様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「様子見で攻め込んだら負けちゃった」

「いや、負けちゃったじゃないと思うが……」

 夕べ、妙にうるさいと思ったらペーターが一部軍勢を使って、夜襲をかけたようだ。

「想定内であろう」

「うぅ、テレーゼ殿がいると妙にやりにくい」

「というわけじゃ、ヴェンデリン。ここでニュルンベルクをうち、戦後その功績を用いてペーター殿に対抗しようと目論む野心はあるが、何の策もなく突っ込むようなバカどもを戦に乗じて始末しただけ。おぬしが気にすることでもあるまい」

「おっかない話だな」

 翌朝、両軍はゆっくりとクライム山脈に向かって包囲陣に加わろうとしたのだが、急用だとペーターから伝令が来て、急ぎ現地へ向かう羽目になっていた。
 ペーターがいる帝国軍本陣横に着陣してから挨拶に向かうと新しい帝国軍首脳部は大慌てで全軍に指示を出していた。
 ギルベルトさん達も忙しいようで、俺達に軽く挨拶をしてから作業に没頭したままだ。

「あれ? 男爵様は?」

「負傷者が多いので、治癒魔法で救援に向かった」

 スラムの主であった男爵様は、ペーターから本当に男爵に任じられていた。
 今は法衣扱いで、スラムの住民有志を諸侯軍として率いている状態であったが、内乱が終われば、どこかの領地として与えられる事になっている。

 結局彼は、自分がどこの貴族家の出かを話さなかった。
 相当に嫌な思い出があるのと、どうやらその実家はニュルンベルクへの過度の服従でペーターから改易されてしまったらしい。
 改易された途端に男爵様に家族がタカろうとしたらしく、彼は家族を元家族に認定して記憶から消去する事にしたようだ。
 本人が嫌がって話さないので、その辺の事情を知るのは本人とペーター達だけなのであろう。

「ヴェンデリン様、私も治療に向かいます」

「そうだな。頼む……。俺も行くか」

「ルーク」

「そうだな」

「私も行く」

「私も軽傷者くらいならば」

「某も行くのである」

「私もいこう」

 8人で急ぎ負傷者の治療に当たることにした。
 負傷者の人数は多かったが、既に半分以上の治療を終えていたので俺達が助けに入ると一時間もしないで全負傷兵の治療は終わっていた。

 治療を終えて戻るとペーターが昨夜の軍事行動について説明してくれる。

「謎の地下遺跡を利用した地下要塞だからね。様子見で攻撃させたんだけど……」

 その地下要塞には、強固な牙が大量に設置されていた。
 例のドラゴンゴーレムが装備していた無属性のブレス魔法を吐く装置の小型版が各所に設置されていて、ギリギリまで引き寄せられた諸侯軍はモロに反撃を食らってしまったらしい。

「そういう武器があるのではないかと予想していたから、魔法使い部隊とミズホ上級伯爵に頼んで魔砲による打ち合いで壊せればと思ったんだけど・・・・」

 謎のバリアーで防がれてしまったそうだ。

「死者は三千二百七十四名。負傷者は四千百十一名。泣けてくる損害さ」

「俺からは何とも」

 この地下要塞を落とせば内乱終結なので、これ以上は俺達に功績を挙げさせず帝国軍だけで対応するのは政治的には間違っていない。
 それに俺達が攻め寄せたからといって勝てる保証も無いのだから。

「この地下遺跡は思ったよりも厄介なようだね」

「地元住民からの情報によると元は古代魔法文明時代の巨大地下遺跡だったそうで」

 ペーターの傍に控えているエメラが、俺達に聞かせるように地下要塞の情報を開示していた。

「また古代魔法文明の遺産かよ」

 ブランタークさんが愚痴る。
 今までにニュルンベルクが発掘した魔道具によって散々な目に遭って来たからであろう。

「魔法使い複数による火力集中で穴を空けて突入。この方法では駄目なのであるか?」

 導師の作戦は、一見大雑把に聞こえるが実は最も効率がいい。
 全軍で囲んで徐々に包囲を狭める作戦など、下手をすると余計に損害が増える可能性があるからだ。

「それがね。試したんだけど……」

 ペーターはエメラに視線を送る。
 現在の帝国では、彼女が一番多くの魔力を保有している魔法使いのはずだ。ペーターが緊急事態ということで女は女同士、男は男同士で器合わせを行ったそうだ。ただし、12歳〜8歳ぐらいの未成年の中級魔法使いが多数いる、その数なんと100名である。
 その彼女と残っている帝国有数の上級魔法使い達が共同して、大規模魔法を地下遺跡に向けて発射したのだそうだ。

