様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「そのまま死ぬか、導師に抱きつかれて助かるか。後者を選んで当然なのに心情的には迷うよな」

「唯一の救いは、恋愛感情が皆無な点ですわね」

「何気に酷い事を言うな。カタリーナの嬢ちゃんは」

「お師匠様。私はもう人妻なのですが……」

「おっとすまねえ。だが、それでも抱き付かれるのは年頃の女性としてはどうよ?」

「負傷しないようにして、してもエリーゼさんかハクカさんかセイさんかヴェンデリンさんかルークさんに任せますわ」

「極めて普通の回答だな」

「お師匠様は、私に何を求めておいでなのです?」

 戦いのあった翌日。
 俺、セイ、ヴェル、ブランタークさん、カタリーナの5人は野戦陣地の修復と増改築を行いながら話を続けていた。
 敵兵を防ぐのに役に立ったものの戦いの後半では死体が折り重なって高さ不足になったので、増築をアルフォンスに頼まれていたのだ。
 あとは、騎馬隊を防ぐ堀の深さや数を増す工事も頼まれているが、これは明日以降の予定になっている。
 なぜなら、今はそこに敵軍の大量の死体が散乱していて、兵士と雇われた地元の住民達によって埋葬されていたからだ。
 今は冬なので腐敗の進行は遅いが、そういつまでも大量の死体を放置できない。
 参戦していた他の魔法使いが穴を掘り、身元が確認できる者はメモを取ってから、使える物を剥いで穴に放り込む。
 最後に燃える物や油を撒いて魔法使いが火を付けて火葬にした。
 火葬にして嵩を減らさないと万を超える死体の処理などそう簡単に終わるわけがない。
 死体から戦利品を漁る行為も、これも戦費や褒美の一部なので綺麗事ではすまなかったので普通に行われていた。
 見ていて、あまり良い光景ではなかった。
 野戦陣地が築かれた石塀の前では、死体を燃やす臭いが鼻につく。
 これも戦場の現実であった。

「それでも、負けてあの死体の仲間入りだけはゴメンだな」

「新婚ですからね」

「俺も伯爵様たちもな。ところでエルの坊主は?」

「デートなのかな?」

 護衛はアルフォンスが新たに手配してくれたので、リッドとファラとエルとハルカはそこまで護衛に徹する必要がなくなっている。

「追撃戦に続いてご苦労さんだな」

 フィリップ公爵家軍の精鋭、ミズホ伯国軍の抜刀隊を含めた精鋭によって行われた追撃で、反乱軍4万の内2万人ほどがその屍を曝していた。

 負傷者や捕虜も出たが、これは二千人ほどしかいない。

 負けて戻ると主君が処刑されるかもしれないし、自分だけ降伏すると家族に害があるかもしれないと最後まで奮戦して戦死する兵士達が後を絶たなかったからだ。

 治療も味方優先だったので、昨日の内に死んでしまった負傷者も多い。
 あまりの死体の多さに、みんなゲンナリとしながら処理をしている状態であった。

「味方も結構死んだらしいな」

「ええ」

 味方の戦死傷者は、合計で1867名であった。
 キルレートで考えると圧倒的に有利であったが、今回の反乱軍はそこまで精鋭でもなかった。
 駄目なら使い捨てにする軍勢で、こちらに5%以上の損害を与えている。
 ニュルンベルク公爵は、決して自分達が不利だとは思っていないであろう。

