様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「ははははっ! 見つけたのである! 某達に獲られて食われるがいいわ!」

 翌日、導師のせいで俺達は沖合に海猪ことクジラ・イルカ漁に出かける事となった。

「ルーク、例のテラハレス諸島群に近づいたな」

「心配するなである! まだ全然遠いのである!」

 リッドの懸念を導師が大声で否定する。
 普通こういう場合は、若者の方が無茶をしようとしてそれを年配者が止めるものだが、うちではまるっきり逆であった。

「海猪ねぇ……」

「ルーク様、海猪は使える部分が多くてお得」

「そうなんだ」

 ヴィルマによると、この世界でもクジラの油でランプを灯すらしい。
 他の部位も色々な品の原料になるので、水揚げさえされればすぐに売れてしまうそうだ。

「さてと導師が満足するように頑張ろうかな」

「貴族の旦那、早速探索を開始するだ」

 とはいっても、実際にクジラが見つからなければ意味がない。
 操船を任された漁師は、船を動かしてクジラの群れを探す。

「貴族の旦那、あそこに!」

 見つからない可能性もあったが、この世界のクジラはあまり人間に獲られていないためかかなりの数存在するようだ。
 十数頭の群れが悠々と泳いでいるのが俺達にも見えた。

「それで、銛を撃つのよね?」

「そうだ……」

 艦首に銛がついたバリスタが搭載されているのだ。

「結構距離があるわね……」

 とは言いつつもファラは銛を発射し、無事に命中させる事に成功した。
 体に銛が刺さったクジラが暴れるが、そのロープを導師とヴィルマが自慢の怪力で引っ張る。

「ご馳走、逃がさない」

「おおっ! いい引きである!」

 普通の人間なら海に引きずり込まれると思うのだが、導師とヴィルマには余計な心配であった。
 銛が深く刺さったクジラは暴れるが、次第に船の近くに引き寄せられ、百メートルほどまで引き寄せられたられた時点で、俺が『エリアスタン』の魔法を放って気絶させた。

 気絶したクジラに止めを刺すと、それは魔法の袋に仕舞われた。
 さすがに船の上では解体できないので、それはあとで行う事にしたのだ。

「次は、某がやるのである!」

 以上のような方法で、クジラ獲りを始めた。
 導師は、銛が刺さったクジラを引くのも魔法で止めを刺すのにも参加してとても楽しそうだ。

「大漁なのである!」

「持ち帰ってから漁師達に解体させて販売か」

「これだけの海猪が一度に揚がるのは珍しいですぜ」

 それから半日ほど、クジラは順調に獲れた。

「ただ、やっぱり魔法の袋がないと難しいかも……」

「仕舞う場所がないもんね」

 特にする事もないハクカは、試しにクジラの肉や油を使って船内で調理を始めた。

「汎用の魔法の袋は高いからなぁ……」

「ええ」

 獲ったクジラを積むには大きな船がいる。
 だが、普通の漁師がそんなに大きな船を準備するのは難しい。
 小さい船だと獲ったクジラをロープで引っ張って港に戻らないと駄目だが、監視を怠るとサメに食われて商品価値が落ちてしまう。
 サメなら船で引いているクジラが食べられるだけで済むが、海竜を呼び寄せてしまうと漁師まで危険に曝されてしまう。
 体が大きいので金にはなるが、海竜や同じ大きさの魔物には負ける。
 そんなに強くはないが、やはり地球のクジラよりは凶暴なので、生命の危険を感じると船に体当たりをする個体もいて、需要があるのに水揚げ量が少ないのには、そんな理由があったのだ。

「安定した捕鯨で食肉を確保すれば、殖産にも役に立つな。ファブレ伯爵家でも研究させようかな」

 港に戻るとヴェルたちが尋ねてきた。
 魔導船に招き、たずねてきたわけを聞くと魔族の3人を保護したそうだ。
 彼らから話を聞くとリンガイアは先に領空を出るようにと忠告した防衛隊の艦船に魔法を放ったそうだ。

「誰が魔法を放ったのであるか」

「情報によると、副長の貴族のボンボンだってさ」

「おいおい」

「何か、向こうの新聞に大きく載ったらしいよ」

 ところが魔法は大した威力でもなく、魔族の国の魔導飛行船は装甲が固い。
 まったく効果がなかったが、それでも攻撃は攻撃だ。
 反撃されて拿捕されてしまったそうだ。
 これらすべて、魔族3人からの情報であった。
 記事によるとその副長プラッテ伯爵家の御曹司は、取り調べの場で『自分は次期プラッテ伯爵なのだから、それに相応しい待遇を!』と我儘を言い、取り調べをした担当者を困らせているそうだ。

「『血筋だけで貴族になった我儘息子の火遊び』と魔族の国の新聞では非難しているそうだ」

 同じ王国貴族なのだが、まったく擁護できない。

「ただ、これをそのまま陛下に伝えても意味ないよな?」

「そうであるな」

 それが事実だという決定的な証拠がない。
 魔族が、ヘルムート王国を陥れるために仕掛けた罠だと言われればそれまでだ。

「実際にそう言いそうだからな」

 特に主戦論を煽っているプラッテ伯爵などは。
 まさか、今さら『うちの息子が悪いんです』とは口が割けても言えない。
 王国貴族の中には、何とか魔族の住む大陸に侵攻できないかと考えている者も少なくはない。

