様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「おおきい」

「うん」

 ブライヒレーダー辺境伯の治める南部最大の商業都市ブライヒブルクを見下ろす山の高台で、僕とハクカは大都市に呆然としていた。
 人口は、二十万人くらいであると聞いている。
 平成日本の都市で言えば大した事はなかったが、ここ一年以上も人口数百人の領都で暮らしていた影響で、僕には物凄い大都市に見えてしまうのだ。ちなみにファブレ騎士領は、先の天地の森の出兵が原因で133家ほどの家があるだけだ。

 更に、ここまで到達するのにボクは55日の時間を要していた。
 ファブレ騎士領との間にある山脈には、一応は山道が存在している。
 しかし、山道の往復だけで1ヶ月程度の時間がかかってしまうらしい。山脈を越えた先にあるブライヒブルクに行くまで、1ヶ月半ほどかかるのだ。片道、2ヶ月ほどかかる計算である。

 そんなこともあり、一応は山脈には道が存在している。
 ボクは身体機能を強化し、周囲を探知しながらその道を進む。
 この山脈には、魔物がそれなりに出るらしい。

 一応、魔物の領域扱いになっているのだが、どういうわけか山道沿いには滅多に現れない。
 だが、かと言ってゼロではないし、普通の熊や狼などは頻繁に現れるので警戒は必須であった。

 それと僕が飛翔の魔法を使わない理由。
 それは、山の方に視線を送った家族や領民達に飛翔で飛んでいる僕の姿が目撃されないようにするためである。
 一日で進める限り進んでから瞬間移動で家へと戻り、翌日は昨日までに進んだポイントに瞬間移動で戻って移動を開始する。
 そんな面倒な事をしたので、余計に時間がかかってしまったのだ。

「どうした? 坊主、お嬢ちゃん」

「お使いで、町に買い物です」

 感動の後に僕たちはブライヒブルクの入り口へと移動する。
 近くに冒険者達が篭る魔物領域ブライヒブルク大森林があるので、このブライヒブルクは高さ三メートルほどの防壁によって囲まれている。

 とはいえ、魔物が己の領域から外へと侵攻した例は数年に1度の単位で定期的に起こる『氾濫』ぐらいである。それだって、ブライヒブルクでは、あまりないはずだ。何せ定期的に間引けば『氾濫』が起こる心配はないからだ。尚、わがファブレ領では、この暴走が起こったためしがない。この防壁は対人間用のはずだ。
 ヘルムート王国では、長らく戦争などしたこがなかったが、全く荒事がないわけでもない。貴族同士による領地や水の利権などが原因の小競り合いなどは、数年に一度は必ず発生するからだ。
 特に領地が接している貴族同士はこの手の争いが多い。
 実際にブライヒレーダー辺境伯も近隣に数家仲のよくない貴族家が存在する。
 ちなみにファブレ騎士家には、そんな利権争いをする貴族家などは存在していない。山脈や海によって物理的に隔離されているからだ。

「坊主、お嬢ちゃん、身分証はあるのか?」

「ううん、もってないよ」

「商業ギルドで会員証を作ろうかと」

「そうか。入街税の銅貨1枚は払えるのか?」

「大丈夫です」

 実は身分証は持っているのだが、さすがに7歳のファブレ家の八男がブライヒブルクに現れたとなれば、それは大問題になってしまう。
 そこでボクたちは、近隣の農村の子供として街に入り込もうとしていた。
 身分証は街で住んでいる住民はほぼ全員が持っているが、農村などでは発行してくれる場所が無いので持っている人間は少ない。
 発行して貰うには、わざわざブライヒブルクまで出向く必要があったからだ。

 ならば、買い物などで街に入りたい田舎者はどうするのか?

 答えは、ギルドに加入するというものであった。
 本当は冒険者ギルドが一番相応しいのだが、あそこは最低でも十五歳にならないと入れないルールがある。
 戸籍など無い世界なので少々の年齢の誤魔化しは効くが、さすがに今の僕が十五歳を自称しても無駄であろう。
 そうなると残りは職人ギルドか商人ギルドという事になる。
 職人や商人の世界では、僕くらいの年齢の子供でも丁稚奉公をしている人が多い。
 しかも師匠や親方の命令でブライヒブルクにお使いに行くケースも多く、比較的簡単に身分証を作れるようになっていた。

