様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「ただいま」

「お館様、あの娘っ子の情報をもらってきました」

「ご苦労様です」

 結局、カチヤの乱入で振り出しに戻ってしまった。
 このままオイレンベルク卿が当主権限でカチヤを黙らせればいいと思うのだが、それをするとあの暴走小娘の事なので独自に婿探しを始める可能性がある。
 こういう混乱に付け入って利益を得ようと考える貴族は多いから、小娘一人でも注意が必要だとブライヒレーダー辺境伯が言う。
 最悪、カチヤと彼女と組んだ貴族による当主押し込めが発生しかねない。
 ファイトさんも気が強い妹には弱い部分があるようだ。
 押し切られてしまう可能性もあった。

『カチヤを納得させないと』

 と言って、ファイトさんはオイレンベルク卿と共に説得を続けている。
 その間にブライヒレーダー辺境伯はブランタークさんにカチヤの情報を収集するように命じた。
 俺がブランタークさんを『瞬間移動』で王都にある冒険者ギルド本部へと送ったのだ。

『ちょいとグレーゾーンだから、ファブレ上級伯爵様は目を瞑ってくれるとありがたいな』

 トラブルを避けるために冒険者ギルドは冒険者の個人情報の流出を避ける傾向にある。
 特に稼ぐ冒険者ほどそれが顕著で、それはおかしなタカリや犯罪の被害に遭って稼げなくなるとギルドが大損失を受けるからだ。

『よう、オイラリー殿はいるか?』

 ブランタークさんは冒険者ギルド本部の裏口から入り、対応した若い女性事務員にある人物の名を告げ、出てきた初老の男性と内緒話をする。

『あまり詳しい情報は出せないぞ。ブランターク』

『それがな……』

『そんな事になっているのか。あの娘にそういう頭を使う仕事は無理だぞ。しょうがない……冒険者に戻るように動いてくれるのなら……あと……』

『安心しな、オイラリー殿。情報源は秘匿するから』

『懲罰会議はゴメンだからな。あとで一杯奢れよ』

『それは任せてくれ』

 オヤジ同士の話し合いの後にブランタークさんは一枚の書類をもらった。
 それを持って、俺達はオイレンベルク領に戻ったわけだ。

「それで、彼女はどうなのです?」

「まずいです」

 ブランタークさんが貰って来た資料をブライヒレーダー辺境伯に見せると途端に顔を渋くさせる。

「かなり稼いでいますね……」

「資金有りか……」

 カチヤが強気の理由がわかった。
 彼女は冒険者として稼いでいて、結構な自己資金があるのだ。

「王都の冒険者予備校を卒業して、十五歳から四年間で一千万長者を超えていますか……」

 なぜ、これほどの逸材がブライヒレーダー辺境伯の目に留まらなかったのかと言えば……。

「登録名がカチヤのみですか……」

 実家の情報を一切周囲に言わず、南部の田舎村の出だとしか言っていない点にあった。
 更に彼女は女性なので家臣にはできず、貴族も詳しくカチヤの事を調べようとは思わない。
 嫁に迎え入れるにしても、あの男勝りの口調と強さでは相手の方が嫌厭してしまう。
 貴族の娘だと公表していなかったから、『妾にしてやる』ではカチヤの方が砂を蹴って断るであろう。

「どうして貴族だって言わなかったの?」

「『冒険者に出自なんて関係ねぇ! 稼げれば偉いんだ!』が口癖なんだと」

「正論だけど面倒そうな人」

 ヴィルマの感想に対し俺達は全員で首を縦に振ったあと、続けて一斉にカタリーナに視線を向ける。

「なぜ私を見るのです?」

 俺たちに見られて、カタリーナは居心地が悪そうな表情を浮かべる。
 どうやら彼女は、最初にヴェル達と出会った時のトラブルを忘れてしまったようだ。

「初見が面倒な部分が一緒」

「さすがはヴィルマさん……容赦がありませんわね……」

 今日もヴィルマの毒舌が冴えわたっていた。
 カタリーナが顔を引き攣らせる。

「そういう性格だから、自分が優秀な婿を受け入れてトンネルの経営を行うつもりなのでしょうか?」

「一千万セント以上の資金があるのでしょう? なら、強気になりますよ」

 いつの世でも、どこの世でも、何よりも偉いのはスポンサー様である。
 ブライヒレーダー辺境伯も、それは誰よりも理解していた。

「自己資金から必要経費を捻り出すか」

「冒険者を続けて稼げば、追加の資金も出せるでしょうからね……ただ、それで上手くいったとしても……」

 紐付きでないか、紐が細い優秀な婿を入れたとしても、ここで兄と妹との対立が発生する可能性があった。
 カチヤが資金稼ぎのためにオイレンベルク領を留守にする時間が長ければ長いほど、その婿と集めてきた人材が、ファイトさんや前からの領民達と対立する可能性がある。

「オイレンベルク領の方々は農業が好きだから残っているのに、みなさん開発で農地を奪われますし」

 やりたくもない仕事をやらされた挙句に余所者達と次期領主の妹とその婿が上から命令をくだす。
 暴発は必至だとエリーゼは顔を強張らせる。
 オイレンベルク領は、昔のファブレ騎士爵領とは違うのだ。
 その気になればすぐに領地を出て他の仕事を選べるという点で、そんな彼らから農業を奪うのは大変に危険であった。

「カチヤって、そんなに稼いでいるのですか。凄いですね」

「情報によるとバウマイスター上級伯爵様達は例外としても、若手のホープという扱いか。『神速のカチヤ』と呼ばれているらしいな」

 スピード重視で、魔物をサーベルで切り裂く。
 魔法は不得意だが、魔力でスピードを上げるのが得意で、魔物の首筋などを狙って一気に切り裂くらしい。

「そんなわけで、素材の状態がいいでの評判だと書いてあるな。得意な魔物はワイバーン。待ち伏せして、一気に首筋を切り裂く」

 その方法は飛竜だと通用しないが、ワイバーンだとスピードを魔力で増したサーベル攻撃ならいけるかもしれない。
 それだけの自己資金を持つカチヤなので、サーベルもいい物を使っているであろうからだ。

「それにしてもカチヤさんはどうやって婿を探すのでしょうか?」

 カタリーナは、カチヤの直情的で場当たり的な行動に疑問だらけのようだ。

「冒険者としてのツテで?」

「冒険者として求められるものと領地開発とインフラ維持に求められるものは違いましてよ」

 確かに同じならば、とっくに婿を連れてきているはずだ。
 となるとカチヤは貴族側の人材を見繕わなければいけない。

「ローデリヒさんのような人を探す?」

「ルイーゼさん、ローデリヒさんのような人材はそう簡単に見つかりませんわよ」

「だよねぇ」

「何かツテがあるのでしょうか?」

 ブライヒレーダー辺境伯も首を傾げていたが、やはりカチヤは独断専行型で行動力が過多のようだ。
 俺達の度肝を抜く方法で、婿探しを宣言するのであった。



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