様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 翌日。
 反乱軍から追加の兵力が送り出されていた。
 その数、10万人ほどである。

「昨日3万人近く討伐したんだけどな」

 尚、俺達が7000、ヴェルたちが2500、導師が500ほどである。ブランタークさんとセイとカタリーナは、守備のため攻撃に参加しなかったのである。攻撃に参加していないのは、ミュウとファラである。この二人は、回復役でもあった。攻撃に参加するより戦死者を減らす方向で動いた方がいいのである。尚、戦死者の大半がミズホによる攻撃である。

「秘奥義を出すしかないか?」

「このままじゃ、ジリ貧だからよ。伯爵様よ、やれ」

 俺は、世界に漂うマナを体内に吸収して貯める。
 そして、魔力剣に魔力を伝達させる。

「ビックバンソード」

 魔力剣を振り下ろすと魔力剣から風属性の『ウィンドカッター』が広範囲に放出された。

「ギャア〜〜〜〜〜〜」

「何だ、今の」

 包囲網が災いし、包囲していた敵兵の大半は上半身が消失していた。

「今の何だよ」

「ハァハァハァ・・・・身体が疲れる」

「結構な威力だな」

 残り2000名ほどである。

「上級の魔法使いは2名と中級魔法使いが3名ほど残っているな」

 ただ彼らも俺の攻撃を魔法障壁で防いだようで魔力が大幅に減っている。
 だが大量の魔晶石で魔力を補充しているようだ。

「どうします?」

「脱出のチャンスではあるが・・・・上級の魔法使い2名の決死の猛攻だと犠牲者が増えるよな」

「そもそも撤退命令が出されてないな」

 それから三日間は防衛戦闘に従事し続けたので詳しい描写は割愛しようと思う。
 弓、秘奥義、魔法によって次々となぎ倒されるも、なぜか攻勢を止めない反乱軍の兵士達。
 既に損害は約40万人にも達しているはずであったが、一向に攻勢を止めないのだ。

「頭がおかしいのと違うか?」

「もう少しで落とせると思っているのでは」

 その日の夕方、全員で夕食を取っていると救護を担当しているエリーゼが自分の意見を述べる。

「それで大量の魔法使いや貴族の私兵の戦死者を出していたら意味がないと思うけどね」

 上級魔法使い、中級魔法使い、初級魔法使い8000人が前進しての魔法障壁だったのだが俺が範囲ではなく威力を優先した結果、魔法使いの障壁を難なく突破し死亡し、生き残った兵士達はミズホの『魔刀』の餌食となったのであった。8000名の内大半が初級・中級魔法使いであった。

「ミズホ伯国軍の戦死者は二十三名か」

 俺達の中には、当然、死者はいない。
 たまにリッドやキャロルやハルカが負傷していたが、軽傷なのですぐにハクカやミュウやファラが治してしまうからだ。

「向こうは50万人以上は失っているはずよね……」

 最初の反乱軍の総数は1万人という数値はあくまでも推定だ。その後に反乱軍が大量に増員されているようなのだ。
 そして、地形の関係で反乱軍は全軍でこのターベル山地砦を攻められない。
 最高でも三千人までしか一度に攻められないのだ。そのため正面にミズホとカタリーナとブランタークさんとルイーゼと導師を配置して、俺とヴェルとヴィルマとキャロルとセイとイーナはターベル山を包囲している反乱軍を砦から一方的に攻撃したのだ、それが余計に損害を増やしているのかもしれない。
 だが、いくら殺しても次々と新手を投入する反乱軍にミズホ伯国軍の中でも懸念の声が上がり始めていた。
 いくら殺して大戦果を挙げても最後には数に押し潰されるのではないかという不安が広がりつつあるのだ。



「戦いはまだ何とかなるけど、外の情報が入って来ない」

「ヴィルマさん。その情報の元が来ましたわよ」

 カタリーナの視線の先には、先ほどトヨツグさんのいる本陣に向かったタケオミさんの姿があった。
 彼は席に座ると、早速に報告を始める。

「バウマイスター伯爵様。ようやく本陣からツバメ便が来ました」

 孤立しているターベル山地砦に伝令など送っても無駄なので、通信用のミズホツバメが手紙を送ってきたらしい。

「それによりますと我々以外は惨敗したようです」

 わざと兵員と物資を引き揚げた手薄な拠点を簡単に落とせて油断したところに補給を絶って大軍で包囲する。
 食料が不足しているので籠城は不可能であり、脱出を図ったところを攻撃されて惨敗したと文に書いてあったそうだ。

