様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「我が必殺の! バースト・ライジング!」

「おおっ!」

「相変わらず凄いな」

 親善訪問団と一員としてアーカート神聖帝国に到着した翌日、今日は両国の魔法使い達による魔法の披露会が行なわれていた。
 皇宮傍にある武芸大会などが行なわれるコロシアムには多数の観客がつめかけ、主賓には皇帝陛下の姿もある。
 ここで順番に自分が得意な魔法を順番に披露していくのだ。
 普段はなかなか見られない攻撃魔法を見るチャンスだと平民達にも人気があり、チケットの入手は困難を極めるらしい。
 中にはこれを『手品ショーの延長』だと揶揄する人もいた。
 民間では、初級の魔法使い達による演芸扱いの魔法ショーは存在しているが、親善訪問団来訪の時には普段は見られない両国の高名な魔法使い達の魔法が見られるとあって人気がある。

 まずは中級レベルの者から、見た目が派手な攻撃魔法が設置された標的や巨岩などに炸裂する。
 決闘方式ではないのは、万が一にも貴重な魔法使いを死傷させないためであった。
 魔法の披露が進み、今は導師がトニーに使った火柱の魔法で全高十メートルほどの岩を全てマグマ状に溶かしていた。
 観客はその威力に大きな歓声と拍手をあげている。

「導師からすれば、欠伸が出るような実技だろうな」

 導師が本気で自分の実力を見せれば、周囲に大きな被害が出てしまう。
 そこで、二十メートルほどの火柱をあげてそれでお茶を濁していたのだ。
 そしてその光景を俺も貴賓席に座って見学していた。

「あの男なら、万の軍勢でも余裕で蹴散らすであろうからの」

「でしょうね」

「軍事の常識を根本からひっくり返す男じゃからの。それは、ヴェンデリンも同じであるか?」

「……」

「皇帝陛下もお喜びのようですね」

「陛下はメッテルニヒ公爵家の出でな。貴族会議の投票で三十八年前に即位された」

 この国の皇帝は、中央の皇家と七家の選帝侯に任じられている公爵家の当主から立候補した者達から、貴族議会の議員による投票で選ばれる。

 こういうシステムになっているのは、多くの他民族国家を内包しているが故の苦肉の策でもあるようだ。
 中央の皇家と公爵家で皇位を流動させて、なるべく権力を平等にという事らしい。
 些か不安定にも見えるが、昔から統一が早かったアーカート神聖帝国の方が南部のヘルムート王国を圧倒していたので、さほど問題になっていない。

 後にギガントの断裂よりも南部の領域を失うが、停戦によってヘルムート王国は北上をしなかった。
 共に魔物の領域の開放や未開地の開発に労力を割き、今ではあまり国力に差が無く戦争をするにもリスクが大きい状態になったからで、今の平和は両国の均衡によって支えられているというわけだ。

「御歳なので、そろそろご引退も考えておられるそうじゃ」

 もう一つ、ヘルムート王国の王位は死ぬまで放棄できないが、皇帝は病気や老齢による引退が認められている。  
 辞めても次の皇帝は選挙で決めれば良いのだし、その方が他の候補者達にも都合が良いからだ。
 なお、引退した皇帝は上皇と呼ばれて年金を貰って余生を送る。
 名誉はあるが、何の実権もない存在になるそうだ。

「そんな噂もあるので、他の公爵共は通商協定の改定や技術交流などの世話役で忙しいようじゃ」

 次の皇帝になるつもりなので、半分お遊びの魔法使いの実技披露会は女性であるテレーゼ様や年寄りの陛下に任せて、自分達は実利のある交易技術促進の方に集中しているのであろう。
 露骨な功績稼ぎともいえ、良くわかる話ではある。

「テレーゼ様は、ご出馬なされないのですか?」

「前の陛下は、我が曽祖父での。あまりうちの出身者ばかりが皇帝になるのも問題なのじゃ」

 あまり一つの家ばかり皇帝が出ても問題になるので、立候補の段階で多少の談合も行なわれるそうだ。

「それよりも次はヴェンデリンの番ぞえ」

「みたいですね」

「ヴェンデリン様。頑張ってくださいね」

「あまり派手なのは出せないけどな」

 ヴェルは競技場の真ん中に移動していた。 
 先ほど導師が魔法でマグマ状にしたのと同じ大きさの岩が置かれ、それに魔法をかけて破壊すれば良いというルールで、魔法の系統や種類は問わない事になっている。

 数秒後に旋風が発生して岩に直撃する。
 ただ大した威力には見えないので、一見岩には何の変化も起こっていなかった。

「失敗?」

「何も変化ないよな?」

 観客達が騒ぐが、既に魔法は無事に発動している。
 足元から拾った石を岩に軽く投げ当ててからその場を後に岩が一センチ角ほどのサイコロ状に切れてその場に崩れてしまう。