「なるほどな。そのウサギを売るのか」

 門番の兵士は、僕とハクカが腰にウサギの皮を数枚ぶら下げているのを確認する。
 これは、山道の途中で得た物であった。

「はい、何かを売る際には商業ギルドの会員証が必要だと聞きましたので」

 正確には、身分証が必要であったのだ。
 街の住民は最初から身分証を持っているし、各種ギルドに所属していれば会員証がその代理を果たす。
 品物の売買の際には、防犯のためにこれを提示する義務があった。
 意外と厳格ではあったが、実は裏町には身分証無しで売買をする店もあるらしいし、そもそもギルドの会員証自体が外部の人間には作り放題という罠も存在していた。
 そのおかげで、ボクたちも簡単に会員証が作れて万々歳なわけだ。
 ボクたちは、門番に入街税銅貨一枚を支払ってからブライヒブルクへと足を踏み入れる。
 この入街税は、街に入る際には必ず払わなければいけないようだ。
 銅貨一枚なので、それほどの金額でもないのだ。
 ちなみにこの世界の通貨制度であったが、これはリンガイア大陸では全て統一されている。

 ヘルムート王国とアーカート神聖帝国では貨幣のデザインが違っていたが、条約によって使われている金・銀・銅などの量が統一されていたので、別にどちらを使っても問題にはならなかった。

 あとは、貨幣の種類と価値であったが、お金の単位はセントが採用されている。

 ただ、貨幣経済に触れる機会が年に3度来る商隊から売り買いする事くらいしかなく、普段は物々交換で済ませてしまう我がファブレ騎士領では、滅多に耳に入らないワードではあった。

 銅貨一枚で一セント、銅貨十枚で銅板一枚で十セント、銅板十枚で銀貨一枚で百セント、銀貨十枚で銀板一枚で千セント、銀板十枚で金貨一枚で一万セント、金貨十枚で金板一枚で十万セント、金板十枚で白金貨一枚で百万セント、白金貨十枚で白金板一枚で1千万セントとなっていた。

「商業ギルドへようこそ。会員証の発行ですね。必用事項をこの書類にお願いします」

 門番のお兄さんに教えて貰った商業ギルドのある大きな建物へと入ると、そこには様々な用件で訪れた人達でごった返していた。
 会員証発行窓口と書かれた窓口で座る若いお姉さんに話しかけると彼女は口調は丁寧ながらもマニュアル通りのような対応でボクたちに書類を書かせる。

 とはいえこの書類、書くのは名前と出身地と年齢くらいであった。
 年齢は普通に書き、住所はここから少し離れた寒村の名前を適当に、名前はアッシュのみで姓を持たない平民の子供の振りをする事にする。

 虚偽記載ばかりであったが、この程度の虚偽では問題にはならないらしい。

「初回の会員証発行は無料です。ですが、再発行には再発行手数料として銀貨一枚がかかりますので失くさないように注意してください。それとバザーで品物を売る際には、常駐の責任者に位置の指定を受け、品物が売れた際には売り上げの一割を納めるように。ルール違反には、厳しい処置が待っているので悪しからず」

 どこまでも事務的な受付のお姉さんの元を辞した僕たちは、バザーなる物が行われている場所へと移動を開始する。



 ???SIDE

「・・・・・」

 胸下まで伸びた赤髪をポニーテールにしている少女が立ち止まりとある場所を一点に見つめていた。

「イーナちゃん?どうしたの」

 白い道着を着た青髪の小柄な少女が緑のスカート、緑の上着、白いシャツを着た赤い髪をポニーテールにしている少女に問いかけた。

「あ・・・ううん」

「バザー?商業ギルドがやってるやつだよね」

「同じくらいの男の子と女の子が自分で獲ったってウサギを売りに来てたからつい見ちゃったの」

「いいなぁ。ボクたちも自分で狩りができたらいいのにね」

「家のことを考えたらいい顔をされないでしょう。仕方ないわ。将来冒険者として身を立てる為にも今は鍛錬に励みましょう」

「そうだね」

「へへ、イーナちゃんがいてよかったぁ」

「・・・私もよ。ルイーゼ」

 ルイーゼの笑顔につられ、イーナも笑顔で返す。

「一緒に頑張ろうね」

「そうね」



 イーナSIDEEND



 受け付けのお姉さんの説明通りに街のメインストリートに繋がる少し細い路地に入ると、そこでは数百人もの老若男女が道の端でゴザを広げて様々な物を売っていた。

 中には、ボクたちとさして年の違わない子供もいて、なるほどボクたちが商業ギルドの会員証を求めても、受付のお姉さんは特に驚きもしなかったはずだ。

「坊主、お嬢ちゃん、お父さんの手伝いなのか?」

 バザーを仕切るギルド職員の中年男性に話しかけると彼はボクたちが親が狩った獲物を売りに来た子供だと思ったようで、優しく声をかけてくる。

「自分で罠を仕掛けて獲りました」

 別に魔法が使える事実を公表する必要も無いので、僕は自分が住んでいる村の近くで罠を仕掛けてウサギを獲ったのだと言う事にしていた。

 良く見ると他にも同じように罠などでウサギなどを獲って売っている子供の姿もあるようだ。

「へえ、小さいのに腕が良いんだな。あそこの空いている場所で売ると良い。ウサギの毛皮と肉か。常に足りない状態だから、すぐに売れるだろうさ。今の相場は、肉と毛皮で一羽銅板五枚くらいかな?」

