様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「貴族の旦那、今日も大漁でしたな」

「ああ、食べる分は確保して、あとは売却だ。今日も臨時ボーナスが出せそうだな」

「みんな、喜びますぜ」

 暇潰しに漁を始めてから一週間、いまだに事態は動かない。
 ホールミア辺境伯も何も言ってこないので、俺達は自由に行動している。
 各々の鍛錬や魔道具開発や勉学、遊びと買い物、そして漁を続けている。
 船の権利は俺にあるのでオーナーとして漁師達に日当を払い、獲った獲物はオークションで流し、売り上げに比例して決められたボーナスを出す。

 この方法でも、彼らは収入が増えて嬉しいようだ。

「貴族の旦那がこの船を売ってくれればもっと嬉しいんですがね」

「残念だけど、それはできないな」

 彼らはファブレ上級伯爵領の領民ではないので、それはできない。
 その辺の線引きは絶対に必要であった。

「残念です。それにしても貴族の旦那は漁師姿も板についてきましたな」

 網を使わずに釣竿で釣るスタイルに変化はなかったが、初日とは違って魚が沢山釣れるようになった。

「私は日焼けは……」

「私も駄目」

「お肌に悪い」

 俺の妻達は帽子などを被り船に乗り込んでいる。
 それでも、魚が大量に釣れて面白いので特に用事がなければ毎日ついてきた。

「新鮮な魚料理は美味しいのである!」

 導師も相変わらずだが、彼も王宮筆頭魔導師の癖にホールミア辺境伯や王国軍に呼ばれもしない。

 やはり、平時には役に立たないと思われているのであろうか?

 今は平時とは言いにくいが、つまり事務的な事では役に立たないと思われているのであろう。
 フィリップとクリストフも暇なので訓練ばかりしているらしい。
 敵がいるのに何もできないと、こちらに魚を買いに来た時に愚痴を溢していた。



 今日も漁を終え、『魔導遠見通信』で子供達やスズネたちと会話をした後、今日は夕食会を開いた。
 あまりに何も状況が動かないので、フィリップとクリストフを呼んで情報交換を試みたのだ。
 相変わらず着陸させた船内での生活なので、客はあまり呼んでいない。
 二人と彼らの部下、あとは彼らに新しく出来た寄子達だそうだ。

「もう寄子を?」

「帝国内乱で褒賞を受けた貴族は俺だけじゃないのさ」

 一緒に戦った中で、貴族の次男三男で食うために軍人をしていた指揮官クラスが数名、一緒に騎士爵を貰って法衣貴族として独立、そのままフィリップの寄子になったそうだ。

「あっという間にできあがる柵……」

「ファブレ上級伯爵、そう思っても口に出すな。俺だって戸惑ったんだ」

「えっ? 元は大貴族の息子なのに?」

「俺が細やかに寄子達を把握していたと思うか? そういうのはクリストフの担当だったんだよ」

 軍人肌の長男、内政官肌の次男だったからなぁ……。

「それは駄目なんじゃ?」

「フィリップ兄さん、一応形だけでもそういう事はしていたという風にしていてください」

 フィリップは、クリストフに釘を刺された。
 確かに何もしていなかったとカミングアウトするのはよくないか。 

「人に言うほど、ファブレ上級伯爵も寄子達に細やかな配慮とかしてないだろうに」

「まあ、してないけど……俺の寄り子は、ファブレ一族のみだからな。せいぜい収穫の時に出てきた作物を買い取ったり、ファブレ領で取れない商品を販売したり、赤石を買い取ったり、年越しパーティや各種パーティに招待したぐらいか」

「・・・それだけやれば十分だとおもいますよ」

「そういえば園遊会なんて開いたことないな」

「開いた方がいいのでは」

「いつもの面子しか呼ばないけどね」

「もう少し貴族らしく付き合いを増やしたらどうですか」

「考えておく」

「俺は、今はやっているぞ。みんな、俺が頼りだからな。法衣騎士なんて吹けば飛ぶくらいの存在だからな」

 昔とは違って、今は自分が面倒をみてあげないと駄目らしい。
 フィリップは、共に帝国内戦で苦労した部下達の面倒をよく見て慕われているようだ。

「俺とクリストフもエドガー侯爵の寄子で世話になっているからな。その点はありがたいし楽だな。その代わりに、こうしてファブレ上級伯爵と情報交換に務めたりするわけだが……。代わりにこちらも情報をファブレ上級伯爵に渡そう」

 二人の寄親であるエドガー侯爵からの情報で、実は既に極秘裏に外交使節団を例の魔族艦隊に送り込んでいるらしい。
 だが、一向に交渉が始まらず、艦隊内に留め置かれているそうだ。

「監禁されている?」

「わからん。定時通信は普通にできるそうだし、用事があるのなら戻っても構わないと向こうの指揮官に言われたそうだ」

「いい条件で交渉しようとジラしているのかな?」

 こちらが外交使節団を送ったのだ。
 普通なら、すぐに責任者が対応するはず。

「王宮でも判断がつきかねてな。中には『我がヘルムート国を舐めている! すぐに攻撃開始だ!』とか騒ぐ貴族もいて……まあプラッテ伯爵達なんだが……」

「・・・あの伯爵か……俺のときは、王都で魔導飛行船の改装や王宮で各種設計の話し合いをしていたからな、彼そのものに会ってないけどね」

「ヴァイツ空軍司令官や陛下や高級官僚たちに睨まれるのは、良くないとわきまえたそうだ。その代わりバウマイスター上級伯爵に被害が集中したそうだ」

 自分の跡取り息子がリンガイアの副長だから、彼を取り戻すために戦争も辞さないと吠えているそうだ。

 親バカも極まれりだが、俺もゼスト達が同じ目に遭ったらああなるのであろうか?

「王国政府としては数を頼りに圧力をかけて何とか平等な条約を結びたいわけです」

「可能なのかな?」

「そう思っていないとやってられませんから。問題は、プラッテ伯爵達のように足を引っ張る連中ですね」

 魔族の国と戦争をして、それで勝てると思っているのが驚きだ。

「政府閣僚も、軍人も、上にいる連中は戦争なんて嫌ですからね。戦争を煽る貴族ってのは、それで上手く行けば自分も出世できる。駄目なら上の連中の責任にして逃げようと考えていますから。それで、上が処罰されて空いたら何食わぬ顔で戻ってきます」

 駄目元で景気のいい主戦論を煽り、失敗したら上の責任だと言って逃げる。
 酷い話だが、こんな中間層や非主流派は多い。
 上が可愛そうな気もするが、それに引きずられてしまえば責任のある地位にいるのだから、罰を受けても仕方がないのであろう。



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