「すげぇ……」

「これが戦争なら、兵士がみんなサイコロ状にカットされるのか……」

 ヴェルの魔法の結果を知った観客達からは、歓声と共に畏怖の声が上がり始める。

「へえ。少しは俺の指導の成果が出ているな」

 均等にサイコロ状に切れた岩を見て、ブランタークさんは一応の合格点を与えていた。

「次は、ルークの番だ」

「今、行く」

「ルーク、頑張って」

「ルーク様、応援しています」

「頑張って」

 俺は、スズネたちの応援を背にヴェルと同じく杖を構えて、岩の前に立ち、風の摩擦熱で雷撃を発生させ、

 ピカ〜ン ドカ〜ン

 岩を粉々にした。

「すげえ」

 俺は、席に戻った。
 次はブランタークさんの番だ。
 彼も俺達と同じく杖を構えて岩の前に立つと氷弾ではなくて冷気で岩を極限まで凍らせてから、そこに小さな氷玉をぶつける。
 ほぼ絶対零度まで凍っていた岩は、氷玉が当たった衝撃で粉々に砕けて地面へと落ちていく。
 砕けた岩はその途中でダイヤモンドダストのような輝きを見せて、一種幻想的な光景を観客に見せていた。

「些かも衰えておらぬか」

「テレーゼ様。まだそんな年じゃないですよ」

「新婚じゃからの」

「それに拘りますね。テレーゼ様は……」

 貴賓席に戻ってきたブランタークさんにテレーゼ様が声をかけるが、その様子を見てアーカート神聖帝国側の魔法使いがヒソヒソと話をしていた。

 一応、敵国同士なので、不謹慎だとでも思っているのであろうか?

「次は、カタリーナだな」

「そなたの奥方の一人か。出来る魔法使いらしいの」

 軽く岩を包み込む竜巻魔法をかけ、それが止むと岩は細切れにされてその場から消えていた。
 極限まで切り裂かれて砂になったので、風で周囲に飛び散ってしまったのだ。

「準備運動にもなりませんわね」

「それは仕方が無いよ。まさか、戦いをするわけにもいかないし」

「ヴェンデリンの言う通りよの。そなた達が決闘で魔法を駆使すれば観客にも被害が及ぶであろうし、一応両国は停戦中での。下手な怪我人や死人はいらぬ対立を増やす要因ともなる」

「それはそうなのですが……」

 カタリーナとて、そのくらいの事は理解しているはず。

「次は、アーカート神聖帝国側か。それで、どうなんです?」

 テレーゼ様とカタリーナとの間に広がる微妙な空気を察知したブランタークさんが、話をこれから魔法を披露するアーカート神聖帝国側の魔法使いの話に切り替える。

「十年前は、アームストロングショックがあったからの」

「導師がですか?」

「あの男の規格外な魔力が知れ渡ったというわけじゃ」

 導師の魔力の成長パターンは、完全に大器晩成型である。
 二十年ほど前の導師の魔力は中級程度で、しかも彼は放出系の魔法が苦手であった。
 今は有り余る魔力で蛇の放出魔法を使うが昔は使えなかったそうで、親善訪問団に加われる実力を持っていなかったそうだ。

「そんな男が、十年後に化け物クラスの実力を発揮した。しかも、今も魔力が成長しているそうではないか。騒がれて当然じゃの」

 そんな理由で、前回は導師が注目の的であったそうだ。

「今回はそれに加えて、お主たちと『暴風』殿と『水棲』殿も加わっておる。治癒・浄化魔法特化ではあるが『聖女』殿と『聖女の直弟子』もおるし、ブランタークも相変わらずの実力を見せておる。ヘルムート王国の魔法使いの層は厚いの」

 実力者が集まっているのでそう感じるのかもしれないが、言うほどアーカート神聖帝国側も劣ってはいない。
 平均すれば、そう変わらないと思うのだ。

「うちも、この十年でそれなりに実力者も出ておるからの。まあ、良く見ておくがよい」

 そうテレーゼ様から言われて魔法の実演を見学するが、アーカート神聖帝国側にも優れた魔法使いは多かった。
 国家の威信もあるので、数を揃えたのであろう。
 筆頭魔導師であるブラットソンさんから始まり、他の魔法使いも中級の上程度の魔力を持つ者が多い。
 そして後半に入ると会場が大きな歓声で包まれていた。

