様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 翌朝、『瞬間移動』で現地に飛んで発掘を再開する。
 途中、疎らにワイバーンと飛竜も姿を見せるが、それらは全てイーナとキャロルによる槍の投擲、エルとリッドとミュウの斬撃、ルイーゼとファラの魔闘流、ミリィの短剣投げによってただの素材と化していた。

「導師もいればよかったのにね」

「あとは、ブランタークさんか」

「あの二人は、今は忙しいから」

 帝国内乱について、あちこちに赴き説明する仕事をしていた。
 説明というか講演のような仕事というのが正しいかもしれない。
 俺たちは在地領主で忙しいからと、そうでない二人が割を食った形だ。
 特にブランタークさんは、ブライヒレーダー辺境伯から頼まれてあちこちに出向いている。
 ブランタークさんの勇名が上がれば、彼を雇用しているブライヒレーダー辺境伯は安泰というわけだ。
 一時はブランタークさんの貴族への就任案も出ていたが、それは彼が断わっている。

『何が悲しくて、伯爵様たちのような苦労をしないといけないのかね』

 現在五十歳を超えている彼が貴族になっても自分が死ぬまでに領地が安定しない可能性が高い。

 子供の代で潰れる可能性もあるので、無理をしないというのが本音であろうか?

「いい加減、飽きましたわね」

 風魔法をドリルのような形にして山の斜面を削っていく。
 4人で作業をしてひたすら掘っていく。
 この手の作業が苦にならない俺はともかく、カタリーナは飽きがきたようだ。

「あ! 遂に出ましたね!」

 削れた部分に一部分だけトンネルの枠に似た物が出て光っている。
 遂に一万年も埋もれていた巨大トンネルが姿を現したのだ。

「しかし、こんな山の真ん中ではわからないだろう」

 『愚公、山を動かす』ではないが、小さいとはいえ一つ山を崩すつもりで作業しないと出て来ないのでは、今まで見つけられなくても当然か。

「入り口前の土砂を、全てどかそう」

「わかりましたわ」

「カタリーナが急にやる気を出したな」

「さすがに物が出てくれば中身は気になりますもの」

 確かにそれはあるかもしれない。
 4人による作業でトンネルを埋めていた土砂と木々などは全て魔法の袋に仕舞われてた。

「デタラメな量が入りますわね……」

 帝国の内乱で魔力量を増やすように訓練したおかげで魔力が増えていた。
 入口の土砂は、完全に除去された。
 あとは入るのみである。

「魔物とかはいないよな?」

「魔物はいないかもしれないが、トンネルだから警備ゴーレムのならいるかも知れない」

 全員で警戒しながら内部に入ると内部は暗くてよく見えない。
 すぐに『ライト』の魔法で明かりを確保する。
 エルが、念のために予備のランプに火を灯した。

「一万年前にしては綺麗だな」

 壁はコンクリート製のようだ。

「この壁・・・・すげえな」

 俺の言葉にヴェルたちも分析を掛けていた。
 通常のコンクリートに極少量のオリハルコンとミスリルの他に十数種類の希土類を混ぜて作る。
 そうする事で、このように一万年経っても壊れないトンネルが完成したようだ。
 他にも特殊な鋼製の鉄筋も入っているようだ。あの魔族が言っていた極限鋼というやつだな。
 なるほど、このトンネルは極限鋼製の鉄筋を入れた特殊コンクリート製なので恐ろしく頑丈であるという事らしい。
 俺は、ノートに分析結果を出す。
 あのゴーレムの胴体部分の分析結果と合わせれば何かしら判ると思う。

「これ・・・すぐに使えるのか?」

「『状態保存魔法』は生きているから使えると思うぞ。ただ」

 いくらすぐに使えるとはいえ、いきなりトンネルをオープンさせるわけにもいかない。
 王国への根回しにトンネルが暗いので明かりの確保、トンネル全ての安全チェック、警備体制と利用者への入領と出領をチェックする部署の立ち上げに人員の確保。