 指定された場所に行く途中で他にも狩ったウサギの毛皮と肉を売っている人を見たが、値札はみんな銅板五枚からプラマイ銅貨五枚くらいであった。

 僕は細かな利益率の上昇に時間をかけたくないので、普通に銅板五枚を売価に設定し、持参したゴザの上に8羽のウサギを並べる。
 すると、すぐに声をかけてくる男性がいた。
 見た目はいかにも商人風の四十歳前後の男性であった。

「お父さんのお手伝いかな?」

「いえ、自分たちで罠を仕掛けて獲りました」

「ほう、その若さで良い腕をしているんだね。それに、肉も新鮮だし毛皮も上手に取れているな」

 血抜き、解体も魔法で簡単に行えるので、プロの最高級品には劣るものの、そこそこの品質で行えるので当然といえば当然であった。
 その魔法を習得する手間と獲物の解体への抵抗感の方が最初は難題であったほどだ。
 前世では、肉はスーパーなどでパック詰めした物しか買った事が無いので当然と言えよう。
 特に困ったのが、血や内臓を抜く行程であった。
 アレは、元現代人にはそう簡単に慣れる物では無いとだけ言っておこう。

「全部貰おうかな。また売りに来てくれると嬉しいな」

「ありがとうございます」

 ウサギは全部で銀貨4枚で売れ、売り上げの一割の銅板4枚をギルド職員に納める。

「この後はどうするんだ」

「父に頼まれて米を買ってくるようにと」

「相場は、1キロで銅貨5枚位かな?産地とか品種とかで相場がかなり違うけど、一番近い米屋はメインストリートを北に行ってすぐだ」

「ありがとうございます」

「おう、いつでもこいよ。坊主達ぐらい腕が良ければ大歓迎だ」

 僕は、ギルド職員にお礼を言い、近くの米屋に行くと米の値段を見た。

「おこめ・・たかいね」

「うん・・・銅貨5枚〜銀貨6枚とは高いね」

 ボクは、1キロ銅貨10枚の米を買ってから『瞬間移動』で戻ろうとしたが

「あのね・・・ほかのおみせもみにいっちゃだめ」

「・・・いいよ」

 僕もブライヒブルクの食料品の値段は気になるのでハクカの頼みに賛成したのであった。
 ハクカが不安そうにしながら僕の服を掴みながらキョロキョロしているので、ハクカの手を握るとハクカが安堵した顔を浮かべていた。

「行こう」

「うん」

 お店を見て回った。
 それによると

 小麦粉 1kg  銅貨8枚〜
 白米  1kg  銅貨5枚〜
 塩   1kg  銅貨10枚〜
 タマゴ 1個   銅貨3枚〜

 である。
 平成や令和時代の日本で暮らしていた僕からすると少し高い気もする。



 どこからかいい匂いが漂ってきた。
 二人で匂いの出所を見ると一軒のお店を発見した。

 ・・・食堂か?

 いい匂いだ

「よるか」

「うん」

 食堂に入り、注文をすることにした。
 注文内容はシチューである。

「ご注文のシチューです」

 ニンジン、ジャガイモ、肉等が入った具沢山のシチューが出てきた。

「「いただきます」」

 ボクたちは、シチューを口に入れると

「おいしい」

「ああ」

 ハクカの満面の笑顔に癒されながらも頷く。
 実家で出されるシチューとは天地の差である。
 出汁や具の差が思いっきり出ていた。
 ボクたちは、無言で

 ハグッハグッ

 と食べた。

「「ごちそうさまでした」

「お会計は、20セントになります」

 お金を支払うとお店を出た。

「美味しかったね」

「ああ・・・実家とはえらい違いだな」

「うん」

「そろそろ帰ろうか」

「うん」

 ボクたちは、『瞬間移動』でファブレ領に帰還したのであった。
 ハクカに銀貨1枚と銅板8枚渡そうとしたら

「・・・ウサギさんをたおしたのルークだよ」

「荷物の運搬や解体してくれたよね」

「でも」

 ハクカの拒否に僕は、一旦折れ、仕方ないので、ハクカの母親にわけを話した。

『男の子には意地があるから、ハクカがルーク様にお返しに何か作って差し上げればいいのよ。その方がルーク様喜ぶわよ。今は、分からなくてもいいから、いずれ分かっていけばいいのよ』

『・・・うん』

 という説得で、ハクカを納得させていた。


 
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