「ピーチュ四兄弟だ!」

「四兄弟が出るぞ!」

「有名人なのですか?」

「然り。ピーチュ四兄弟は、今の帝国で最も有名な魔法使いじゃからの」

 ヴェルの問いに、テレーゼ様が頷きながら答える。

「兄弟で魔法使いなのですか」

「正確に言うと四つ子じゃの」

 魔法の才能は遺伝しないというのは実は少々誤りなのである。このことは、カタリーナたちの魔力が突然増えたことで判明したれっきとした事実である。なぜ誰も遺伝子を調べようとしなかったのか謎であるが、エリーゼたちの遺伝子のとある部分がものすごく活性化していたのであった。俺たちにも調べたら同じ遺伝子があったのでこれが魔力の才能なのは間違いなかった。そして魔法が使えないコリンナやカルラにも協力してもらったのだが、カルラとコリンナにも似た遺伝子があったのであった。他にも幾人かに協力してもらい、いくつかの事実が判明したのであった。尚、見返りに天地の森の果物を手渡した。
 なので、ピーチュ四兄弟は四つ子なので、同じ才能を持ち魔法を使えるというのだ。

 会場に姿を見せた四兄弟は一卵性の四つ子のようで、確かに四人とも同じ顔をしている。
 黒い髪に黒い瞳だが、日本人顔というわけでもない。
 西洋系の顔でそれほど容姿に優れているわけでもなく、ハッキリと言えば普通の顔。
 年齢は十八歳くらいに見え、身長は175センチくらいで痩せ型、どこにでもいる普通の青年に見える。
 四人ともローブを着ていたが、なぜかその色は赤・青・黄・緑と全員が違う色であった。
 それも鮮やかな原色系で目立つ色のローブなのだ。

「(戦隊物みたい……)」

 彼らを見て一番最初にイメージしたのは、前世で子供時代に見たヒーロー戦隊物のテレビ番組であった。
 一人足りないとは思う。

「あの四つ子は、それぞれに得意な系統魔法が違うのでの」

「そうなのですか」

 魔法の才能は遺伝子も関係しているようであったが、同じ遺伝子なのに得意な魔法の系統が違ったりする。
 もしかすると、そちらは後天的な原因で変わるのかもしれない。

「長男のアインスは、火の系統が得意であると聞いておる」

 赤いローブを着た青年が杖を振るうと火炎が岩を包んでからマグマ状に溶かしてしまう。

「次男のツヴァイは、水の系統じゃの」

 青いローブを着た同じ顔の青年が杖を振るうと、水のカッターで岩をズタズタに切り裂いてしまう。

「三男のドライは、土の系統魔法が得意じゃ」

 この四兄弟の名前は、全てドイツ語の数字からきているようだ。
 この世界にドイツ語があるのかは不明であったが、人の名前はドイツ系が多いので不思議ではない。
 黄色のローブを着た青年は、高速の岩弾を多数ぶつけて岩を砕いてしまう。

「最後に四男のフィーアじゃの」

 緑色のローブを着た青年は、風のカッターで岩をズタズタに切り裂く。
 なるほど、なかなかの実力の持ち主である。

「我が国も、それなりに粒は揃っておるわけじゃ」

「四男のローブが緑色なのは、風だからと言って青系統にすると次男の青と被るからかな?」

「お主は、しょうもない事を気にするのじゃな」

 四人で全ての魔法実演は終わりを向かえ、観客からは大きな歓声と拍手があがる。
 国に仕えている魔法使い達が凄腕ならば、今の平和は長く続くと思っているからであろう。
 我が国の導師が強力な抑止力であると共に、あの四人を筆頭とした粒の揃った魔法使い達はアーカート神聖帝国の強力な抑止力というわけだ。

「……」

「あの連中とは、顔見知りというわけでもないと思うのだが……」

 実演を終えた四人が俺に視線を合わせてきたので、ただそれだけが気になってしまうのであった。



「ヘルムート王国にも優秀な若い魔法使いが現れたようだの」

「確率論的から言えば、両国の人口比を考えると同じ数くらいは出てきますから」

「若いのに、うちの内務大臣のような事を言うの。面白い子だ」

 その日の夜は、皇帝陛下主催の晩餐会が行なわれていた。
 親善訪問団の中から選ばれた人のみが招待され、その中には俺とヴェルと導師も入っていた。
 スズネは俺の正妻なので同じく招待されていた。ヴェルの正妻でもあるエリーゼも同じく招待されていた。他に聖女の弟子枠でハクカ、暴風であるカタリーナ、水棲でセイが招待されていた。リッド達は限られた招待客しか入れない皇宮パーティーには出られない。
 その下の迎賓宮で行なわれる身分が低い招待客専用のパーティーに出席している。

『護衛役は必要だと思うんだけどな』

 リッドが愚痴を溢していたが、皇宮でのパーティーに護衛を伴うのは禁止だそうだ。
 少し危険な気もするが、国内外の大切な招待客に何かあればアーカート神聖帝国の威信は地に落ちてしまう。
 ヘルムート王国側も、ここで国を代表している自分達が怯えてパーティーに出席しなければ臆病者のレッテルを張られてしまう。
 この二百年間で特にトラブルも起こっていないそうで、リッド達には迎賓宮でのパーティーを楽しむようにと言っていた。

