様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 バウマイスター伯爵家領主館とブライヒレーダー辺境伯領主館の広大な庭で『大お見合い会』が始まっていた。
 バウマイスター伯爵家領主館で行われている『大お見合い大会』は、バウマイスター伯爵家とファブレ伯爵家に仕える独身の家臣達と彼らと結婚したい貴族の子女が、食事をしたり話をしながら良い相手を見つける。

 参加資格は俺が認めた者達で、実は既婚者も含まれている。
 幹部か幹部候補のみであったが、大身の陪臣になるのだから複数の妻は当たり前だと言われて強引に参加させられている者も多かった。

「しかし、凄い参加者だな」

 王都〜ブライヒブルク〜バウルブルク間の魔導飛行船の経費をバウマイスター伯爵家とブライヒレーダー辺境伯家とファブレ伯爵家の負担にしたので、沢山の若い女性が参加していた。


 そして女性達に囲まれているエル、8歳の娘と一緒にいるローデリヒ、エドガー軍務卿からの手紙を持参した少女達に囲まれているトリスタン、ヘルタニア渓谷の開発で忙しいブライヒレーダー辺境伯からの手紙を持参した少女たちに囲まれているモーリッツとフェリクスたちも参加していた。

 彼らは日帰りで、俺が瞬間移動でここまで連れて来ていた。
 ちなみに帰りは確実に奥さんになる人を連れて帰れと親から釘を刺されているらしく、若干顔を引き攣らせながら女性達と話をしていた。

「あの二人は、暫くヘルタニア渓谷から動けないからな」

 大規模なミスリル鉱床があるファブレ伯爵家の金蔵なので、その開発と防衛に責任重大であったからだ。
 今日中に奥さんを決めて、現地で式をあげる。
 これが既に決まっていたのだ。

「アスナは何か食べたい物あるか」

「ルーク、フルーツが食べたい」

 俺は、アスナのためにフルーツを取ってきて、食べさせた。
 俺は、恥ずかしさから頬を赤くし、アスナも頬が赤くなっていた。
 それを見ていた

「ルーク様・・・あ〜ん」

 スズネがフルーツを差し出してきた。
 俺は、スズネのフルーツを食べた。俺もお返しにスズネにフルーツを食べさせた。

「ルーク」

 ハクカもフルーツを差し出してきたので、食べた。
 お返しにハクカにフルーツを食べさせた。

「ルーク君、はい」

 セイもフルーツを食べさせてきた。
 俺もセイにフルーツに食べさせた。

「ルーク様」

 ヴィルマも参戦し、フルーツを食べさせあった。

「あとは……」

 何気に若い神官も多かった。
 神官が結婚禁止なのは極一部の宗派だけなので、ここで結婚相手を見つけて教会の仕事を手伝って貰うつもりなのだ。
 あとは、結婚式の予約を取るという商売上の話もあった。
 大変に商売熱心と言えよう。

「何とも欲に塗れたお話だな」

「ブランタークさん。残念ですが、人ごとではないのでは?」

「わかっているけどよ……」

 ブランタークさんの後ろには、多くの若い女性が待ち構えていた。
 今回の大お見合い会では、花嫁候補を輸送する大型魔導飛行船の代金はブライヒレーダー辺境伯家とファブレ伯爵家とバウマイスター伯爵家と折半であった。
 なぜ折半なのかと言えば、この大お見合い会にブライヒレーダー辺境伯家の人達も参加しているからだ。
 男性は妻を、女性は夫を探しにだ。

 そして彼らを引率するリーダーは、今をときめくブライヒレーダー辺境伯家の筆頭お抱え魔法使いであり、陪臣としても地位が高く、しかも未だに独身のブランタークさんであったというわけだ。

「俺。このまま、死ぬまで独身でいたいんだけど……」

 半世紀も独身でいたので、今さら結婚などしたくないのであろう。
 それに彼は、文字通り独身貴族なのだ。
 元々資産家なのに俺達と組んで色々と仕事をしたらまた資産が増えている。
 仕事を終えて家に帰ると、そのまま家でノンビリと酒を飲むか、ブライヒブルクの歓楽街に遊びに行ってしまう。
 一応、屋敷は持っているが、年配の女性をメイドに雇って掃除と洗濯を任せているだけらしい。