 そしてそれは、出口側の貴族にも準備して貰わないと駄目だ。
 いきなり『トンネルが開きましたので自由にどうぞ』では、密輸や犯罪者が横行する事になってしまう。
 前世で度々批判されていた役人と行政の仕事であったが、かくも多くの手間と時間がかかるものなのである。

「まずは、進めるところまで進むか……」

「しかし広いトンネルだな」

 『ライト』を地面に照らすと日本で見慣れた白線が書かれていた。
 大型トラックでも余裕で通れる車幅が合計で十車線、他にも故障・事故車両用の避難車線まで確保されている。

「(日本の高速道路みたい……)」

「明かりもあるな」

 天井には、魔導灯が等間隔に埋め込まれていた。

「多分、奥に魔力を供給する魔晶石があるはずだ」

 他にも空気の入れ替えを行う通気口も一定間隔で設置されていた。
 これらを動かす魔晶石が、どこかに設置されているはずだ。

「ちょっと、ローデリヒに頼んでくる」

「ああ・・・俺たちは先に進むぞ。どうやら警護ゴーレムはいないみたいだしな」

 暫くトンネルを進むと端の避難用の車線に十数台の車やトラックが放置されているのを確認する。
 正確には、魔力で動く魔導四輪か。
 様子を探るとドアは開けたままで運転席にはキーが刺さったままであった。
 さすがに一万年も吹きさらしでは、魔導四輪も無事ではなかったであろう。
 避難車線に置かれている魔導四輪は錆びていた。

「全員で等分でいいか」

「使えますの?」

 俺は魔導四輪を分析や鑑定をかける。

「無理だな。魔導ギルドや魔道具ギルドに買い取ってもらうのが一番だな」

 俺は、魔法の袋に魔導四輪を入れた。

「長いね」

 ライトのみを頼りにトンネルの奥へと向かう。

「なあ、これどれくらい続くんだ」

「俺に聞くな」

 半日進んで50kmぐらい進んだことになる。
 何という長いトンネルだと思うが、大リーグ山脈は山道を歩けば片道一か月半もかかるのだ。
 当然といえば当然か。

 それから5日目。
 次第に避難車線のみならず他の車線にも放棄車両がある。
 約四百八十キロを進んだ事になる。

「見えたな」

 ようやく、『関係者以外立ち入り禁止』と書かれたドアがトンネルの端に見付かった。

「開けますわよ」

『開錠』魔法でカタリーナが扉を開けると内部には大きな魔晶石と、いくつかの周辺機器が見付かる。

「故障はないみたいだな。魔力を補充すれば……」

 魔力が空の魔晶石に汎用の魔力を注ぐと、すぐに赤い輝きを取り戻す。
 部屋を出るとトンネル内の魔導灯と空調装置が復活していた。

「なるほど、これでトンネルが明るくなったな」

 その日はそのまま野営となった。
 目標は、反対側の出口だ。

「とりあえず、エルよ」

「何だよ」

「軽く見積もって後、最低5日ほどかかるな」

「でも、本当に長いトンネルね」

「ブライヒレーダー辺境伯領に出るのよね?」

「地図によるとそうだな」

 俺は、軍用の地図で確認する。
 少し東部の小領主連合側寄りではあるが、計算によるとブライヒレーダー辺境伯領内の山麓に出るはずだ。

「ここか?」

「では、ここで暫く待機だな」

 いきなり反対側の土砂をどけてしまうと色々と面倒な問題が起こるかもしれない。
 そこで、ヴェル率いる警備部隊が調査、魔導車両の回収を終えるまではここで待機となる。
 あとは、セイとカタリーナと共に行う作業もあった。

「念のために安全確認は必要だな」

 というわけで、三人だけで今度はトンネルを戻っていく。
 途中、『探知』『感知』『探査』などの魔法をかけて、トンネルに破損部分や内部の罅などがないか確認を始めたのだ。

