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 大まかな作戦が決まった所で反乱軍が大きく動いていた。
 前衛部隊、大よそ4万人が一斉に野戦陣地に向けて突撃を開始したのだ。

「ヴィルマ」

 コクン

 俺は、ヴィルマに指示を出して、上級の魔法使いからやることにした。
 ヴィルマが矢を番える、俺は矢に『ブースト』をかける。

「あいつだな」

『遠見鏡』で目標を捕らえ、指示を出すのであった。
 『ブースト』したヴィルマの矢を上級魔法使い達は防ぐこと叶わず、5名ほど魔法使いは頭部がはじけ飛びお亡くなりになったのだ。巻き添えで50人ほどの兵士もお亡くなりになったのだ。俺は、『魔晶石』で魔力を回復しつつ、その間にヴィルマが次の矢を構える。俺が『ブースト』してヴィルマが放ち、さらに上級魔法使い達がお亡くなりになったのだ。飛翔が封じられ、超音速で飛んでくる矢を対処できるはずがないのだ。導師クラスの身体能力と身体強化魔法が使えるなら対処できるのだが、そんな特殊な魔法使いは超少数派である。

「反乱軍前衛は推定で四万人。こちらの迎撃能力を飽和させるつもりだな」

 中央の本陣を正面門の上に移し、テレーゼは優雅に迫りくる反乱軍前衛部隊の突撃を眺めている。
 当然、矢や魔法が飛んでくるが、セイとカタリーナが待機して『魔法障壁』で防いでいる。
 魔法は、初級レベルの魔法使いが放った物ばかりなので軽く二人に防がれていた。
 テレーゼが指揮する中央軍にはミズホ伯国軍もいるので、彼らは早速、魔道具仕様の『バリスタ』や『魔大砲』をぶっ放している。
『魔大砲』とは、魔力で砲弾を飛ばす大砲のことだ。実は、王国、帝国双方共に研究はされている兵器であった。
 砲弾は、布袋に石や釘などを詰めて榴弾のような使い方をしている。
 『魔大砲』の最大の問題は、魔力を大量に消費するので1回放つと『魔晶石』の交換が必要なのである。要するにコストが跳ね上がるので、まだまだ問題のある兵器である。このような民族虐殺の危機でもない限り実践導入は見送られる代物である。ぶっちゃけた話、上級魔法使いを雇った方がコストが安いのである。
 さらに堀や柵で足を止められた所で、矢や砲弾が飛んでくるのだ。
 敵兵士達は倒れ、負傷者は後方に死者はそのまま放置される。
 一番前にいた小部隊がほぼ壊滅するが、すぐに次が投入された。
 犠牲は多いが、次々と堀に板がかけられて、柵は馬によって引き倒される。
 反乱軍前衛部隊は多くの犠牲を出しつつも、次第に石壁へと迫っていた。

「石壁に取り付くまでに、どれだけ殺せるかだな」

 王国軍組を預かるフィリップは、俺とエルとリッドとヴェルに簡単に解説をしながら王国軍組にも弓を使うようにと命令していた。

「兵士の無駄遣いのような……」

「別にそうでもないさ」

 フィリップは、ニュルンベルク公爵の戦法に全く疑問を感じていないようだ。

「先に精鋭を出そうが、捨て駒を出そうが、この野戦陣地を落とさないと反乱軍は北に攻め上がれない。なら、捨て駒でこちらを先に消耗させるのが普通だろう?」

 戦力を数値でしか見ていないドライな感覚。
 指揮官には必要なのであろうが、俺にはそこまで割り切れない。
 つまり、俺は軍人に向いていないというわけだ。

「無理に正面から攻めなくても、例えば迂回して奇襲するとか……」

「バウマイスター伯爵。簡単に言ってくれるが、奇襲などそう簡単には出来ないのだぞ」

「そうなの?」

「この野戦陣地よりも北の諸侯は、大半が解放軍に属している。迂回しても、すぐに通報されて逆撃を食らうであろうな。ついでに言うとフィリップ公爵とミズホ上級伯爵の索敵網に簡単に捕まる」

「では、あんたはなぜ負けた?」

「ニュルンベルクが優秀で地の利があったのとレーガー侯爵が恐ろしいまでに軍人として無能だったからだ。本隊が奇襲で溶けた以上は、犠牲を少なくするために残った兵を纏めて逃げるしかあるまい」

 そんな状況で、フィリップは北上までしてここに逃げ込んできた。
 今も指揮振りは大した物であったし、エドガー軍務卿の人物評価は間違っていなかったというわけだ。

「その軍人としての能力を先の紛争で使えたら良かったのに」

「全くだ」

「兄さん。それが最初から出来ていたら紛争に負けていませんし、その前に紛争自体が起こっていません」

 王国軍組の後方を支えるクリストフが、ボソっと漏らす。
 この二人は、抱えている外戚や家臣に押し潰されて道を誤ってしまったのであろう。
 もし相続問題で揉めていなければ、最初からあの出兵など無かった。
 カルラを俺たちに押し付ける算段でもしていた方が、よほど建設的でコストもかからないのだから。

「これで勝てれば爵位くらいは分割して貰えるかもしれません。精々殺しましょう。矢の在庫については暫くは大丈夫です」

 クリストフの言い方は感情ではどうかと思うが、言っている事に間違いは無い。
 俺達は、ただ反乱軍の将兵を殺すしかないのだ。

「バウマイスター伯爵は魔力を温存でいいぞ」

 三時間ほどもすると石壁に敵部隊が取り付きつつあった。
 捨て駒部隊にしては奮戦していると感じていたが、その理由は簡単である。
 後ろに督戦部隊がいて、大量の矢をいつでも放てるようにしていたからだ。
 ついでにニュルンベルクは高位の魔法使いを自分の直衛部隊に集めてもいたのだが、ヴィルマの狙撃で全滅したのだ。
 あとは、家族なりが人質にでもなっているのであろう。

