様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「おおっ! スタッドブルクにも劣らない大きさだな」

 それから一週間後。
 俺達は王国政府が準備した大型魔導飛行船の甲板上でアーカート神聖帝国の首都バルデッシュを一望していた。
 資料によるとバルデッシュはスタットブルクよりも広さも人口も少しだけ上であった。
 見える建物などはヘルムート王国風の物が大半で差異は少なかったが、一部に地球で言う所のイスラム風の建造物や、インド風、中華風、そして和風に見える建物などもある。

 どうやら、アーカート神聖帝国は色々な文化がごっちゃになっているようだ。

「多民族文化なのかな?」

「みたいね。アーカート神聖帝国は、沢山の小国が統合して成立したと書いてあるわね」

 セイが、『ブライヒレーダー辺境伯バルデッシュ紀行』に書いてある内容を教えてくれる。

「選帝侯の称号を持つ七公爵家からも皇帝が選出されるのは、その名残りみたい」

 一応、中央にも皇族家が存在しているが、皇族家出身の皇帝が生まれるのは三〜四回に一回くらいだそうだ。
 あとは、貴族議会に所属する議員による投票で、立候補した選帝侯の中から選ばれる。
 一部に選挙制度が存在しているわけだが、これはヘルムート王国ほど中央の力が強くない事の証明でもあった。

「国によって色々と事情があるか」

 それからすぐに大型魔導飛行船はバルデッシュ郊外にある港に到着していた。
 船を降りるとアーカート神聖帝国からの出迎えを受ける。
 軍楽隊がヘルムート王国の国歌を演奏し、多くの貴族達が次々と歓迎の言葉を述べる。
 こういう部分は、地球の国家とあまり変わりはないようだ。

「今回は、魔法使いが強化されているようですね。アームストロング導師殿」

「若い才能が芽吹き始めたというところであろうか。ブラットソン殿」

「竜殺しの英雄殿たちですか。お若いですな。おっと失礼。アーレイ・ブラットソンと申します。一応、この国の筆頭魔導師をしております」

 俺を含めた魔法使い二十名ほどのグループにアーカート神聖帝国側の魔法使いが声をかけてくる。
 灰色のローブを着たロマンスグレーの髪をオールバックにした六十歳くらいの痩せ型の老人で、自分を帝国の筆頭魔導師であると自己紹介していた。

 魔力の量は、ブランタークさんよりも少し多いくらいであろうか?

 見た感じでは、かなりの実力を持っているように見える。
 彼もブランタークさんと同じく、『器用で上手い』魔法使いなのであろう。

「しかし魔法使いの数が多くないか?」

 ブラットソンの視線は、俺とヴェルと一緒にいるハクカ達に向いていた。



 実は行きの魔道飛行船の中でも一部の魔法使い達が五月蝿かったのだ。

『さあ? なぜなんでしょうかね? 俺が知りたいくらいですよ。普通に器合わせはしましたけど』

 ヴェルの妻の魔力が増えた謎に魔法使い達は興味津々なようであった。

『突然の器合わせで魔力量が増えるのか?』

『試してみれば分かるか』

 ためしに器合わせしたのだが、ハクカとスズネとセイとアスナが俺と魔力量が一緒になったぐらいなのだ。全員がぐったりして俺にもたれかかり理性が勝利するのが大変だったのである。