「それで、バウマイスター上級伯爵はどういう風にしたいのであるかな?」

「現状維持でしょうね」

 魔族がテラハレス諸島群から空中艦隊を撤退させ、王国はプラッテ伯爵家のボンボンがリンガイア拿捕事件の責任者なら公式に謝って公平な通商条約を結ぶ。

 ただし、言うは易し行うは難しである。

「バウマイスター伯爵、どうするのである?」

「やっぱり面倒だから、全部事情を陛下に話しましょう!」

 そう導師に宣言すると俺達は急ぎ王宮へ『瞬間移動』で向かう。
 魔族3人達も耳を隠して同行したが、事前に導師が陛下に連絡を取ったので兵達は何も詮索しなかった。

「バウマイスター上級伯爵は、相変わらず豪運なのか悪運なのかというところじゃの」

 今回は、閣僚すらいない状態で謁見を行っていた。
 導師が陛下の護衛に入るので認められる滅多にない事だ。

「我らとて、別に遊んでいたわけではないのだ」

 外務卿を団長とする外交団を送り出したのはいいが、何も進んでいない。
 外交団の一行は魔族艦隊旗艦に留められ、王宮への通信は可能であったが、毎日『もう少し待ってくれ』としか言われていないそうだ。

「魔族の国は一体どうなっておるのだ?」

 いくら政体が違うとはいえ交渉すら始まらないのは困ってしまうと陛下が言う。

「それはですね……」

 魔族3人からの情報に陛下は溜息をつく。
 彼は、耳を隠した魔族3人にあまり興味を持たなかった。
 それどころではないのと3人は所詮政治家ではないのだ。
 あまり騒ぐと他の貴族達に知られるので、わざと興味がないフリをしているかもしれなかったが。

「政権が交替した直後で混乱? まあ、王国でも過去にないわけでもないの」

 王と閣僚の交代が重なって政治が混乱し、当時帝国と戦争をしていたのになかなか停戦交渉が始まらなかった。
 過去にはそんな事もあったようだ。

「しかし、困ったの」

 西部は限界まで動員を行い、王国軍も一部兵力と空軍を、うちのように魔法使いや荷駄などを送っている貴族もいて、何もしていないのに資金と物資を食い潰していく。

 せっかく帝国が内乱で疲弊して、これから王国の開発に増々力を入れようとした矢先であった。
 陛下からすれば、今度は王国を襲った悪夢なのであろう。

「とはいえ、ここでバウマイスター上級伯爵やファブレ伯爵を交渉に送り出しても意味がないの」

 最初の交渉団と同じく待機させられるであろうし、外務卿達はいい顔をしないであろう。
 俺は外務閥ではないので、あきらかに彼らの職権を侵しているのだから。

「新たな情報はありがたかったが、困ったのぉ……」

 などと話をしていた翌日、ようやく話が動いたそうだ。
 魔族の国から新しい魔導飛行船がテラハレス諸島群に到着し、そこにようやく政府からの交渉団が乗っていたらしい。
 王国の交渉団から、速やかに交渉を始めると連絡が入った。

「何か、嫌な予感がするけど……」

「ヴェルがそう思うと、結構当たるのよね。交渉で揉めるとか?」

 イーナも心配そうな表情をするが、今の俺達には何もできない。
 朝起きて各種修練を行い、サイリウスの町の観光をしていた。

「異国情緒溢れるねぇ……」

「せっかくだから、何か特産品でも食べよう」

「両親へのお土産、何にしようかな?」

 モール達のためであるが、彼らは初の外国旅行を心から楽しんでいる。

「これで、女の子がいたらなぁ……」

「いるじゃないか。みんな可愛いし」

「可愛くても、みんな人妻と婚約者という点がねぇ……」

 ちなみにエリーゼは未だに婚約者である。
 魔族も人間と大差ないので、色々と思うところがあるのかもしれない。
 魔族の国は一夫一婦制で、若者の婚姻率が徐々に下がっているらしい。
 結婚できない若者が徐々に増えており、モール達も彼女くらいは欲しいと思っているのであろう。
 町中を歩く若い女性に度々視線が向かっていた。

「よくよく考えたら、無職に彼女は難しいか」

「物凄いイケメンとかならあるかもしれないけどな。ヒモにでもなるか?」

「俺達のどこにイケメンの要素があるよ? あと、ヒモは意外と大変だと聞くぞ」

「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」

 モール達のあんまりな会話にエリーゼ達は何も言えなかった。

「みなさん、独身なのですか?」

「俺らの年代だと九十パーセント以上は独身だよ」

「みなさんは、おいくつなのですか?」

「俺は五十四歳、ラムルとサイラスは五十三歳だね」

 ハルカの質問にモールが答えた。 
 魔族は人間の三倍近く生きるので、人間に換算すると十八〜二十歳くらいか。
 俺達とさほど年齢に差がないように見えるわけだ。

「五十歳をすぎるまで学生さんなのですか?」

「そうだよ。魔族って長生きでしょう? あとは、職もないから」

 義務教育が二十七年、その上の高等教育が九年、大学十二年、大学院は六年から十二年もあるらしい。

「そんなに習う事があるのですか?」

「いいや、学生なら無職を糊塗できるからだね」

 いくら魔族でも、そんなに長期間学校に行く必然性がない。
 ただ、必要な教育期間だけで世間に出すと無職が増えるので、長々学生をやらせているだけのようだ。

「長いモラトリアムだな」

「バウマイスター上級伯爵は難しい言葉を知っているな」

「そうなんだよ。学校なんて週に二〜三日しかないし」

「たまに行くのを忘れたりな」

「それでも進級は楽だし、アルバイトで時間を潰せるのもいいね」

 モール達は笑っているが、長く生きる魔族にもそれなりに悩みはあるようだ。

「魔法使いなのに……」

「ヴィルマさん、人間では魔法使いは珍しいけど、魔族は全員だからね」

「余るのが多いわけ」

 もし魔族でなければ、彼らなどあっという間に仕官可能なのにと思ってしまう。

「そんな厳しい現実を忘れ、今は観光を楽しみましょう!」

 その日は楽しく観光をしたのだ。



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