「壊滅は、テレーゼ様が後詰を出したので防げたようです。反撃でかなりの損害を与えたとも」

「よそ様は良かったようだけど、うちはどうしようか?」

 俺達は敗北はしていないが、いまだに反乱軍の包囲下にある。
 食料の問題もあってそういつまでも籠城など出来ず、どうにか撤退する方法を模索しないといけない。

「幸いにして、援軍が向かっているそうです」

「では、挟み撃ちか?」

 援軍と俺達を攻撃している反乱軍が激突したら、こちらも打って出て敵を挟み撃ちにする。
 誰でも思いつきそうな策であったが、現実の戦争とはそういう物であった。
 そう簡単に、奇策など使えないのだから。

「ここを出る準備をしておくか……」

 夕食後にトヨツグさんと作戦会議を行い、いつ援軍の戦闘が始まってもいいように撤退の準備だけは進めておく事にする。
 砦は持って帰れないが、他の物はなるべく全て持って帰ろうとしたのだ。
 今の戦況で、このターベル山地砦を保持すること事が無謀であった。

「時間的に言うと今夜か明日の早朝だな」

 最悪な事に、味方は商業都市ハーバット攻略を目指した主力以下全てが敗北している。
 手をこまねていると勝利の余勢で更に大軍がこのターベル山地砦の包囲に参加する可能性が高い。

「私達。全滅の危機にあるの?」

「ある」

 イーナの言う通りで、俺達は全滅の危機にある。
 いくら俺達が奮戦しても徐々にトヨツグさん以下のミズホ伯国軍の損害は増えている
 食料だって、たまたま俺たちが大量に魔法の袋に入れてあったから今は飢えていないだけだ。

「援軍は、今夜に夜襲をかけてくる可能性があるな」

「夜襲が出来るほど練度が高いの? フィリップ公爵家の軍勢は」

「最低限の訓練はしているはず」

 大敗北はしたが、あのブロワ辺境伯家諸侯軍でも夜襲は行えていた。
 ターベル山地砦に目が向いている反乱軍の後方から襲い掛かるくらいは可能なはずだ。

「主力を救うのに傾注しているはずだから、私達への援軍はそれほど多く無いと思う。ヴェルの考えが正しいかも……」

「俺も出まかせ言っているかもしれないぞ」

「いや。それほど荒唐無稽な意見でもないのである」

「導師の言う通りだな。荷物を纏めておこう」

 トヨツグさん達も俺達と同じ結論に至ったらしい。
 夜になるまでに全ての荷物を纏め、全ての馬に馬具を装着して見張り以外はゴザの上に寝て夜戦に備える。
 ウトウトしながら日が変わる直前になると突然ターベル山の麓から火の手があがる。
 続けて、馬の走る音や人の掛け声、悲鳴などが混じって聞こえてきた。

「バウマイスター伯爵様。行きましょうぞ」

「敵の策で偽装と言う可能性は?」

「無いと存じます」

「では、本陣に帰りましょうか?」

 俺達は全軍をあげ、一気にターベル山地砦から出て唯一存在する山道を麓に向かって下っていく。
 すると俺達を何日も攻め立てていた反乱軍が後方から味方援軍の夜襲を受けて大混乱していた。
 陣地に火矢を放たれ、騎馬隊によって踏みにじられ、死傷者が増大して既に軍隊の呈を成していない。

「壊滅させろ!」

 この中で一番爵位が高いヴェルが、自然と命令を出す事になる。
 今、俺達がすべき事は、援軍の夜襲を助けて反乱軍を壊滅させ、その追撃を防ぐ事にあった。

「了解なのである!」

 今までは防衛戦で投石しか出来なかった鬱憤を晴らすためなのであろう。
 導師は『魔法障壁』を体に纏わせると単独でまだ敗走していない敵軍へと突入していく。

「何だ! あの化け物は!」

「下らぬ戦を先に起こした己等に言われたくないわ!」

 導師がパンチや蹴りを放つとフルプレートを纏う騎士ですら首をへし折られ、頭部や服部のプレートがあり得ないほど凹んで地面に突っ伏してしまう。

 あれでは脳や内臓に致命的なダメージを受けて即死であろう。
 兵士達については、言うまでもない。
 導師に殺されないようにするには、彼の進路を塞がないで逃げる事だけなのだ。