『全員が魔力成長中だったから話にならないから』

『俺か』

 リッドで器合わせをしたのだが、全く上がらない。

『導師と器合わせをしても変わらないだろうし』

『さあ、ルーク伯爵よ』

『やればいいんですよね』

 俺は、導師と器合わせを行った。
 導師も俺と魔力量が一緒である。

『他に試せそうな人は』

 俺達は、1人の男に視線を集中させた。

『俺か』

 ブランタークさんである。
 近くにいるヴェルとブランタークさんとエルが器合わせをしたのだが、全く魔力量は上がらなかった。

『なるほどな』

 俺は、エリーゼを調べ、次にエルを調べたのであった。

『あの・・・ルークさん・・・』

『ああ・・・いくつかわかったことがある』

 色々、調査をしたらいくつか分かったことがあった。
 調査内容をしゃべる前にアーカート神聖帝国に到着したのでいえなかったのであった。

「実は、妻達も混ざっていますから。正式な団員ではありませんので」

「そういえば、婚約者に『聖女』殿と奥方に『暴風』殿がいましたか」

 やはり他国とはいえ、有名な魔法使いの情報くらいは事前に調べているようだ。
 俺の妻は、スズネ、ハクカ、ヴィルマ。婚約者が、セイ、アスナである。
 ヴェルの正妻は、カタリーナ、ミリィ、妾は、イーナ、ルイーゼ。婚約者にエリーゼがいる。
 エリーゼと結婚してない理由にいくつか挙げていたけどね。

『う〜ん、なんかおかしいな』

『はい』

 スズネも頷いていた。

『魔物の暴走の後始末があったのは確かでしょうがその理由はホーエンハイム枢機卿の理由よね』

『婚約ラッシュは、バウマイスター領の都合なんだっけ』

『ああ』

『貴族の慣習・・?』

 ハクカが疑問の顔を浮かべながら言う。

『正妻が結婚して子供が出来てから側室を迎えるという話か』

『カタリーナとイーナとルイーゼが結婚しているから違うんじゃ』

『そっか』

『ルイーゼたちの魔力があがっていることに原因があるのか?』

『そうね。魔力が何かしらの方法で増えるなら披露宴を遅らせるのも無理もないわね』

 こんな考察がたっていた。
 ルークたちの考察は、ほぼ当たっていたが、1つだけ抜けていたのはアマーリエに対するヴェルの対応だったりした。宛がい女なので俺達は、とっくに終わらせているものだと思っていたのだ。

「魔法使いの方々への出迎えや滞在中のフォローなどは、私が実務責任者になっておりまして」

 忙しい文化・技術交流や通商関連の団員達は、専門の役人や貴族達が行なうようだ。
 彼らは時間が惜しいらしく、すぐに移動を開始していた。

「我らは、明日の魔法のお披露目以外は暇ですからな。それほど急ぐ必要もありませんし」

「ブラットソンよ。そろそろ妾も紹介してくれぬか」

「これは失礼しました。テレーゼ様」

「妾は魔法は使えぬが、お飾りでも最高責任者なのでな。そなた達の来訪を心より歓迎するぞ」

 ブラットソンさんの後ろから姿を見せた女性は、誰が見ても高貴な身分である事がわかる人であった。
 喋り方がその物であったし、服装や見た目もそうだ。
 身長は百七十センチほどで、多民族国家であるアーカート神聖帝国らしく、ヘルムート王国では見た事が無い褐色の滑らかな肌が特徴の肉感的な美女である。
 くすんだ金髪を肩まで伸ばしている彼女は胸はエリーゼぐらいかもしれない。 

「妾は、テレーゼ・ジークリット・フォン・フィリップ公爵と申す。一応選帝侯ではあるが、皇帝には興味が無いの」

「女性当主なのですか?」

「然り。我が国では、認められておるからの」

 アーカート神聖帝国では、女性の皇帝や貴族家の当主が認められていた。
 これは、セイが持参した『ブライヒレーダー辺境伯バルデッシュ紀行』にも書かれている事実だ。

「そういう文化の違いを楽しんでこその親善訪問であろう? もしかするとバウマイスター伯爵殿はそういう風習が許せない口かな?」

「いえ。そういう事は無いですね」

「簡単な考えとして、魔法使いは魔法が使えればよいわけでして」

「領主は、領地の統治が出来れば良いと?」

「性別や年齢は関係ないでしょう」

「それもそうじゃの。じゃが、それ故に妾はここの担当になったわけじゃが……」

 選帝侯の中では女性当主はフィリップ公爵だけらしく、他の男性主体の我が国の団員の担当にすると予想外の軋轢が起こるかもしれない。そう考えられて、こちらの担当に回されたそうだ。

