様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「おい、あの子は確か……」

「お館様のこどもで、確かルーク様だったような……」

「何をしているのかな?」

「さあ? うちは、子供でも貴重な労働力なんだがな。噂によると、あまり働き者の気質は持っていないらしい」

「お館様のお子だからなぁ。迷惑にさえならなければ問題ないべ」

 トニーが結婚し、アンディ兄さんが家を出てから一ヵ月後。
 僕は、まだ開墾の予定すら立っていない平原を走り抜けていた。

 途中、農作業に向かう農民達が僕の事を噂してるのが聞こえる。
 内容が、『家の手伝いもしない、我が侭な末っ子』と言うのはとっくに理解している。
 いや、敢えてそうなるように父やトニーが流していたのだ。
 それと、ようやく昼の間は自由に外に出ても良いという許可を得ていた。
 外に出れば、多少自由に動いても問題は無いはずだ。
 なぜなら、このファブレ騎士領はとにかく広い。
 その中で父達が認識している領域は、北西部の山脈の麓にある人口が522人が住んでいる村や森である。
 しかし実際には、東南北の未開地開発地域やそれに付随した天地の森やその先にある海岸や海も領域に含まれていた。
 ファブレ騎士領の領地や権利は、実は開発さえ出来ればリンガイア大陸随一の貴族となれる可能性を秘めている。
 秘めているのと実際に出来るのかには、大きな隔たりが存在していた。何しろ他領とわが領地の境には、飛竜達がたくさん生息しているのだ。この飛竜たちを討伐しないとわが領地の大開発は行えないのだ。
 とまあ、我がファブレ騎士領の実情はこんな所であったが、僕はとりあえずは行動範囲を広げるために動いていた。

 朝は、日課になっている魔力循環訓練や剣の訓練を行い、朝食後に昼食代わりの小さな白パンを二個貰ってから家を出る。

 ちなみにトニーが結婚したことをきっかけに森での狩猟と採集物の提出は免除されている。
 農地と用水路建設がひと段落したので、借り出されていた人達が狩りをする余裕が出来たからだ。

 我が家も父とトニーが交代で森に狩猟と採集に行くようになっている。
 さすがに6歳の子供が獲って来るホロホロ鳥だけにメインディッシュを任せるほど、2人にプライドが無いわけでもないようだ。
 とはいえ、ホロホロ鳥ではプロの狩人にも難しい獲物である。
 獲れない日の方が多いので、僕は帰りに二羽か三羽の草原ウサギをお土産にする事にしている。
 何しろファブレ騎士領には未開の森や草原が多い。
 それしか無いとも言う。
 なので、帰りにいくらでも獲る事は可能であった。

「さて、今日こそは天地の森を拝むぞ」

 現在、僕が集中的に訓練を行っている魔法は、『飛翔』と『瞬間移動』の二つであった。
 飛翔は、前の世界では漫画やゲームで御馴染みの魔法だ。
 両方とも魔法自体はすぐに使えるようになっていた。 
 最初にあまり良く考えないで飛翔のスピードを上げた結果、息が詰りかけたのは良い思い出であったが、それは自分の体を空気の膜で防御するようになってからは発生していない。
 スピードも高速道路を走る車並には出ているので、これも特に問題は無いであろう。
 それに、一度覚えたポイントには一瞬で瞬間移動で移動可能であった。
 そう考えると海まで到達するのはあっという間という思いが頭の中に浮かんだのだが、実際にはまだ天地の森に到着していなかった。
 なぜなら、人が住んでいる地域以外録に地図すらなく、しかもその領域の広さが1つの大陸並に広大なファブレ騎士領内を自在に動けるようにと未開地の地図を作成しながらこの10ヶ月を過ごしていたからだ。