「気楽なお一人様生活がなぁ……」

 そんなブランタークさんの生活についにキレたのが、その主人であるブライヒレーダー辺境伯であった。



『いいですか。ブランターク……』

 年下ではあるが一家の主としては先輩の主君にブランタークさんは説教をされていた。

『仮にも我が家の筆頭お抱え魔法使いが歓楽街の常連では色々と風聞がですね』

『お館様だって、たまに行くじゃないですか』

『あれは、付き合いですから……。それに、私が行くのは綺麗なお姉さんがお勺をしてくれるレベルのお店でしょう?』

 ブライヒレーダー辺境伯によって、その先の娼館まで行っているのを咎められたようだ。

『しかも、エルヴィン君まで連れて行って……』

 王都でも、ブライヒブルクでも、エルまでそんな場所に連れて行った事を問題視していた。

『さすがに伯爵様は連れて行けませんからね』

『絶対に止めてください! 変な娼婦とかが、この子はバウマイスター伯爵の子ですとか言って騒ぎ始めたら、私が困るんですから』

 ブライヒレーダー辺境伯による謀略だと周囲の貴族が騒げば、せっかく良好な両家の仲に皹が入りかねないからだ。

『病気とか避妊とか、ちゃんと対応している高級店ですよ』

『そういう問題ではないのです。おっと、話が逸れましたね……』

 ブライヒレーダー辺境伯は、ブランタークさんに結婚をして子供を作り、その子に家を継がせるようにと命じたそうだ。

『あなたは気楽でいいかもしれませんが、あなたの死後が面倒なんですよ』

 ヴェルの師匠が死んだ時に、その財産を巡って多くの有象無象の詐欺師達が出てきた。
 それよりも資産が多いブランタークさんの死後となると、どれだけ手間がかかるか怖くて堪らないとブライヒレーダー辺境伯は語ったそうだ。

『今なら、子供が成人する頃でもあなたは元気でしょう?』

『さあて? どうなんでしょうかね?』

『魔法使いは、長生きな人が多いじゃないですか』

 確かに魔法使いには長生きの人が多い。
 大量の魔力が体に影響するからという説が有力だが、体力が資本の剣士や武道家と違って、年配の人の方が魔法の精度などが上がる人も多く、100歳を超えても現役の人も一定数存在していた。
 普通に生きるだけなら、150歳を超える人も珍しくないそうだ。
 ボケなければ仕事も出来るので、魔導ギルドや魔道具ギルドの上が詰まっている原因にもなっている。

『とにかくですね。陪臣家として相続を認めますから、結婚をして子供を作りなさい。大お見合い会ではうちの団長を任せますから、率先して奥さんを探すように』

『わかりましたよ。ところで、一ついいですか?』

『何です?』

『アニータ様は、どうなのですか?』

『子供が産めないじゃないですか。その前に本当に叔母上を妻にしたいのですか?』

『すいません。ただ言ってみただけです……』

『じゃあこうしましょう。もし今回のお見合い大会で相手が見つからなかったら、叔母上と形式だけでも結婚して、子供は養子を迎え入れる。私からすれば、厄介な相続問題が起らなければいいのですから。叔母上には、毎月お小遣いだけでも渡していただけたら・・・』

『絶対にお相手を見つけます』

 以上のような経緯があり、ブランタークさんは大お見合い会のブライヒレーダー辺境伯家団長兼参加者として今日はローブの胸の部分に名札を付けていた。
 フルーツを食べさせあっているとヴェルが壇上に上がり

「えーーーっ、頑張ってください」

 俺達は、ヴェルの一言でずっこけそうになった。
 遅れて拍手がなったので、俺達も拍手することにした。

 この名札はヴェルのアイデアで、これを付けている人は参加者ですよという合図でもある。

「なら、俺と話をしていても仕方がないですよ。ちゃんと奥さんを見付けないと」

「伯爵様には、婚約者様が6人もいるからなぁ……。言い返せない」

 ほぼ十代と二十代の参加者しかいない会場内で、一人だけ五十歳を超えているブランタークさんが名札を付けている。
 この光景がツボに嵌ったようで、イーナ達は突然の婚姻命令で困惑しているブランタークさんを見てテーブルに突っ伏して笑っていた。

「ブランターク様の御家の一大事なのですから」

 唯一常識的に窘めるエリーゼやセイですら、ブランタークさんから視線を外している。
 まともに見ると一緒に笑ってしまうからであろう。
 かく言う俺も名札を付けた彼を見ないようにしていた。

「お前ら、覚えとけよ……」

 とは言いつつも主君の命令なのでブランタークさんはお見合いに戻っていた。
 多くの女性に話しかけられるが、その中には二十代前半くらいの女性が多い。
 そろそろ賞味期限切れと呼ばれる年齢の人達が、資産家で年齢が高いブランタークさんに殺到していたのだ。

「助かったぁ……」

 同じく年齢が高めで、そういう女性が群がっていたトーマスが安堵の溜息を漏らす。
 彼は、二十二〜三歳くらいの綺麗な女性と端のテーブルで楽しそうに話をしていた。

「トーマスは、こういうところが如才ないよな」

「そうね」

 ファラも俺の意見に賛同していた。
 もう一方のブランタークさんは、砂糖に群がる蟻の群れのように多くの女性達に囲まれる。
 年齢は高めだが、資産家で、魔法使いで、実は彼もヴェルの師匠と同じく孤児出身で家族がいない。
 嫁ぐと問題になる舅・姑・小姑などの問題が無いので、それも人気を加速させているのだ。