「高位の魔法使いが死んでも捨て駒部隊が攻撃をやめない所を見ると家族を人質にしたか」

「外道の極みであるな!」

「まあ有効な手ではあるな」

 ニュルンベルクとしては、前衛部隊が全滅しても予備兵力が少ない解放軍に損害を与えられれば勝ちである。
 ついでに彼らが消えれば、その領地や爵位を自由にできる。
 自分の子飼いに与えれば、ニュルンベルクの支配権が増大するのだから。
 それがわかっている導師とブランタークさんは、いつも通りの口調では会話をしているが内心では面白くないと思っているようだ。
 ブランタークさんの相槌と共に導師が巨大な岩を督戦部隊に向けて放り投げていた。
 直撃した弓兵達が、まるで虫のように潰されて死んでいく。
 まさかその距離で届くと思っていなかった指揮官が後退しようとするが、次に導師が投げた岩で潰されていた。

「腹立たしいが、全ての督戦隊を始末できないのでな」

 投石で潰した督戦隊は一つだけであったが、反乱軍の肝を冷やさせる事には成功したようだ。
 最前線の部隊も攻撃の勢いが落ちていた。

「あのブランタークさん」

「伯爵様は、まだ魔力を温存だ」

 本陣では、テレーゼが優雅に椅子に座って戦いを督戦して味方の士気を上げている。
 飛んで来る魔法や矢は、全てセイとカタリーナが『魔法障壁』で防いでいた。
 二人はこの仕事に集中して必ずテレーゼを守る作戦になっており、その代わりにフィリップ公爵家お抱えの魔法使い達は各部隊に配置されて攻撃と防御を魔法で強化していた。

「エリーゼは大丈夫かな?」

「怪我人は、まだそれほど出てないそうだ」

「なら平気だろう」

 攻撃手段に乏しいエリーゼとハクカは、今回も後方で兵士達の治療に当たっている。
 イーナとキャロルは投擲用の槍を投げ続けているし、ルイーゼとミリィもその辺で大量に集めてきた石や岩をひも状の投石器で投げている。

 戦争において石は意外と有効な兵器だ。
 少しの魔力で威力を強化して、器用に兵士の顔面に当てている。
 顔に直撃すると額を割られて後方に搬送されたり、最悪死ぬ兵士もいた。

「なかなか攻勢が弱まらないわね」

「本当にしつこいな」

「パーとしたいよ」

「ホントよ」

 同じ作業の連続で、4人は気疲れをしているようだ。

「見付けた」

 高位の魔法使いがお亡くなりになったので、現在、ヴィルマは俺の『ブースト』を受けて中級の魔法使いと指揮官を次々と狙撃を行っていた。

「ヴェンデリンさんは温存ですか」

「あいつが出てくると困るからな」

「あの男ですか・・・確かターラント・・・・」

 もう顔を思い出せないが、ニュルンベルク公爵が大切にそばにおいていた魔法使いである。
 ニュルンベルク公爵は、俺やヴェルや導師ですら倒せる秘密兵器だといっていたので、その投入タイミングが気になるところでもある。
 暫く城壁を登ろうとする反乱軍と、それを阻止する解放軍の間で死闘が続く。
 損害比は守備側である解放軍が圧倒的に有利であったが、次第に槍で突かれ、矢や魔法を受けで犠牲者が増えていく。

「前に出るわ!」

「そうね」

 イーナとキャロルが前に出て、城壁を登ってくる兵士達を次々と槍で突き落としていた。
 そんな状態が暫く続いた後に反乱軍の方で何か騒ぎが起こる。
 遂にあの男が、まるで幽霊のように歩きながら俺たちとの距離を縮め始めたのだ。
 この戦場で、ターラントは敵も味方も気にしていない。
 ただゆっくりと俺達がいる正面門へと歩いていく。
 彼には不気味な点がもう一つあった。
 味方の守備兵が、なぜか接近する彼に向けて矢や魔法を放たないのだ。

「(ターラントを認識している人が少ない?)」

「ヴェル!あいつ変」

「気配が薄い・・・レイスでもないのに・・・」

 ルイーゼも大岩を放り投げるが、それらは全て彼の『魔法障壁』で簡単に防がれてしまう。
 彼は優秀な魔法使いであった。

「さて・・・どうするか?」

「ルーク様」

 ヴィルマの一言で、決断した。

「ああ・・・ヴェル、危なかったら介入する。それでいいな」

「ああ」

 ターラントを攻撃するより、中級魔法使いや指揮官達を狙撃した方が解放軍の全体的な被害が少ないのだ。
 それにターラントの担当は、ヴェルと導師とブランタークさんである。

「あのターラント殿……」

「私に気にかけるな。攻撃を続行だ」

「はい」

 味方ですらターラントから離れ、遂に正面門前に立って静かに声をあげていた。

「バウマイスター伯爵。あなたを殺してあげよう」

 小さな呟くような声なのに様々な音で溢れる戦場でも俺の耳にハッキリと届いていた。
 ただ淡々と話すだけなので、俺は不気味さを感じてしまう。

「本当に不気味である」

 あの導師ですらターラントに何か言いようのない不気味さを感じているようだ。



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