「魔法使いは、魔法が使えないと意味が無いですから。そこに、男も女もありません」

「そうじゃの」

 魔法使いは、本能的な部分で性差別をする人が少ないと言われている。
 ただ、生まれた家柄が高いとそうでもないし、実際に王国で雇われている魔法使いには男性が多い。
 今回の親善訪問団の魔法使いの大半は男性であった。
 実はもう一つ、女性の方が実利に聡いので、給料や社会的な身分が安定しているだけのお抱えよりも稼げる冒険者稼業に進む人が多いという理由も存在しているのだが。
 女性魔法使いの多くが、結婚するまでなるべく稼いでから、あとは子育てをしながら出来る範囲で仕事をするという選択肢を取る事が多かった。

「ここで話ばかりをしていても時間の無駄じゃの。宿舎に案内するから、暫く休んでから昼食会に招待したいと思う」

 彼女の案内でバルデッシュの中央部にある皇宮近くの迎賓館へと馬車で移動する。

「馬車の乗りながらファブレ領を視察するのも悪くないか」

「それは、恥ずかしいかな」

 ハクカが言う。

「そうでしょうか?」

 スズネが疑問の顔で言う。
 馬車が迎賓館に到着し、出迎えの使用人や執事達によってそれぞれの部屋に案内される。
 俺は伯爵であったので、結構広くて質のいいものが使われた部屋に案内されていた。
 ただ一つ気になる事は、全員隣同士ではあるがハクカ達にも個室が与えられた点である。

「夫婦なら同室じゃないのかな?」

 部屋に荷物を置いて暫く休んでいると執事が昼食会が始まると言って迎えに来ていた。
 昼食会での席順だが、主催者で所謂お誕生日席に座っているテレーゼ様の隣にヴェルがいた。
 反対側の隣には導師が座り、その隣は俺が座った。
 続けて隣にスズネが座っていた。スズネの隣にブランタークさんが座っていた。

「それでは、乾杯するとしようかの。両国の永遠の友好を願って。乾杯」

「乾杯!」

 テレーゼ様の指揮で乾杯が取られ、あとは話をしながらの食事の時間となっていた。
 メニューは魚を使った料理のフルコースで、これは海の幸が豊富な北方の料理であったはずだ。

「妾のフィリップ公爵領は、北方に存在しておる。故に北の海の魚を使った料理が有名じゃの」

 魚を食べ慣れているだけあって輸送や処理も完璧であり、全く生臭くなくて美味しかった。

「気に入って貰えたかな? バウマイスター伯爵」

「はい。私は、魚も好きですから」

「それは良かった。しかし、導師は変わらぬのぉ」

「某はまだ未熟な身故に年など取っておれませんからな」

 普段はアレであったが、さすがは法衣子爵家の当主。
 完璧なテーブルマナーで料理を食べながら、テレーゼ様と話をしていた。

「テレーゼ様は、お美しくなられましたな」

「ブランタークは、よもや妾を口説くつもりかえ? 新婚の身で相変わらずよのぉ」

「いえいえ。そんな大それた事は」

「ブランタークが結婚するという驚愕の変化に比べれば、妾の成長など自然の摂理であろうよ」

「テレーゼ様は相変わらずですな」

 十年ぶりだと言うのに、この三人はかなり親しく話をしている。

 何か思い出深い出来事でもあったのであろうか?

「十年前は、妾も子供での。公式歓迎行事以外は暇なので、この二人に遊んで貰ったのじゃよ」

 二人が護衛役を務めて、普段テレーゼ様が行けないような観光地などに連れて行って貰ったそうだ。

「随分と無茶をしましたね」

「言っておくが、俺は最初は止めたんだからな」

「何となく想像はつきます」

 こういう遊びでノリノリになるのは、間違いなく導師の方であろう。 
 ブランタークさんは止め切れないので、ならばせめて安全を確保しようと護衛に付いたのが真相だと思う。

