様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 結局、テレーゼとニュルンベルク公爵による初の決戦は、完全な決着がつかずに終了した。

「ちっ。ニュルンベルク公爵の子飼いの連中に犠牲が少ない。これでは勝ちとはいえない」

 ニュルンベルク公爵率いる精鋭が撤退する時に残された損害担当の軍勢は、テレーゼの命令で多くが死傷し、捕虜となっていた。
 損害比で言えば解放軍の完全勝利であろうが、ニュルンベルク公爵の頼れる軍勢に致命的なダメージを与えたとは言い難い。
 果たして、これが勝ちと言えるのかは疑問なところであろう。

「降伏した連中が多くて、管理が面倒そうだな」

「テレーゼ様が管理に頭を抱えていた」

「まさか全員処刑するわけにいかない。人間飯を食わないと死ぬし、その食糧確保でテレーゼ様は苦労するわけだ」

 彼らは使い捨て要員にされ、ニュルンベルク公爵が軍を引いたら簡単に降伏してしまったのだ。ニュルンベルク公爵に怒っている貴族は多かったが、だからといって彼らをそのまま味方扱いするのは難しい。
 領地や家族すら人質に取られているので、いざ戦闘になると再び裏切る可能性があるからだ。

「捕虜すら罠なのか」

「あの一瞬でそこまで判断するとはな。ニュルンベルク公爵は優れた軍人のようだ」

 ただし、人間としては感心できないがねとフィリップは自嘲気味に述べた。

「これからどうするのかな?またにらみ合いとか?」

「いや、前に出ざる得ない」

「危険じゃないか」

「危険かもしれないが、このままニュルンベルク公爵がのさぼっていると帝国は痩せ細るばかりだ。彼を倒して政権の正当性を主張をするため、テレーゼ様は前に出ないといけない」

「なるほど。政治的な判断にも理解あるのにどうして先日の紛争は大きくしくじったんだ?」

「それを言うな。外野から意見を言うのと当事者が正しい判断を下せるかは別だ」

 ヴェルからの指摘に、フィリップはその表情をさらに渋くさせる。
 俺は、再び師匠を弔うことにした。
 黙祷を捧げると

「ルーク。そろそろ食事の時間だよ……」

「ああ」

 ハクカが呼びに来たので、俺達は、昼食を取るために自分の家へと向かう。



「ヴェンデリンよ。そなたは最近冷たいぞ」

「そうですか?」

 家に戻った俺達は、揃って昼食を食べていた。
 メニューは、前にミズホ伯国で購入したウドンを茹でて釜揚げ風にして、おかずに天ぷら、他にもおにぎりも付いている。
 具は梅干しで、これは戦場なのでお腹を壊さないための処置だ。
 みんなで大量に茹でたウドンを食べていると、なぜかテレーゼが姿を見せて自分もウドンをフォークで掬って食べていた。

「妾が諦めない性質で、放置されても人様よりも心が少しだけ強いから問題になってはおらぬが」

 いや、テレーゼの心は少し強いどころじゃない。
 オリハルコンのように固く、神経はワイヤーロープのように頑丈であろう。

「やはり、年上なのが良くないのか?」

「そういう事ではなくてですね……」

 立場が問題だと何度も言っているのに、いい加減徒労感も出てくるというものだ。

「よし。今日から妾は十五歳だという事にしよう。『テレーゼ永遠の十五歳作戦』じゃ」

「(何だよ。その芸能人の年齢サバ読みみたいな作戦……)エリーゼ。もっとウドンが欲しい」

「すぐに追加で茹でますね」

 あまりにバカバカしいので、ヴェルは無視してエリーゼにウドンのお替りを頼んでいた。
 勿論、エリーゼも聞いていないフリで逃げるように台所へと向かう。
 彼女もコメントに困ったのは確実だ。

「十五歳はないわぁ……」

「ボクなんて、逆に『ルイーゼ永遠の二十歳作戦』とかにして欲しい」

「返答に困る」

「私、実年齢よりも少し上に見られるのですが、テレーゼ様よりも年上には見られませんわよ」

 他の女性陣達からも、散々に言われてしまう。
 ブランタークさんも顔の表情が固まったまま無言で、導師は我関せずと大量のウドンを豪快に啜っていた。

「これ。そこで真面目に反応するでない! 冗談くらい解せる余裕を持て!」

「いや、冗談なのか本気なのか判断に迷いまして」

「冗談に決まっておろうが!」

 それから十数分後、昼食も終わったので全員でお茶を飲んでいると、ようやくテレーゼが作戦の話を始めていた。
 そういえば、攻勢に出ると言っていたのをようやく全員が思い出したからだ。

「アルハンスを落とす」

「重要拠点ではないですか」

「重要拠点じゃから落とすのじゃ」

 フィリップの予想通り、一応の軍事的勝利を得たテレーゼは軍を出す決意を出した。
 このままにらみ合っていても帝国が疲弊するばかりであり、特に帝都をこれ以上、ニュルンベルク公爵の手の内に置くのは危険だと判断したようだ。
 一応俺も帝国の地図くらいは確認していたので知っている。
 このソビット大荒地と帝都との中間地点くらいにある帝国軍の重要軍事拠点だ。
 巨大な城塞と軍事基地に人口が三十万人を超える都市も隣接している。
 公式ではないが帝国人は副都扱いしている重要都市で、ここを取れば帝都を窺えるかもしれない。

「戦力が足りないのでは?」

「その戦力を増やすためでもある」

 前の無理な攻勢で犠牲も出ているので、兵力差を考えても勝ち目があるとは思えない。
 俺の心配を、テレーゼは例の捕虜達で補うのだと語っていた。

「アルハンス以北の貴族達の離反を誘うのですか?」

「ニュルンベルク公爵のやり方に反感を覚えているからの。彼らの領地が解放軍の勢力圏に入れば、裏切りを心配する必要が無くなる。後方から、また新規で援軍も来ておるからの。数の不利も縮小したはずじゃ」

「それはそうでしょうが……」 

「ニュルンベルク公爵は大量の食料や物資を失った。暫くは、全軍で攻勢というわけにはいかぬ」

 ヴェルが先の戦いで、反乱軍の大規模補給所を焼き払ったせいらしい。

「再び、十万人以上の軍勢が長期間動けるほどの物資を集めるのには時間がかかる。補給切れを考慮して、帝都付近に下がっているはずじゃ」

「魔法の袋で補給を行えば大丈夫では?」

「その魔法の袋を焼き払ってしまったのは、ヴェンデリンではないか」

 軍は消費する物資の量が多いので、魔法の袋と通常の荷駄を並行して利用する。
 片方だけに依存しないのは、単純に安全保障のためである。
 あの集積所には、通常の方法で輸送された物資と汎用の魔法の袋も置かれていた。
 それらは全て、ヴェルの魔法によって焼き払われてしまったのだと。

「かなり後方にあった集積所を焼き払う魔法を使えるヴェンデリンの力に、ニュルンベルク公爵も肝を冷やしておろう」

「そうですか?」

「とにかく、先遣隊と共に出陣をして欲しい」

「わかりました」

 テレーゼの命令を受け、俺達は六万人規模の軍勢で南下を開始する。
 ただし、俺達王国軍組千五百名は遊軍扱いで別行動だ。



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