「主君命令だから、何とか選ぶと思うけど……」

 続けて周囲を見渡すと同じく強制参加させられている俺の4人の兄達もいる。

 アンディ兄さん、グラム兄さん、リョウ兄さん、ルパン兄さん。

 みんな、多くの女性に囲まれていた。
 側室になる人を探しにきたのだ。
 
 近場を見るとカルラに話しかけるエルたち男性陣がいたのだ。
 カルラは、社交辞令での笑顔だが困った目を浮かべていた。
 仕方なしにカルラを右手で抱き寄せ、俺の腕の中で匿い男除けをする。

「いいなあ」

「そうですね」

「うん」

 ハクカとスズネとアスナが羨ましそうな声を上げる。

「ありがとうございます」

 カルラが深々とお辞儀をしていた。

「しかし、参加者じゃないのに話し掛けられるとはな」

「・・・エルが悪いんじゃ」

「ところで、エル」

「何だよ、ルーク」

「カルラさん、恋人がいるぞ」

「マジか。ルークまさかお前か」

「嫌、違うぞ」

「ルーク様、なぜそのことを」

「彼女から聞いた」

 カルラが俺の一言で納得したようだ。
 母親までごまかせるはずもないのだ。
 エルは崩れ落ちた。

「パーティー開始から三時間か……」

 時間が経つに連れて、次第にカップルも生まれてくる。
 たまに男子1人に女子2〜4人というグループもあったが、これもこの世界の貴族や陪臣の仕様だ。
 余裕のある人ほど奥さんの数が増える。
 地球の一夫一婦制を信奉する人達からは攻撃されそうであったが、金持ちや政治家が非公式に愛人を囲うのを考えると、ある意味潔いとも言えよう。

「みんな。フットワークが軽いな」

 ある程度相手が決まると会場から外に出かけていくカップルも現れ始める。
 まだ建設途上であるが、バウルブルクの町でデートのような事をしたり、自分の家や建設予定地に案内したりと。
 更に凄いのは、既に結婚するのを前提で荷物持参で来ている女性の多い事だ。
 相手が決まると、すぐにその人の家や官舎で一緒に生活を始めるつもりなのだ。

「おいおい。大丈夫なのか?」

「それなりの家の人は知らないけど、大半は『もう実家に帰って来るな。次に会うのは結婚式で』という人なのよ」

 イーナの言う通りで、うちやヴェルの血筋が良い幹部連中狙いの貴族子女はともかく、そうではない人を狙っている陪臣や一代騎士の娘などは排水の陣でもあるわけだ。排水の陣とは、『お見合い』で数多くの子女たちが荷物を抱えて排水される様子から名づけられた。

「可哀想だとか思って、沢山囲わないようにね」

「一人も囲わないよ」

 もしそんな話が漏れたら、架空可哀想話を持つ若い女性が殺到しかねない。

「イーナの中で俺がどれだけ好色扱いなのかは知らないけど、絶対にないから」

「本当に、心当たりはないのかしら?」

「さあてね」

 大お見合い会初日は無事に終了し、翌日は初日に仕事があった者へのフォローと自由行動日になっていた。
 参加者はみんな、それぞれにデートなどを楽しんでいるようだ。
 そして、早速、神官達と式の予定を相談している者達もいた。
 脅威のフットワークの軽さであったが、そう感じるのは地球の知識がある俺だけのようだ。

「ブランタークさんも相手を決めたみたいだな」

 一人の若い女性を連れて、彼はバウルブルクの町に出かけていた。
 若干目が死んでいるようにも見えたが、今までの夜の帝王生活ができなくなるので色々と思うところがあるのであろう。
 そして、失恋したばかりのエルであったが……。

「いかん……」

「まだ意識が半分飛んでいる!」

 ルイーゼの指摘通りにパーティー会場内の昨日と同じ場所で一人佇んでいたのだ。
 いくら女性が話しかけても全く答えず、目の焦点が合っておらず完全に目が死んでいた。
 あまりの異様さに話しかける女性がほとんどいないくらいだ。
 エルは今回のお見合い会のメインなのに、それが全く機能していないのだ。

「ヴェル。どうする?」

「今回はさすがに無理強いできない……。少し時間を置こう……」

 今回の大お見合い会によって、ファブレ伯爵家家臣と御用職人の独身率は大幅に下がる事となる。
 だがその中に、エルは入っていない事だけは明記しておこうと思う。

「俺は、カルラさんよりも素晴らしい女性と結婚するんだぁーーー!」

 失恋から一週間後、ようやく現実に戻ってきたエルが一人絶叫する。

「そういう夢のような高望みは、独身期間を長くしますわよ」

 そんなエルに、カタリーナが冷静にツッコミを入れていた。



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