? 楽しそうだな」

 勿論、俺も楽しみにしている。
 というか、あの何もないホテルで待機する生活に飽きていたのだ。
 政府の対応が適当すぎて、俺達は何のためにここにいるのだという気持ちになってきてしまうから。

「芋ならカイエン達に離乳食を作れるかな?」

「いいわね、それ」

「ボク達も芋料理が食べられるね」

 イーナとルイーゼも乗り気となり、カイエン達を船内のメイド達に預けて、みんなで芋掘りに参加した。
 俺も魔法など使わず、自力で芋を掘っていく。

「あれ? 小さい?」

「旦那の掘る芋は小さいのばかりだな」

「言うほど、カチヤの芋も大きくないじゃないか」

「あれ? 芋はうちの実家の得意技なんだけどなぁ……」

 確かにサツマイモに似ているけど、マロ芋とは違うんじゃないのか?

「合成肥料を用いておらぬから、大きさもまばらなのだ」

 合成肥料?

 化学肥料みたいなものか。
 魔王様の言いたい事はわかる。
 要するにこの村で行われている農業は、日本でいうところの有機無農薬栽培なのであろう。

「農作物規格には合わぬから、通常の流通路には載せられぬ。だが、この運動の支援者達が購入してくれて評判もいいぞ」

 ますます、日本で見た事があるような運動だな。
 農業を古い方法に戻し、それを支援者に販売して経費をねん出するわけか。
 有機無農薬野菜ファームとか、そんな名前をつけたくなる。

「旦那、合成肥料って何だ?」

「魔法技術を用いた肥料だよな?」

「作物の成長に必要な成分だけを抽出した工場で生産される肥料と学校で習ったぞ」

 魔王様がヴェルの問いに答えてくれた。
 芋掘りに夢中で鼻の頭に土がついているが、これもご愛敬。
 しっかりはしているが、年相応の子供なんだよな。

「陛下、お鼻に土が」

「うむ、大儀である」

 それに気がついたライラさんが、ハンカチで土を拭った。
 こうしているのを見ると君臣の関係というよりは母娘に見えてしまう。 

「へえ、それがあったら兄貴ももっと楽になるのかな?」

「それはないな」

「そうなのか?」

「作物に必要な栄養素というのは、自然肥料も合成肥料も変わらないからな。土作りの腕はファイトさんのほうが上だと思うぞ」

「兄貴が上なんだ」

「ファイトさんなら自分の領で育てている作物限定なら必要な肥料が分かるからな。この辺は経験だからな」

「うちの場合、合成肥料の購入費もバカにならないから自然肥料使っているのですがね」

 金をかけずに生活するための運動だから、肥料代で苦労したら意味がないか。
 農薬の類も同じで、肥料と農薬の会社ばかり儲かって農家が困窮しては意味がないのであろう。

「自然肥料でもちゃんとやれば美味しい作物は取れますしね。害虫に使う忌避剤も自作ですし。除草剤は使わずに草取りで。収穫した作物は大きさや形がいいものを支援者に送り、残りを自分で食べる。これで十分です」

「ヴェル、これは大きいわよ」

「へへん、ボクの方が大きいよ」

「たまにはこうして童心に返るのも悪くないのである!」

「娘を連れてくれば喜んだかな?」

「たまには土に塗れるのも悪くないのであるな」

 若者から、約三名いるおっさんまで、みんな芋掘りを楽しんだ。
 通常の収穫作業も兼ねていたので、村の芋畑にあるすべての芋は村民達により無事収穫される。

「これで子供達に離乳食を作るか」

「カイエン達はまだ歯がないから、なるべく薄く伸ばしてな。ペースト状にするんだ」

「詳しいな」

「赤ん坊にあまり濃い味はよくないから、素材の甘さを生かす方向で。おっと、ハチミツは使うなよ」

「ヴェル、相変わらず妙な事に詳しいんだね……」

「勉強したんだ」

「バウマイスター上級伯爵は、この国の人間のようだな」

 日本と魔族の国って、似ている部分が多いからな。

「エリーゼ、裏ごしした方がいいと思うが」

「そうですね、味付けはこのままでいいと思います」

「十分に甘いですからね」

 エリーゼ、テレーゼ、リサ達が離乳食を仕上げ、それをカイエン達に少しずつあげていた。

「だぁーーー」

「そうか、美味いか」

 エルとハルカも、夫婦でレオンに離乳食を与えていた。

「子供が多いのは羨ましいな。我らには子供がいない」

 魔王様自身が子供だと思うのだが、彼女を除くと確かにこの村に子供はいなかった。

「国にとって子は宝だと思うのだが、我らの運動に賛同して参加した者達の大半は元無職。全員が未婚で、当然子供がいるはずもない。建国計画は苦難の連続だな」

「それでも、ここで出会って結婚した者達もいます。お腹に子供がいる者も数名いるので、そう悲観したものでもありません」

 魔王様はともかくライラさんはそう状況を悲観していないようだ。

「でも、学校はどうするの?」

 ここは、人が住んでいる町から大分離れている。
 元々廃村になったところを再利用しているため近くに子供を通わせる学校がなかった。
 魔王様自身が、お休みにならないと視察に来れないくらいなのだから。