「それで、どうなったんです?」

「防がれちゃった」

「そんなバカな……」

 いくら内乱で魔法使いの数が減っているとはいえ、複数で攻撃して全くダメージを与えられないはずがない。
 ブランタークさんは、地下遺跡を守る『魔法障壁』のおかしさについて疑問を感じていた。

「試してみてよ。特にヴェンデリンに頼みたい」

「伯爵様、試そう。俺とルークと導師とカタリーナとセイの嬢ちゃんも協力する」

「わかりました」

 早速6人で地下遺跡のあるクライム山脈に向かう。
 どうやら相当な大軍で攻め寄せたようで、まだ回収されていない死体が散乱している。
 負傷者の収容を優先したのであろう。

「向こうは撃ってきませんわね」

「こちらも防げるから撃つだけ無駄だと思っているのかも」

 6人だけで麓に立っているのに、地下要塞側からは何の反応もなかった。
 こちらがしようとしている事を掴んで、『やれるものならやってみろ』とほくそ笑んでいるのかもしれない。

「6人でやっていきなり破れたらどうするんだろう?」

「それはペーター殿が考える仕事だな」

「左様、ただ6人で魔法を集中させればいいのである」

「私、火系統の魔法は少し苦手なのですが……」

 それでも6人共上級以上の魔力を持つ魔法使いだ。
 高密度に収束させた『火弾』を作り、それを6連続で同じ場所に命中させる。

「いくら展開されている『魔法障壁』が強固でも、同じ場所に6連続で『高収束火弾』を食らえば……」

 と思ったのだが、『高収束火弾』は山脈の岩肌に命中する直前で突如発生した『魔法障壁』によって弾かれてしまう。

「ヴェンデリンさん、物凄く強固な『魔法障壁』ですわね」

「撤収だな」

「そうですわね」

 これ以上無理をして魔法を放っても魔力の無駄遣いであろう。
 俺達は、とっととペーターがいる本陣へと引き揚げた。

「あれ? 諦め早くない?」

「全然、あの『魔法障壁』を普通の魔法で破るのは無理」

「ヴェンデリンでも駄目かぁ……」

 ヴェルはきっぱりと断言する。
 あそこまで強固な『魔法障壁』を張るには、何か特別な方法を使うしかない。
 ならばそれを破るには、何か特別な方法を用いるしかないのだ。

「大量の魔法使いを動員しただけじゃないの?」

「いや、それだと効率が悪い」

 いつ攻撃されてもいいように二十四時間常に監視を行う必要があるからだ。

「ああ、そうか。監視だけじゃなくて常に魔法発動の準備をしないとね。物凄く非効率だ」

「それに現在のニュルンベルクに上級魔法使いは、帝都襲撃時に討ち取られているから皆無のはずだ」

「そうでした」

「だから、何かしらの手を使っているはずなんだ」

 『移動』のキャンセルと『通信』の遮断する装置にアルフレッドの木偶を発生させる装置と師匠の剣もあった。
 これは地下遺跡から発掘された古代魔法文明時代の遺産だと聞いたので、これと同じような発掘品の数々を利用して地下要塞を守っているのであろう。

「古代魔法文明時代の遺産か。俺達はよく関わるよなぁ」

 俺達の冒険者デビューに付き合ってドラゴンゴーレム二体と戦闘を行い、ヘルタニア渓谷でもゴーレム軍団と戦って、この内乱でも自爆型ゴーレムを戦っている。

 魔道具職人でもないブランタークさんからすれば、昔の魔道具には関わりたくないのであろう。

「ヴェンデリンは、何か方法を思いついたのかな?」

「思いついたというか結局は強固な『魔法障壁』を打ち破るしかないわけで」

「それはそうなんだけど、その方法が問題なんだよ」

 魔力量がトップ3に入る俺、ヴェル、導師で魔法をぶっ放したのに『魔法障壁』はビクともしなかったのだ。
 何か特別な手を使わないとこれを討ち破るのは難しいであろう。

「手がない事もない」

「教えて。教えて」

 ヴェルは、そっとペーターに耳打ちをするのであった。



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