 この10ヶ月の努力の結果、未開地のほぼ全域にポイントを置く事に成功していた。

 ポイントとは言っても、何か標識などを設置したわけではなく、瞬間移動の際に安全に着地可能な場所を自作している地図に書き込み、そこに番号を振っているだけに過ぎない。

 あとは、その番号と大体の位置を頭に思い浮かべながら瞬間移動の魔法を使えばそのポイントに無事に到着する。
 多少、位置がズレる事もあったが、あとの細かい移動は飛翔で十分なのだ。
 しかし、この10ヶ月でわかった事であったが、この未開地は宝の山だ。
 開墾可能な土地は多いし、治水工事は不可欠だが河川が多くて水には困らない。
 点在する林や森は様々な産物の宝庫だし、鉄、銅、金、銀、各種宝石の鉱石を産出する鉱山すら複数存在していた。
 開発さえ出来れば、ファブレ騎士領は辺境伯領にジョブチェンジ可能であろう。
 ただ、それは今の時点では夢物語であった。
 王国はまだ中央部の開発すら半分も終わらせておらず、南部辺境にもそれなりに貴族が配置されていたが、彼らも自領に開発可能な未開地を多数抱えていたからだ。
 要するに、このファブレ騎士領の未開地に送る人間や資金が不足していたのだ。
 この地の開発が始まるのは、多分、何百年も先であろう。
 というわけで僕は、第2到達者として自由にウサギを狩ったり、魚を獲って焼いて食べたり、あとは新しい魔法の練習場として利用していた。
 特に高威力の上級攻撃魔法練習には、この誰もいない未開地は格好のポイントとも言えた。
 あとは、土系統の特殊魔法の練習であろう。
 金の鉱山で、適当に集めた鉱石や砂金から純粋な金の成分だけ取り出して金のインゴッドが出来る。
 アティ師匠が『抽出』と『再結合』と呼んでいた錬金術師になるには基本となる魔法であった。
 あとは、上級魔法として、銀に魔力を添加してミスリルを生成するという物もある。
 使用する魔力に比して出来るミスリルの量は少なかったが、大量に魔力を使うので、魔力量を増やす練習には格好の魔法ではあった。

「暗い森だな……何か出そうだし……」

 そんな事をしながら、今日は遂に天地の森をその視界におさめる事に成功していた。
 昼なのに外からでもわかる不気味な薄暗い森で、耳には不気味な鳥の鳴き声や聞いた事もないような魔物の叫び声や悲鳴なども聞こえた。

 どう考えても、6歳の子供が入って良いような場所には見えなかった。
 いくら魔法が使えても、その身体能力を強化できるとしてもだ。
 このくらいで油断してこの森に入っても、今の僕だと死んでしまう可能性があったからだ。
 大丈夫かもしれないが、それを自分の命をチップに試すつもりは僕にはなかった。
 この世界は、ゲームではない。
 一度死んでも、コンティニューというわけにはいかないのだ。
 もう少し大きくなってから剣や他の武芸の訓練を始め、それがある程度形になって成人してから。
 そのために、僕は瞬間移動でここに来れるようにしているのだから。

「とはいえ、海に行くのを諦めたわけではない」

 それから1週間、僕は飛翔と探知の魔法を駆使して天地の森の上空を探っていた。
 まずは、天地の森で一番薄くて海に近い地点を探り、その進路上に飛行可能な手強い魔物がないかを探るのだ。
 そこに竜などがいればアウトだが、いなければ飛翔の魔法で全力で飛べば海に辿り着く事も可能であろう。
 1週間の捜索の結果、どうにか飛翔で海まで飛び越えられそうな天地の森が薄い地点を発見する事に成功する。
 幸いにして、魔物は天地の森からは絶対に一歩も出ないし、飛翔の魔法で全速力を出せば竜よりは少し早く飛べる。

「海には、美味しいお魚さんがいるんだ! それと塩!」

 いい加減、塩・胡椒味の食事には飽きていた。
 醤油や味噌は不可能にしても、せめて出汁つきの食事がしたい。
 この魔の森を飛び越えれば、そこには大量の塩が眠っているのだ。

「飛翔! マックススピードで! いざ、海へと!」

「オ〜」

 ハクカも恥ずかしそうにしながらも手を上げていた。
 久しぶりに燃えて来た僕は、多くの魔力を燃やして飛翔の魔法で天地の森をハクカを背後から抱きしめたまま超高高度・超高速で飛び越える。

「キャア〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 ハクカの悲鳴が木霊する。
 そして数分後、僕は無事に海へと到着していた。