「教育は必要だろう」

「教師を引退した者や、この中にも教員資格を持っている者が複数いる。何とか、義務教育を行う学校を作りたいのだ。幸いと言っていいと思うが、元々学校だった建物もあるからな」

「許可が出るの?」

 俺が一番心配したのはその点だ。
 ここが日本に類似した国だとすれば、新しい学校を作るのにどれだけの書類を出さなければいけないか。
 ライラさんが主となって役所と交渉するのであろうが、その道は遠く険しいはず。

「確かに必要な書類や条件が多すぎて困難です」

 せっかく子供が産まれても、その子を学校に通わせるためにこの村を離れなければいけないのでは本末転倒になってしまう。
 今お腹にいる子供達が通える学校が建設できなければ、村の規模拡大は難しいであろう。

「もう一つ、医療をどうする?」

「治癒魔法があるではないですか」

「それがさ、この国は医者の資格がないと治癒魔法禁止なんだって」

「本当ですか?」

「それが驚いた事に事実なんだ」

 エリーゼのみならず俺もビックリしたが、今の魔族の国では無資格者が治癒魔法をかけると最悪投獄される危険がある。

「そんなバカな事があるのか?」

 テレーゼからすれば、使うと便利な治癒魔法の使用に制限をかけてしまう魔族の国というのが信じられないようだ。

「理由を聞くとバカらしいけど……」

 魔族の国は、豊かになるために魔法技術を高めに高めた。
 その結果、今のこの国の繁栄は魔法技術によって支えられている。
 医師としての資格がない者の治癒魔法の禁止、これは『医療について素人なのに治癒魔法で治療を施して何かがあったらお前は責任を取れるのか?』。

 こう言われてしまうと確かに困ってしまうな。
 攻撃魔法の類も練習する者はあまりいないそうだ。
 警備隊の面々も肉体的な訓練とエリアスタンを使用しているそうだ。
 例えばテロリストが現れた時……仕事を寄越せというデモくらいらしいが……警備隊が攻撃魔法で彼らを鎮圧して死傷者が出るとマスコミや人権団体に非難されてしまう。
 人死にが出ない程度の電撃系の魔法というのは加減が難しいので、日々エリアスタンを使うための繊細な魔法技術を高める訓練しているそうだ。

「この村では、一部魔法を使っています。何分長年放置されていたインフラが多く、修理できないものは魔法で補うしかありません」

 魔法に関する資料は大量に残っているので、それを参考にして重い物を運んだり、畑を耕したり、道を整備したりしているそうだ。

「昔に戻ったというわけじゃな」

「お金がありませんので、自分で何とかできる事は自分でするというのが、この村の決まりです。幸いにして、薬剤師の資格を持つ者がおり、この近辺には薬草の類も生えております」

 魔法薬を生産し、それで怪我や病気に備えるというわけか。

「医師の資格を持つ治癒魔法使いの方がこの村に興味を持っているので、治癒魔法の件はじきに解決すると思います」

 魔王様を村長とした村は、着々とできあがっているわけか。

「難しい話はそれくらいにして、余はお腹が減ったぞ」

「俺もお腹が減ったな」

 収穫した芋を使ったベビーフードも完成し、カイエン達はそれを美味しそうに食べていた。

「他の料理も完成しました」

 ハクカ達も手伝い、天ぷら、大学イモ、キントンなども完成し、村人達と一緒に食べ始める。
 自分で収穫した作物を調理して食べると美味しいものだ。

「見よ、バウマイスター上級伯爵。我が臣民候補達は楽しそうではないか」

 若い村人達が、収穫した作物を一緒に調理して美味しそうに食べている。
 それぞれに持ち寄った料理、酒、お菓子などもあり、まるで収穫祭のようであった。

「職がない、結婚できない、そんな者達でこの村に興味があれば、余は何人でも受け入れるぞ。そして時がくれば、ゾヌターク王国復活も十分にあり得る」

「陛下、その準備も着々と進行中です。この村の作物を卸す店舗も決まりました。生産者の名前と顔をお客様に知らせ、少し高くても安心して購入していただく仕組みです」

「おおっ! 素晴らしい手ではないか!」

 何だろう。
 その手法って、日本だと当たり前のようにあるんだけど……。

「他にもいくつかの廃村を再生させ、その中から首都に一番近い村に産品を集め、定期的に市を開きます。作物を材料に使った特産品も開発しましょう。これを販売する市を『道の駅』と命名しました」

「いいアイデアだな! ライラ!」

「……」 

 あの……ライラさん。
 それって、日本の農村だと当たり前のように存在しています。
 だから何って言われると困るけど……。

「このまま順調に規模を拡大させれば、必ずやゾヌターク王国の復興が成るでしょう」

「おおっ! まさに王国再興千年の計というやつじゃな!」

「ねえ、ヴェル」

「本当に王国が復興できるかもしれないし、本人達が喜んでるんだ。気にしない方がいいよ」

 イーナが何か言いたそうに見えたが、ヴェルはそれをやんわりと止めたのであった。



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