「おかげで、妾は安全に遊びに出かけられたというわけじゃ。本当に魔法使い様々じゃの。ところで、一つ尋ねてもいいかの?」

「何でしょうか?」

「この中で一番魔法に詳しいであろうブランタークに聞くのじゃが。前に不思議な出来事があっての……」

 それは、テレーゼ様がいつものように領内の視察に出かけた時の事であったという。

「ここ数年、北方の海の幸が全国で大人気での」

 鮮度を保つ保存方法の普及に輸送効率のアップもあって、バルデッシュも含めて取引量が増えているそうだ。

「輸出も好調での。じゃが、ただ獲ってばかりいれば漁獲量が減ってしまう」

 獲って良い魚の大きさの制限や禁漁期間の設定、魚礁の設置や簡単な養殖技術の開発に密漁者の摘発などだ。
 力を入れて行なっているので、現場の視察を良く行なっているそうだ。

「あれは、船に乗って沿岸の漁場の視察を行なっている時であった」

 突然、テレーゼ様の下着が忽然と姿を消してしまったそうだ。

「妾が脱いだのを忘れたのなら問題ないのじゃが、生憎と妾はまだボケが始まる年でもないからの」

「不思議な事もあったものですね……」

 その言葉を受けて魔導ギルドの人間が表情を目まぐるしく変えていた。

「まさか船の上で換えの下着も持っておらぬでの。帰りはスースーして堪らなかったわ。どう思う? ブランターク」

「何か転移か召喚系の魔法ですかね?」

「やっぱりの。ブラットソンもそう言っておったわ。しかし、不思議な事もあるものじゃの」

「本当に不思議ですね」

「そうだな。伯爵様の言う通りだ」



 歓迎会も終わったので

「観光に行こう」

「楽しみです」

「ルーク様。お腹が空いた」

 スズネが俺の手を引き、隣の手をハクカが握り、迎賓館を出て町中へと移動していく。

「まずは、この近くで評判のジェラート屋に行こうか」

「はい」

 3人で手を繋ぎながら本に記載されていた店へと向かう。
 俺の後ろには、アスナ、ヴィルマ、セイ、カルラ、リッド、ファラがそれぞれいた。

「このオレンジのジェラートは美味しいわね」

「キャラメルのも美味しいよ」

「もう一つ欲しい」

「バニラも美味しいです」

「リッド、リンゴ味のジェラートを美味しい」

「へえ〜・・・本当だ」

「ルーク、イチゴ味美味しいよ」

 ハクカに差し出されたイチゴ味をなめ取る。

「いけるな。ハクカ」

 俺は、お返しにブドウ味のアイスを差し出す。
 ハクカが、ブドウのアイスをなめる。ハクカの舌がブドウのアイスをなめ取る。

「ルーク様。メロン味も美味しいです」

 スズネが差し出してきたメロンのアイスをなめる。
 俺は、スズネにブドウのアイスを差し出し、スズネもブドウのアイスをなめ取る。
 追加でバニラを注文し、アスナ、ヴィルマ、セイのそれぞれのアイスを食べさせあう。
 カルラは無言でバニラをなめながら微笑を浮かべていたので美味しいのだろう。

「カルラさん・・美味しかったか」

「はい」

 カルラが微笑を浮かべながら返事をしたのであった。
 俺は、バニラ、イチゴ、メロン、りんご、キャラメル、ブドウなどのアイスを大人買いをしていく。
 観光は続き、ケルン大聖堂やポトマック運河などの見物をして、記念写真を取っていく。

「魔導カメラ・・・久しぶりでもないよね」

 ハクカがいう。

「結婚式の時に取ったからね。スズネやヴィルマやハクカのドレス姿もとってあるけどね」

「恥ずかしいです」

 スズネとハクカの代わりにアスナとヴィルマが代わりに手をつないでいた。
 次にセイとスズネと手を繋いで歩いていく。



 観光が終わり、部屋に戻り、寝ることにした。
 今日は初日で疲れているからハクカ達とそういう事は無しという風に決めていた。
 それに、ここがよそ様の家という事情もある。
 気にしないで奥さんや愛人と楽しんでいる親善訪問団員も多いそうだ。



Menu

メニューサンプル1

メニューサンプル2

開くメニュー

閉じるメニュー

  • アイテム
  • アイテム
  • アイテム
【メニュー編集】

編集にはIDが必要です