「アルフォンスさんは頭を抱えていると?」

「そういう事だな」

 手を抜けば殺させるので本気で戦わざるを得ないが、殺せば殺すほど帝国の国力は落ちる。
 テレーゼからしても頭が痛い懸案なのであろう。

「戦うよりも石塀の増設の方がマシですわね」

「だよなぁ……」

 頼まれた修復と増設工事が終わったので、今度は後方に下がって荒地を耕す。
 屯田兵というわけではないが、ある作物の種を植えるためであった。

「ヴェル!」

「ルーク」

「待ってたよ」

 現場の荒地を魔法で掘り返していると種蒔きを手伝っていたファラとリッドとイーナとルイーゼが姿を見せる。

「何の種を蒔いているんだ?」

「バカダイコンだって」

「これが現物よ」

 イーナが、桜島大根ほどの大きなカブを見せてくれる。
 名前はバカダイコンなのに実際にはカブの仲間のようだ。

「馬の餌になるそうよ」

 バカダイコンとは、馬の餌用の作物らしい。
 硬くて人間が食べると不味いが、どんな荒地にでも簡単に育つ。
 水はある程度必要であったが、これは井戸を大量に掘って対応していた。
 『どんなバカにでも育てられる』から、バカダイコンという名なのだそうだ。

「原産はミズホ伯国だって。カブの品種改良の過程で生まれたそうだよ」

「ふーーーん」

 俺は、ルイーゼからの説明を静かに聞いていた。
 大根と聞くと、おでんや沢庵が食べたくなってくる。

「種を蒔くと二ヶ月で出来る。寒さにも強い。荒地でも大丈夫。唯一不味いのが欠点かな?」

 馬が食べる分には問題は無いようだ。
 荒地でバカダイコンを収穫してから牧草の種を蒔き、今度は馬糞を土に混ぜて稗・粟・蕎麦などを植える。
 こうやって徐々に麦などが作れる土に改良していくのだそうだ。

「バウマイスター伯爵領でも栽培可能かね?」

「駄目みたい。暑さに弱いそうよ」

 ヴェルの問いに種を蒔いていたイーナが答える。

「それは残念だな」

「バウマイスター伯爵領にいる時とあまり変わらないわね」 

「プラス人殺しだが、これはしょうがない。あとは長引きそうだな」

「ええ。でも完全に持久戦なのね」

 いきなり4万人の軍勢を磨り潰し、それがダメージだとも思っていない連中と戦うのだ。 
 一発逆転で、帝都侵攻という博打は打てないのであろうと推測される。

「馬の飼料を栽培しているからな」

 補給の負担を減らすためなのであろう。
 いきなり麦などは不可能なので、バカダイコンで代用している。
 野戦陣地も一種の防衛要塞としての機能拡大が続いている。
 魔法使い達が加工した石材と木材を積み上げて、兵舎や見張り用の櫓などが増設中であった。

「持久戦にも限界があるからね。さすがに、数ヶ月以内には何とかする予定だ」

 そこにブランタークさんを伴ったアルフォンスが姿を見せる。
 総大将である彼には、常にブランタークさんが護衛につくようになっていた。

「テレーゼが、本軍をここに出すそうだ」

「ある程度は味方を纏めたのですかね?」

「みたいだな。ねえ。アルフォンス様」

「北部の全諸侯と東部と西部の北側の大半に、あとは個別に参加したり中立を宣言したりかな?」

 国内を二つに割っての内乱なので、どちらが勝ち組かを判断して付く方を決める。
 建て前は別として、本音では勝つ方を判断して付かなければいけないので、貴族というのも大変だ。
 関が原と同じで、判断を誤れば最悪改易なのだ。
 貴族によっては数千年も続いた家が消滅してしまうわけで、どちらに付くかの選択で胃が痛いはずであった。

「それで、いつ来られるのです?」

 彼女が総大将として陣頭に立てば、それだけ味方の士気もあがる。
 危険度は増すが、何も最前線で剣を振るえと言われているのではない。
 ここは覚悟を決めて前に出る事も必要であろう。

「明日の早朝だそうだ。結構な大軍だそうだから」

「了解」

 その日は野戦陣地の拡張工事に魔法を振るい、その翌日の朝には無事にテレーゼが率いる軍勢が姿を見せていた。



Menu

メニューサンプル1

メニューサンプル2

開くメニュー

閉じるメニュー

  • アイテム
  • アイテム
  • アイテム
【メニュー編集】

編集にはIDが必要です