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「さて、そろそろ突入を開始しますか」

 最後の会議の後に作戦はスタートする。
 ヘルタニア渓谷の周囲十箇所から軍勢が境界線を出たり入ったりしながら地上のゴーレム達を挑発し、その注意を最大限に引いたところでロックギガントゴーレムに一番距離が近いポイントから7人で突入を開始する。
 最短距離で、最低限の空を飛ぶゴーレム達だけ排除しながら、一気にロックギガントゴーレムを破壊するわけだ。

「ブランタークさん。ここが最短突入ポイントですよね?」

「ファブレ伯爵様も『探知』しただろう? ご本尊は、ヘルタニア渓谷のど真ん中にいる」

 正確には、中央を走る断裂の一番奥のど真ん中である。
 そこの魔力溜まりに、足も無いロックギガントゴーレムが鎮座している。
 その大きさは百メートルを超え、前方の頭部と後方の尻尾は八本ずつある。
 十万体ものゴーレムを同時に操る巨大な人工人格の結晶と、低品位ながらも魔石を一日最大五千個も製造可能な装置を体内に納め、ヘルタニア渓谷に侵入した敵を全て排除する。
 古代魔法文明時代の天才魔道具職人イシュルバーク伯爵による、まるで生きているかのような防衛装置なのだ。

「頭と尻尾が八本ですか」

 動けはしないが、頭からブレスではなくて岩弾を発射し、尻尾も振り回して敵にダメージを与える。
 基本が岩製なので、前に戦ったミスリルゴーレムほど堅くはないが、時間が経つと再生するらしいので決して侮るわけにはいかなかった。

「昔に聞いた、『ヤマタの大竜』似ているのである!」

 日本神話に出てくる『ヤマタノオロチ』に似ているが、この世界にも頭が八つある竜の伝説は残っている。
 導師が知っているのは、冒険者関連の学校に行くと基本的な座学で教わるからだ。
 実在しているかについては、これは不明であったが。

「前から思ってたんだけど、頭が八つなら『ナナマタの大竜』なんじゃないの?」

「ルイーゼさん。そんな昔の伝承に文句を付けても仕方が無いではないですか。それよりも、そろそろ時間なのでは?」

 ルイーゼの屁理屈に、カタリーナがツッコミを入れていた。

「カタリーナの言う通りなんだけどさぁ」

 境界線の外にある岩山の尾根で7人で待機している間に、眼下では王国軍とファブレ家軍とバウマイスター家軍の混成部隊が引き寄せたゴーレム軍との戦闘に入っていた。

「おりゃあーーー!」

「エル。気合が入ってるなぁ。理由は邪だけど……」

 前線に立って秘蔵のオリハルコン製の剣を振るうエルにルイーゼは容赦なかった。
 エルだって、一番の目的は味方に被害を出さないために、剣の切れ味が落ちない自分が前に出ているはずなのだから。

「その理由とカルラさんに良い所を見せようとしている気持ちが鬩ぎ合っているのでは?」

「カタリーナも容赦ないな……」

「あの年の男なんてみんなそんな物だろう。ほら、そろそろいくぞ」

 十箇所を超える敵の侵入に対し、推定八万体のゴーレム達はほぼ外縁部に集まっていた。
 これを全て相手すれば全滅だが、そこまでする必要は無い。
 俺達が高速で飛行してロックギガントゴーレムを目指しても、既に外縁部に引き寄せられているので、作戦の邪魔にはならないからだ。
 ただ、空中の二万体はあまり動いていなかった。
 彼らは、空から侵入した敵にだけ対応するようだ。

「二万体かぁ……」

「普段はヘルタニア渓谷中に散っているからな。集合する前に急ぎロックギガントゴーレムを破壊するぞ。いいな?」

 全てを破壊する必要は無い。
 どうせロックギガントゴーレムが破壊されれば岩塊に戻るし、そんなに時間をかけていたら作戦は失敗する。
 ブランタークさんは、特に導師に念を押していた。

「その場に留まって、無双とかしないでくれよ。導師」

「一応、某もプロの冒険者なのであるが……」

 こういう場合、やはり経験豊富なブランタークさんの意見が尊重される。
 導師も年長者である彼の意見には素直に従っていた。

「念のためって奴さ。他のやつらもな」

「了解!」

「任せて」

「腕が鳴りますわ」

「ではいくぞ!」

 ブランタークさんの合図で、7人は『高速飛翔』によりヘルタニア渓谷へと突入する。


 陣形は、俺とセイがツートップで、その後ろをヴェルとカタリーナが、さらに後ろをルイーゼとブランタークさんが殿役を、追いかけてくるゴーレムを排除するために導師が務めていた。

「ブランターク殿。後ろに敵がいないのであるが」

「今の時点で追いかけられていたら失敗だろうに……」

 まだ突入間近なので、空中にいるゴーレム達はほとんど俺達に対応できていなかった。
 数体が前方に居たので、まずは魔法で槍状の竜巻を作って投擲する。
 命中したワイバーン型のゴーレムと、その周囲にいた数体が砕け散って地面へと落ちていく。

「魔力は節約しないと。カタリーナもな」

 古書の資料を元に完璧に作戦は立てたはずだが、何が起こるのかわからないので、魔力は出来る限り温存するのが作戦の基本となっていた。

「当然ですわ。私は、ヴェンデリンさんよりも魔力量が少ないのですから」

 続けて、カタリーナが前方に見え始めた十数体の大鷹型のゴーレム達に魔法を使う。

「トルネードブレイク!」

 『暴風』の名に相応しく、突然前方のゴーレム達の中心部に竜巻が発生し、彼らを上空へと巻き上げていく。
 竜巻の中でぶつかり合ったゴーレム達は破壊され、損傷して地面へと落下していた。

