様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 凄惨な戦闘が終わってから数時間後。
 俺とセイとヴィルマとミュウはハクカがいる野戦治療所において治療の手伝いをしていた。
 数時間の仮眠である程度回復させ、数多くいる負傷者の救護に当たっていたのだ。

「こっちの治療は終わったよ」

「私も終わったわ」

「ルーク様、終わった」

「終わったよ」

 ハクカとミュウとセイとヴィルマが言ってきた。
 ヴィルマの治療は簡単な治療程度なら出来るのだ。応急処置程度なら軍の貴族の人間は、大概習うらしいのだ。そこにハクカの治療知識が備わり、多少の負傷程度ならヴィルマの治療技術でも問題なく出来るのだ。ハクカはエリーゼとマイスター司祭の2人から教わり、カソリックの治療知識と治療技術が備わっている。

「なら、次の場所か」

 俺たちは、次の野戦治療所を目指していくと見慣れた人物を見つけた。

「導師、追撃は終わったのですか?」

「ふむ、終わったでござる。後は負傷者の治療でござる」

 なぜ、導師が追撃戦に参加したのかは不明である。
 どこかから手に入れたアームストロング伯爵家の者が良く使う六角棒を片手にドサンコ馬に乗って勢い良く飛び出していく。
 突然の事にアルフォンスは唖然としていたが、こうして無事に帰還には成功している。  
 ただし、ローブは血塗れでハクカとセイとミュウは素で引いていた。
 飛翔系魔法の制限により三次元を利用した戦闘が不可能だったので、色々とストレスが溜まっていたのではないかと俺は予想する。

 俺たちは、野戦治療所に入った。
 入ると重傷者の意識が朦朧としてきて、戦友達が励ましの声をかけている場面に遭遇していた。
 俺とあまり年齢も違わない少年が、迫り来る死と戦っていたのだ。

「母さん……」

「フランク!」

「負傷者はここであるか!」

「導師?」

「伯父様?」

「話はあとである!若者よ! しっかりするのである!」

 導師は『聖』の治癒魔法を覚えたが、効果を発揮させるためにその相手に抱きつかないといけない。
 導師は青白い『聖』の光に包まれながら、両手を思いっきり広げていた。

「急いでください(何だろう? 物凄く良い話なのに見た目が……)」

「ええと……。お願いします。伯父様」

 同性愛禁止の教会で育ったエリーゼからすると自分の尊敬すべき伯父が少年に抱き付くなど悪夢のような光景であろう。
 だが、これも少年の命を救うためである。
 彼女も余計な事は考えずに導師に治療をお願いしていた。
 導師が『聖』の青白い光を全身から発しながら少年に抱き付くと次第にその傷が消えていく。
 相変わらず抱き付かないと発動しないが、元の魔力が凄まじいのでその効果は素晴らしい物があった。

「ううっ……。母さん」

 今にも死にそうであった少年は導師からの治療の甲斐もあって、次第に意識も戻ってきたようだ。
 ただ、一つだけ可哀想な現実がある。

「フランクさん。あなたに抱き付いているのはお母さんでは……」

「駄目ぇーーー! それは言っては駄目ぇーーー!」

 真面目なエリーゼは事実を語ってしまうが、この場でそれを言っては駄目なのだ。

「あの少年は助かったんだ。それ以上は……」

「わかりました」

 今にも死にそうな少年を治癒魔法で救う導師。
 エリーゼのような教会関係者から見ると本に残したくなるような奇跡なのであろうが、絵面からして記憶を封印したくなるような光景である。

 筋肉オヤジが、少年に思いっきり抱き付いているのだから、間違いなく本に残そうとすると教会から禁書扱いされるであろう。

「導師。普通に治癒魔法が使えればいいのに……」

「はい……」

 俺たちは乾いた笑いしか浮かばない。
 そして、助かったフランク少年にも悲劇が及んでいた。

「母さん?」

「ふむ。母さんではないが、助かって良かったな」

「……」

 少年が絶句するのも当然であろう。
 死に掛けて意識が朦朧としている時に亡くなった母親の姿が頭に浮かんだのに目を醒ませば筋肉の塊でヤクザも真っ青な強面に抱き付かれているのだから。

 同時に導師はその少年に笑みを送っていたが、やはり導師なので額面通りには受け取れない。
 彼からすれば、導師は筋肉質な死神に見えるのかもしれない。
 暫くは、硬直したままであった。

「硬いぃーーー! 母さんが硬いぃーーー!」

 どうやら彼は、自分の身に起こった現実に耐えられなかったようだ。
 耳を切り裂くような悲鳴をあげていた。

「あはははっ! これだけ元気ならばもう大丈夫であろう!」

「ねえ、リヒテル! コンラート! これはどういう事なの?」

 負傷が癒えたフランク少年は周囲の友人達に尋ねるが、まさか導師の前で妙な事を言うわけにもいかず、友人達は視線を外して下を向いていた。

「導師様が助けてくれたのさ」

 ただ一言だけ、小声で事実だけを伝えて。

「フランク。助かったんだから良かったじゃないか」

「そうであるぞ。少年! 生きてさえいれば、人生はまだまだ楽しめるのである!」

 せっかくの感動のシーンも導師のせいで台無しとなり、助かった少年は他の負傷者達から同情的な視線を送られる。
 だが、彼らはすぐに気が付く事となる。
 自分達もすぐに導師に抱き付かれて、声にならない悲鳴をあげる事になるのだという事に。

「導師。魔力は大丈夫なのですか?」

「追撃ではほとんど使っておらぬよ。後ろから追い付いて、この棒で殴り殺しただけなのである」

「そうですか……」

 魔法使いが追撃に出て、敵兵を六角棒で殴り殺す事の是非はともかくとして、導師のおかげで多くの負傷兵達が助かったのは事実であった。

 みんな抱き付かれて、心の中でも悲鳴をあげていたと思われる。



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