「伯爵様。感心しないでいくぞ」

「はい」

 俺達は、ミズホ伯国軍と共に援軍と同士討ちにならないように反乱軍へと斬り込んでいく。
 抜刀隊とリッド、タケオミさん、ハルカ、エルもオリハルコン刀を試すべく先陣で切り込んでいく。

「やあやあ! 我こそは!」

「チェスト!」

 バカな事に、この状況で名乗りを上げたバカな貴族がいた。
 ブロワ辺境伯家とのような紛争であったら礼儀に則った行動であったが、今はただのバカである。
 エルの一撃で、剣を斬られて武器を失っていた。
 オリハルコン刀の威力が証明されたわけだが、金属を斬るには相応の技量が必要であり、エルも厳しい訓練で腕を上げているようだ。

「ワシはヒルデスハイム子爵だぞ。捕虜としての待遇を」

 剣を斬られた敵貴族が降伏しようとするが、この状況で捕虜など取る余裕はない。
 エルに一撃で首を刎ねられていた。

「逃げればいいのに」

「ハルカさん。前に行くぞ」

「はい。エルさん」

「妹よ。俺もいるのだが……」

「正確に言えば俺たちだけど」

 4人は俺達の前に出て次々と敵兵を切り殺していく。
 ブランタークさんやセイとカタリーナと共に小規模な『ウィンドカッター』で敵兵を次々と切り裂いていた。

「させるか! 我こそは、『突風』のアレン!」

「知らねえな。逃げなきゃ殺さざるを得ない」

「はんっ! 貧乏なフィリップ公爵家に雇われた冒険者崩れの癖に!」

「お師匠様を知らないなんて……」

「カタリーナの嬢ちゃんよ。俺は別に男に顔を知られていなくても構わないさ。それにな……」

「ジジイ! 余裕そうだな!」

「ああ。お前はもう死んでいるし」

「死んで?」 

 ブランタークさん密かに放っていた『ウィンドカッター』が、後方からその魔法使いの首を斬り飛ばす。
 『突風』が気が付かない内にブーメランのように『ウィンドカッター』を飛ばしていたのだ。

「初級か。後ろに『魔法障壁』を張る余裕はないのはすぐにわかったさ」

 ブランタークさんは、首の無い『突風』を一瞥してからすぐに別の標的を探し始める。
 攻撃は更に続いてたが、それから一時間もしない内に反乱軍はほぼ全て討たれるか、陣地から敗走していた。

「俺の出番が無い……」

「ヴェルは、魔力を残しておかないと」

「無事に戻るまでが戦争だからね」

 ルイーゼが、小学校の先生のような事を言う。
 確かそれは、『遠足は家に帰るまでが遠足です』だったような気がする。

「いや。ルイーゼ。戦争自体はまだ完全に終わっていないから」

「そうだった。戦闘に修正しておくよ」

 ターベル山地砦を攻めていた反乱軍は壊滅したが、無事に本陣まで撤退できるかどうかはまだ不透明であった。
 こちらを討つために、反乱軍の新手が追撃してくる可能性もあったからだ。

「やあ。無事だったかい?」

「何だ。援軍の指揮官はアルフォンスか」

「テレーゼから言われてね」

 残敵の掃討をほぼ終えた頃に俺達はようやく援軍を指揮していたアルフォンスとの再会を果たす。
 彼は、テレーゼの命令で四千人の援軍を率いて来たそうだ。

「意外と指揮官振りが板についているな」

「全部部下がやってくれるからね」

 本人の武芸はからっきしであったが、やはりアルフォンスは優れた指揮官の資質を持っているようだ。

「では、とっとと逃げようか。その前に十五分だけだぞ!」

 何が十五分かと言えば、戦場での戦利品の収集行為で使える時間であった。
 死体から、武器や防具、持ち物、陣地に燃え残っている物資などを持って帰るのだ。
 戦争には金がかかるし、戦利品は命をかけて戦う兵士達に認められた正当な権利である。
 特に今回は内戦なので、もしこれから町などを占領して住民達からの略奪は禁止されている。
 違反者は首を刎ねるとテレーゼが布告しているので、あとは敵軍から奪うしかないというわけだ。