「やったぁーーー! 海だぁ!」

「・・・・ハァハァハァ・・・・」

 喜びをあらわにする僕と俺に抱きかかえられたまま息を乱しているハクカがいた。
 そこは、全く人の手が入っていない綺麗な砂浜と透明度の高い海水でのみ構成された海であった。
 しかも、この海岸と海は魔物の領域からは外れているので探知を使っても危険な存在は察知できなかった。
 海中に大型の魚類らしき反応、多分これは鮫か何かであろう。
 だが、浅瀬で遊んでいる限りは、僕たちに害を成す存在ではなかった。
 僕は、ハクカの様子を思い出し

「大丈夫?」

「・・・うぅ・・・こわかった」

 涙目でこちらを見るハクカに

「・・・・・・ごめん」

 可愛いと思ったが、涙目で見るハクカに申し訳なく思い、謝った。



「・・・きれい」

 少しすると落ち着いたのか。
 海を見て喜んでいるハクカがいた。時折、浜辺に来る波に足をつけてパシャパシャと楽しそうに遊んでいた。

「まずは、ご飯だ」

 僕は、急いで自作の釣り道具を作成し、砂浜近くにある岩場でパンを餌に釣りを始める。
 するとここの魚は擦れていないらしく、釣り経験の少ない僕でも簡単に釣り上げる事に成功していた。
 前世で自炊をしていたせいで、一応は、魚も捌けたので、すぐにサバに似たこの魚が食えるのかを『鑑定』の魔法で確認してから、念のために『毒消し』もかけ、火で焼いて食べてみる事にする。
 味付けは海水だけであったが、久しぶりの海の焼き魚にボクたちは舌鼓を打っていた。

「・・・おいしい」

「ああ」

 ファブレ家だと、たまに川で獲れた鮒や鯉モドキが食卓に上がるのだが、これがとにかく泥臭くて不味かったのだ。どう見ても調理に失敗しているのだ。
 一回食べて以来、僕は二度と食卓に昇っても口にしなかったほどだ。

「あとは、貝とかエビにカニだな」

 岩場では他にもカキやサザエやアワビに似た貝や食べられる大型のエビやカニなどが簡単に獲れていた。
 それらも串に刺してから火で焼くと懐かしくて美味しい匂いが漂ってくる。

「おいしい」

「美味ぇ!」

 それを頬張りながら、久しぶりの海を幸を心から堪能するのであった。



 数日後。
 ボクは海岸で新たな取り組みを開始していた。
 別に海岸でわざわざ行う必要はないのだが、ここだと人目は皆無であったし、何より自由に海の幸が食べられるのが良い。

「ここでは、塩も大量にあるからな」

 僕が今挑戦しているのは、土系統魔法の『抽出』の応用魔術であった。
 まずは、いくらでも好きに使える大量の海水を材料に、魔法で塩を作る実験を行うのだ。

 塩化ナトリウムと塩化マグネシウムとその他の成分が混じった白くてサラサラした塩が完成した。

「というか塩の販売で生きていけるかも」

 などと考えてしまう僕であった。
 最も塩は、王国の許可がないと販売できないのである。



 ある時、『飛翔』したときに南方に島を発見した。
 そこで自生していたサトウキビから砂糖の精製を魔法で試みた。
 砂糖は、リンガイア大陸の南端地域や南方海上に浮かぶ島嶼などで栽培されているらしい。

 当然、王都や北方地域、果ては輸出品としてアーカート神聖帝国にも輸出されているようであったが、僕はファブレ騎士領内では一度も見た事がなかった。

 何でも、需要に比べて極端に生産量が少ないので、価格が塩よりも圧倒的に高いからなのだそうだ。
 財政的に厳しい我がファブレ家ならば、贅沢品の砂糖などよりも塩の精製なのであろう。
 あとは、森で獲れるハチミツや果物とか汁を煮ると軽く甘い蜜が出来る蔓などで甘味を補っているのが普通であった。

「次の目標は、ブライヒブルクに『瞬間移動』で移動可能になる事だな。明日からは、山道を走らないといけないからな。早く帰って寝よう」

 僕は、瞬間移動の魔法を唱えて急ぎ家へと帰還するのであった。



Menu

メニューサンプル1

メニューサンプル2

開くメニュー

閉じるメニュー

  • アイテム
  • アイテム
  • アイテム
【メニュー編集】

編集にはIDが必要です