「凄いねぇ。ボクも何か攻撃したいけど」

「ルイーゼは、温存だ」

「ですよねぇ……」

 元々放出系の魔法は一切使えないので、ルイーゼの役割りはロックギガントゴーレムに強烈な攻撃を直接加える事にある。
 到着まで魔力を極力温存して、ロックギガントゴーレムに止めを刺す。
 これが、今回のルイーゼの仕事だ。

『渾身の力で、秘奥義を出しちゃうよ』

『何か期待できそうだな(やっぱりあるのかな? 秘奥義とか)』

『ヴェル。大いに期待したまえ』

 出撃前のルイーゼは、いつもの通りであったが。

「思ったよりも、ゴーレムが少ないな……」

 突入開始から十分ほど、ブランタークさんが首を傾げていた。
 古書によれば、さすがにこれだけ時間が経てば空のゴーレム達はもっと集まって来るはず。
 なのに、数体から数十体の集団を五回撃破しただけで、あまり前方に敵が見えなかったからだ。

「もしかすると……」

「もしかすると何です?」

「意外と人工人格さんが仕事をしているのかもな」

 更に十分ほど飛行を続けると、遂に目標のポイントに到着する。
 ヘルタニア渓谷を走る巨大な断裂。
 その奥にロックギガントゴーレムが鎮座しているのだが、その上空には万を超えるゴーレム達が俺達を待ち構えていたのだ。

「ちっ! 俺達の目的を察知したか」

「あんなに数が多いと断裂に入れませんね」

 ロックギガントゴーレムは断裂の中にいるので、まずはあのゴーレム達を排除しないといけない。
 二万体の大半が集まっていると推測される上空には、空の青さがわからない密度でゴーレム達が集まっていた。

「ファブレ伯爵様。まだ想定内だ。やれ!」

「了解!」

 ゴーレム達に接近しながらも、俺は3個ほどの魔晶石を出して両手に握る。
 更に意識を集中させながら、極大上級魔法の準備を始めていた。
 一分ほどの溜めを行なってから、両手を前に出して魔法を発動させる。
 前のグレートグランド戦では二分かかったので、俺もそれなりに成長しているようだ。

「バーストトルネード!」

 詠唱の必要はないのだが、気分的な物と、みんなに発動のタイミングを知らせるためでもある。
 距離が離れたゴーレム達の中心部で発生させた巨大な竜巻は、数千体のゴーレム達を巻き込んで激しいうなりをあげていた。
 その中でゴーレム同士がぶつかって破壊され、暫くして竜巻が消えると、周囲の無事であったゴーレム達を巻き込んで地面へと落下していく。

「ルーク君は、こういう魔法の方が得意なのね」

「そうだな」

 相手がゴーレムなので、前の広域エリアスタンのように威力などに気を使う必要がないからだ。

「こちらを排除する脅威と認定したようですわね」

 四分の一ほどを一気に破壊されたので、ゴーレム達は俺達を排除しようと動き始める。
 半分の七〜八千体が、こちらに向かって来るのが確認できた。

「もう一発!」

 今度は、ドラゴンゴーレム戦で使った無属性の放出魔法を再び両手を前に出してから発射する。
 威力は落ちるが、命中すると後ろに吹き飛ばされて後方のゴーレム達に衝突して互いに砕けていく。
 密集していたのが仇になったのと、やはり数が優先であまり強くはないようだ。

「初めて見ましたけど、デタラメな威力ですわね」

 カタリーナも竜巻の魔法を連発して数千体を破壊していたが、彼女は予備の魔晶石をほぼ使い切ってしまったようだ。

「ですが、大分数も減って……。増えていませんか?」

 確か、五千体くらいまでは減らしたはずなのに、なぜかまた倍くらいにまで戻っている。

「魔石を元にもう復活したのか?」

「一日五千個でしたっけ?」

 古書の説明によると、ロックギガントゴーレムは一日五千個の魔石を製造可能で、お尻の部分から魔石を出すとてそれをゴーレムが持っていき、まるで生き物のように小さなゴーレムを生み出す。

 生まれた小さなゴーレムは、その辺の岩をくっ付けて大きくなる。
 そんな説明だったような気がしたが、損害が急激に増えるとある程度の過程は吹っ飛ばせるのかもしれない。

「材料もあるからな」

 先ほど派手にぶち壊して地面に落下したゴーレムの残骸があるわけだ。

「ブランタークさん?」

「時間をかけると、まずいかもな」

 魔石の精製は一日五千個が限界かもしれないが、造った魔石を保存可能ならば暫くは増殖し続ける可能性がある。
 ここは、作戦を急ぐ必要があった。

「断裂の奥からは巨大な反応が一つと数百個の小さな反応のみだ。突入してこっちを破壊した方が早い!」

「そうですね……。突入しましょう。導師!」

「任せるのである!」

 俺はもう一度無属性の放出魔法を放ってゴーレムの数を減らし、それと同時に導師がゴーレムの群れの中に突入していく。
 導師が『魔法障壁』を身に纏い、向かってくるワイバーン型のゴーレムの頭部に拳で一撃を加える。
 頭部が砕けたゴーレムは、そのまま地面へと落下していく。
 続けて、後ろから襲いかかるゴーレムを蹴りで粉砕し、別のゴーレムの尻尾を掴んで振り回して数体にぶつけて破壊する。

「物凄く強いよな。やっぱり」

「ですよねぇ……」

 魔法使いには見えないが、圧倒的に強いのは誰の目から見ても明らかであった。
 ブランタークさんも俺も、その強さに改めて驚いてしまう。

「上空のは、導師に任せて突入だ!」

「了解!」

 まだ数が完全に回復していない内にケリをつけるべきであろう。



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