「陛下。ご歓談中のところを申し訳ありませんが……」

「もう時間か。これでも皇帝なので、声をかけねばならぬ所が多くての。バウマイスター伯爵はこの国を楽しんでいってくれ。テレーゼがそなたを気に入っているようだから、案内でもさせるがよい」

 立ち去る陛下を四人で見送ると今度は先ほどの四つ子の魔法使いが近付いてくる。
 あの色分けされたローブ姿のままであったが、魔法使いにとっては正装なので別に問題ない。
 スズネとハクカは女性なのでドレス姿になっていたが、俺は、新しい綺麗なローブに着替えてそのまま出席していた。

「お初にお目にかかります。バウマイスター伯爵殿、そしてファブレ伯爵殿。私の名は、アインス・ジーモン・ピーチュと申します」

 赤いローブを着た四兄弟の長男アインスは、自分たちに続けて三人の弟達を紹介していた。

「これはご丁寧に。ヴェンデリン・フォン・バウマイスターです」

「ルーク・フォン・ファブレです」

 確かアーカート神聖帝国では、お抱えの筆頭魔導師が黒で、上位者が灰色、見習いや下級者が白色のローブを着ける決まりであったと聞いていた。

 なのに、この四人は特別な色のローブが認められている。
 それだけの実力者という事なのであろう。

「話に聞くと竜を退治したり、一万人の軍勢を瞬時に戦闘不能にしたとか?」

「一部大げさな噂もあるようですね」

 一万人の軍勢を戦闘不能にしたのは、ブランラークさんとカタリーナとヴェルの4人で成した成果であった。
 なので、そこは間違いであると訂正する。

「素晴らしい成果ですな。同じ魔法使いとして私も頑張らなければと思いますよ」

 アインスも他の兄弟達も同じ顔で俺たちの功績を褒め称えていた。

「ですが……。そのくらいならば、私達にでも十分に可能でしょう」

 しかし、すぐに話の流れが変わってしまう。
 四人は、自分達でも竜退治くらいなら余裕で出来るのだと少し顔を歪めながら話していた。

「(ええと……。対抗心? 嫉妬?)」

 どちらかはわからないが、あまり良い性格はしていないようである。

「我らは子供の頃から、帝国の秘蔵っ子と呼ばれていましてね」

 どんな生まれかは知らないが、四つ子が生まれて全員が上級の魔力を持つ魔法使いなのだ。
 帝国としても、是非に囲いたかったのであろう。

「そのせいで、討伐などに出させて貰えなかったのですよ」

 別に聞きたくもないのに青ローブの次男ツヴァイが話を続ける。
 才能のある若い魔法使い達なので、最悪死ぬ可能性もある魔物の領域の解放などには使い難かったのであろう。
 両国の人口と魔法使いが生まれる比率が同じならば、在野にいる高位の魔法使いに依頼すれば良いのだ。

「当然、やれと言われれば余裕ですがね」

「まあ、そうでしょうね」

「認めるのですか?」

「はい」

 両国で魔法使いが生まれる比率が極端に違うという話も聞かないので、ヘルムート王国の魔法使いに出来ればアーカート神聖帝国の魔法使いでも可能であろう。

 俺はそのように思っていた。 

「(というか、こいつらは何を言いたいんだ?)」

「我らも、これからはバウマイスター伯爵殿やファブレ伯爵殿に負けないようにしないとな」

「すぐに追い抜きますとも」

「はあ……。そうですか……」

 それから暫く、彼らは自分達の魔法がいかに優れているかとか、期待されているからこそ秘蔵されていたのだという話に終始していた。

「(貴族って、こんな下らない話を長時間聞かないと駄目なのかね?)」

 心の中で欠伸をしたフリをしながら、表面上はにこやかに四兄弟の話を聞いていた。

「じきにバウマイスター伯爵殿やファブレ伯爵殿をも超える功績を立てる事になると思いますよ。正直、少し悪いとは思うのですが……」

「そうですか……」

 『頑張って』というと怒りを買いそうであるし、『負けませんよ』とか言うのはキャラに合わない。
 曖昧な返事になってしまったが、彼らは俺たちにベストな回答など望んでいないようだ。
 話すだけ話すと別の来賓の下へと向かってしまう。

「あの方々は、いったい何でしょうか?」

「さあ?」

 スズネの疑問の声に俺も彼らが何が言いたいのかさっぱりだ。
 義務で出たので特に面白くもなかったパーティーが終わり、俺達は迎賓館へと戻る。



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