様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 俺たちが話していると、すぐに別の魔導飛行船が来た。
 ヴェルたちが降りてきた。

「ようやく、交渉が纏まりそうな方の到着ですか」

「新ブロワ辺境伯ゲルト・オスカー・フォン・ブロワです。色々と面倒をかけて申し訳ない」

 王国から支給されたマントを着けたゲルトさんを見て、ブライヒレーダー辺境伯は心から安堵の表情を浮かべていた。

「それで、どうなっているのです?」

「毎日毎日、意地汚く値下げしてくれと五月蝿いんですよ」

 二人とも、この件では協調路線をとり始めていて、いい加減に嫌になっていたようだ。

「そうですか……」

「早速に交渉を始めましょうか」

 交渉が行われている大型テントに入ると、すぐにフィリップとクリストフが騒ぎ始めていた。

「叔父上!」

「私達の留守に反乱とは許しがたい! 縛り首も覚悟していただく!」

 今にも掴みかからんばかりの勢いであったが、それはゲルトさんが連れて来た家臣達によって止められていた。

「フィリップ、クリストフ。私は既に王家から襲爵を認められた身なのだが」

「そんなわけがないでしょうが!」

「そのマントは偽物ではないのですか?」

「クリストフ。お前は、陛下が下賜なされたマントを偽物と言うのか?」

「私も新ブロワ辺境伯の襲爵の儀には同席していましたしね」

「まだお疑いなら陛下に直接お尋ねしてみますか? 『私の叔父は、本当にブロワ辺境伯の爵位を襲爵したのでしょうか?』と。お尋ねしてもいいですけど、最悪、首が飛ぶ事も覚悟してくださいね」

「……」

 クリストフは、ヴェルの言葉を聞くとその場にうな垂れてしまう。
 そんな事を聞けば、陛下の権威を否定した事になる。
 たかが辺境伯の次男程度なら、簡単にクビが飛ぶであろう。

「貴様! 貴族として、恥ずかしくないのか!」

 残りのフィリップがヴェルに怒鳴りつけてくる。

「先に人の実家にちょっかいをかけておいて、自分が仕返しされないなんて幸運。本当にあると思っているので? 心ならずも貴族になってしまった以上は、貴族として動くしかないでしょうに」

「うちの者達を200名近くも殺しやがって!」

「掟破りはそちらが最初でしょう。なるべく殺さないようにどれだけ苦労したと思っているのです?」

「……」

「バウマイスター伯爵の言う通りですね。その気になれば、ド派手な上級広域魔法で、そちらは全滅でしたよ」

 ブライヒレーダー辺境伯の指摘にフィリップは気まずそうな表情を浮かべる。
 彼に従っていた家臣達は、次第に彼と距離を取り始めていた。
 どうにか新しいブロワ辺境伯に助けて貰いたい心境なのであろう。
 クリストフの方も次第に家臣達が離れ始めていた。

「我が家の資産であったヘルタニア渓谷を!」

「それもファブレ伯爵が大金と労力を使って開放しなければ不良債権でしょう? 報告は聞きましたが、7名の優れた魔法使いに牽制のための大軍と。そういう物を上手く揃えて作戦を行なうのが貴族だと私は思いますよ。軍人として優れているはずのフィリップさんが、そんなおかしな因縁をつけるのですか?」

「……」

 ブライヒレーダー辺境伯の指摘にフィリップはまた口を噤んでしまう。

「もうこの辺でいいでしょう。このお二方は、交渉に参加する権利すらないのですから」

「そうですね。彼らの処分はブロワ辺境伯殿の管轄でしょうし」

 今まで静かにしていたクナップシュタイン子爵の最終宣告により二人はゲルトさんが連れて来た兵士達によって身柄を拘束されていた。

「あとは、ゴドウィン以下の諸侯軍幹部も解放後に身柄を拘束」

 その後は、ようやくまともな交渉が行なわれていた。

「クナップシュタイン子爵、和解金は?」

「少々お待ちを」

 クナップシュタイン子爵がヴェルの方の計算をしていた。
 さすがに毎日、和解金を計算していたわけではないだろうからね。

「5億6926万セントになります」

「俺の和解金は」

「6兆1813億3904万セントになります」

「さて、値下げするべきかどうかだな」

「ファブレ伯爵!」

 肝心の迷惑金とブロワ辺境伯家の捕虜の引き取りをしてもらっていないのだ。

「後日、ファブレ領とバウマイスター領には迷惑料を支払いましょう」

「・・・後は、彼らの引き取りだけど」

「分かりました」

 ブロワ辺境伯によって、20人の捕虜が引き取られるのであった。

「値下げしても良いでしょう」

 俺たちは、新ブロワ辺境伯のために和解金を少し下げていた。
 新当主となった彼に手柄を与えて、早く東部を安定化させて欲しい。
 そうなれば、交易なども活発になって減額分など戻って来るのだ。

「とにかく疲れました……」

「書類でも見ながら居眠りをしていれば、ある程度のお金がいただける。夢のような立場だったのに……」

 紛争のせいで大損をしたブライヒレーダー辺境伯にバカな甥達の自爆で継ぎたくもない爵位を継がされたゲルトさん。

「得をしたのはファブレ伯爵やバウマイスター伯爵ぐらいではありませんか」

「少数人数でしたからね」

「さて、捕虜を返還して戻りますか」

 交渉が纏まり、捕虜が開放されて新ブロワ軍へと再編成される。
 最初はカルラが飾りでフィリップの牙城であった諸侯軍であったが、幹部達は全て捕らえられ、残った家臣達は新しいブロワ辺境伯を認めている。
 現状維持なら勿論、紛争に関わり過ぎて家禄が減少した者達もエチャゴ平原に作られた縛り首用の処刑台を見て逆らう気力すら無くしていた。

 その前に、もう紛争と捕虜生活に疲れていたのであろう。
 無表情で処刑台を見ている。

「フィリップ様! 私は、娘をあなたに嫁がせたではないですか!」

 従士長のゴドウィン以下八名は、叫びながら縛り首とされていた。
 これが王宮に対して弓を引いた侘びであった。
 両軍に公開となったのは、少しでも俺とヴェルとブライヒレーダー辺境伯家側に納得して貰うためだ。

「些か数が少ないですけど、あとの幹部連中も役職剥奪に減給ですからね。さて、見ていてあまり気分の良い物でもありませんし、帰りますか」

 縛り首となってプラプラと揺れている戦犯達を確認してから、俺達はようやく自分の領地へと戻れる事となる。
 魔導飛行船で飛び立ってから下を見ると処刑台ではまだゴドウィン達の死体がプラプラと揺れている。
 俺は視界を逸らして、すぐに忘れようと努力するのであった。



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