「バウマイスター伯爵達は、人数が少ないから大儲けでしょう?」

「まあ。儲かるけどね」

 貴族や騎士が持つ高価な武具や所持品に魔法使いには魔法の袋を持っている者も多い。
 当然、討った人間に権利があるので、傭兵としての俺達は儲かっている。

「儲かればいいというわけにもいくまい。今回の作戦は特に……」

 無駄な作戦で包囲殲滅されかけたのだ。
 俺達も怒っているが、特にトヨツグさん以下のミズホ伯国軍に不満の種が広がっている。

「テレーゼが、ミズホ人を戦後の帝国統治のためにわざと減らしている。諸侯軍の力を奪っていると憤っている者もいる」

「まずいな……」

 トヨツグさんがアルフォンスに挨拶に来ないのには、そういう事情もあったのだ。
 公式には、撤退に向けた軍の再編成と死傷者の確認のためと言っているが、そんな言葉を信じている者は一人もいなかった。

「ニュルンベルク公爵の謀略に乗せられているな」

「何でもかんでもニュルンベルク公爵のせいにするなよ」

 有能な敵なのであろうが、今回はテレーゼがちゃんと軍の単独指揮権を確保できなかっただけの事である。
 こちらの不協和音を煽る謀略の類については、これはお互い様なのだ。

「戦争はミスが少ない方が勝つ。これからは、テレーゼのミスの方が少ない事を祈るよ」

「うむ。至言であるな。どこかで聞いた事があるような気がするが……」

 単独で戦っていた導師が戻ってくるが、彼のローブは血塗れであった。
 ヴェルは『洗浄』の魔法で返り血を取ってあげる。
 導師はなぜかこういう細々とした魔法が苦手なのだ。

 いや、なぜかというのはおかしいのか?

「すまぬな。バウマイスター伯爵。テレーゼ様には手厳しい意見であるか」

「導師様の言う通りだ。確かにテレーゼには厳しい意見だねぇ」

「総大将なら仕方がないでしょう」

 導師とアルフォンスはテレーゼを庇おうとするが、ヴェルはそれに釘を刺していた。 

「さてと時間だ」

「逃げるとしようか」

 戦利品を漁る時間が終わると援軍とミズホ泊国軍は急ぎ寝る時間も惜しんで本陣へと移動を開始していた。

「敵軍の追撃は」

「今のところはなし」

 眠い目を擦り、時おり馬の上で船を漕ぎながらも撤退を続ける。
 俺達は後方で殿を務めていて、たまに馬に同乗しているヴィルマに後方を確認させていた。
 もし追撃部隊が来たら、容赦なく魔法をぶっ放して追撃の意志を挫くのがヴェルの役割だ。

「追撃は来るかな? ヴィルマはどう思う?」

「多分来ない」

「だといいな」

「敵軍は壊滅したから、後詰が来ても躊躇するはず」

 ターベル山地砦に籠っていた俺達を攻撃した反乱軍は、無謀な攻城戦で2万人以上を失い、続けて夜襲でも2000人は討っているはずだ。
 更に言えば、夜襲で援軍が火矢を放ったのだが、それが彼らの逃走先である冬の枯れた森林や草原地帯に火災を発生させていた。
 近隣に人はほとんど住んでいないらしく、また余裕も無いので消火は行っていない。
 そう簡単に焼け死ぬとは思えないが、あそこから立て直して追撃をかける余裕はないはずだ。
 陣地が燃えて食料などの物資を全て失ったのも痛いはずだ。

「貴族も沢山討った」

「魔法使いもな」

 攻城戦では魔法使いが、夜襲では貴族と魔法使いが共に多く討たれている。
 指揮官と最大戦力が不在では、再編成すら侭ならないであろう。

「とにかく、早く帰って寝たいな」

「ルーク様。一緒に寝よう」

「ヴィルマちゃん」

「みんなで寝ようか」

 今日は、4人で一緒に寝る事になりそうだ。
 無事に辿り着ければ、それも良いであろう。



「眠いが、我らは何とか生き残れたか」

「だが、前途は多難だぜ。導師」

「であるな」

 導師とブランタークさんの表情は暗い。
 俺達とミズホ伯国軍は、今回の作戦で勝利して唯一大戦果をあげた。
 だが、戦略的には大敗北であり、結局1500名中121名の戦死者を出したトヨツグさんなどはアルフォンスと必要以上に口を利かなくなった。

 生き残ったバーデン公爵公子達からしても勝った俺達は面白くないはず。
 理不尽ではあるが、人間の感情とはそういう物なのだから。

「敵を大量に討ったのに大惨敗したように疲れたな」

「まだ竜の大軍の方が楽であるな」

「言えてる」

 人間同士の戦争はとにかく疲れる。
 早く魔物を狩る冒険者生活に戻りたいものだ。
 そんな事を俺が思っていると、その後方で導師とブランタークさんも暫く愚痴を言い合い続けるのであった。



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