「さすがはイシュルバーグ伯爵だな」

「ルーク、カタリーナ、セイ」

 チェックをしながら6時間ほど進んでいたら、そこには数百名の警備兵を連れたヴェルたちが姿を見せる。

「なるほど、これは凄い古代の遺跡ですね」

 兵士達を動かして、早速車両の回収作業を行っていた。

「それにしても、これだけのトンネルですか。守備が大変そうだなぁ」

「まだ出口側の土砂排除を行っていないし、それをしたらしたでトンネル所有の割合とか、警備・管理責任分担とかあるけど、今は出来る限りの事してくれ」

「ああ、所有の分担があるのですよね。ですが、ブライヒレーダー辺境伯様なら交渉が楽な方では?」

 トンネルは、リーグ大山脈を貫いている。
 では、その大リーグ山脈の所有者はというと、これは一応決まっていた。
 山頂より未開地側がバウマイスター伯爵領やファブレ伯爵領で、あとはブライヒレーダー辺境伯領や小領主連合の誰かの領地だったりする。

 ただ、リーグ大山脈自体が登頂困難な山道であり、加えて飛竜とワイバーンの住処となっていて、他にも凶暴な野生動物も多い。
 実効支配しているのかと言われれば、答えはノーであった。

「ブライヒレーダー辺境伯様と半分ずつですか?」

「俺達が発見者だ。最低でも、動力室部分まではいただく」

「俺は、トンネルの利権なんて要らんぞ。とりあえず漆黒の翼とドラゴンバスターズの分け前は半分でいいな」

「それで手打ちだな」

「王国の依頼だが、魔導四輪は魔道具ギルドや魔導ギルドに売ればいいだろう」

「それが無難か」

「ならば、急ぎ実効支配してしまいましょう」

 避難車線に止まった車両の回収とトンネルのチェックを手伝いつつ、警備兵達を配置してトンネルを実効支配していく。

「いよいよ、出口側を掘削するか」

 ヴェル達が来てから3日後、トンネルは全て安全だと判断された。
 入り口と各所に警備兵が配置され、彼らは定期巡回を行う。
 魔晶石が置かれた動力室にも警備の手が入り、俺達はいよいよ出口側の土砂の掘削を始めた。

「掘っても、掘っても土砂が流れ込んでくるな……」

 一万年で、出口側も土砂が大量に降り積もって山になっているのかもしれない。
 大量に出る土砂を魔法の袋に入れていく。

「土砂は埋め立てに使いましょう」

「埋め立てはいいがローデリヒ、冒険者の上納金はいくらなんだ」

「そうですな。ブライヒレーダー辺境伯領と同じ上納金のほうが混乱が少なくてすみますな」

「我々が生き埋めにならないように注意しつつ、掘り続けるしかない」

 出口側の土砂を取ると、また土砂が落ちてきて元の状態に戻ってしまう。
 これを暫く繰り返していたが、ようやく出口から日の光が見え始めていた。

「光だ!」

 トンネルが開通し、全員が漏れる光に感動する。

「道を確保するんだ」

 更に大量の土砂を避けると、やはり出口側も溜まった土砂が山になっていたようだ。
 それらを全てどかすと、ようやくトンネルは再開通した。

「開通したけど……」

「のどかだねぇ……」

 一番乗り狙いでトンネルを出たルイーゼは、目の前に広がる光景に驚きを隠せない。
 山奥の田舎の農村地帯で、数名の農夫が畑を耕していたからだ。

「あんれまぁ、遂に山が消えて洞窟があるだ」

「お館様にお知らせしねぇと」

「あの人達は、地底人だべか?」

 彼らは突然開通したトンネルに驚き、一人の農夫が領主を呼びに猛スピードで走っていく。

「あれ? ここはブライヒレーダー辺境伯領じゃないのかな?」

「お館様、代官地なのでは?」

 俺達は、出口側の田舎ぶりに驚きを隠せない。
 何となく嫌な予感がしてくるが、予想どおりにまた貴族の厄介ごとに巻き込まれて行く事になる。



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