様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 語り死人である師匠を浄化してから1ヶ月が流れた。
 僕は、残された師匠の遺品を見ることにした。
 魔法の袋に付いている小さな『魔晶石』に触れながら、微量の魔力を送る。こうする事によって、自分の脳裏に魔法の袋に入っている品物のリストが浮かんでくる。
 すると、その筆頭に師匠から僕への手紙というのが浮かんでいた。早速に袋から取り出して封を開ける。手紙には、こう書かれていた。まずは、最後の挨拶を簡単な物としたいので、この手紙を事前に認めておいた事。次に、この手紙が袋から取り出せたという事は、正式にこの袋の持ち主が僕に代わった事の証明であるという事をだ。

『事前に器合わせであなたの魔力の容量は広げてあります。それに私との僅かな期間の訓練でもあなたの魔力量は飛躍的に上昇しています。限界が来るまで決して鍛錬を怠ってはいけませんよ……』

 装備品は、自分の力で手に入れて欲しいので自分の装備品は燃やして欲しいと伝言が書かれてあったので、装備品類を燃やした。後に残ったのは、『魔法の本』『魔道具の本』『白紙の本』といった3冊の本と1つの木箱と釣竿とアティ師匠のローブぐらいであった。

『残った品は、あなたに渡す品です』

 師匠の遺品を受け取った。
 『白紙の本』を見てみると魔道具のレシピを記載するようにと書かれていたので、ありがたく魔道具のレシピを記載することにした。
 木箱を開けてみようとしたのだが、どうやら厳重に封印されてあって開かなかったので諦めた。アティ師匠が、封印を施すぐらいなので時期が来たらあけることが可能だと思う。



 今年で17歳になるアンディ兄さんであったが、彼は細身で腕っ節はイマイチな男であったが、イケメンだったし、僕の身を一番気遣って話しかけてくれる優しい兄でもある。

 領内のうら若きお嬢ちゃん達にも、もう少し年上のお嬢さん達にも、もっと上のお嬢様達にも人気があるらしい。
 実は、我がファブレ家の面子の顔の出来はあまり良くない。
 不細工というわけではないが、要するに普通な人が多いのだ。
 更に才能の面からしても微妙であろう。
 領地持ち貴族になるため、わざわざ王都から貧民達を連れてこの地に移住した初代は目端の利く人物であったらしいが、それ以降は悪愚な当主はいなかったものの、内政に戦争に魔物の討伐に大活躍という逸材はいなかった。

 父は、五年前の痛恨の失政である天地の森への出兵で失った多くの成人男性の働き手の分を補うべく、毎日、息子達と共に自ら農作業をする日々であった。

 当然、魔法など使えないし、剣などの騎士としての嗜みなども微妙な線であるらしい。
 むしろ肉の確保のために年に数回行う合同狩猟で使うメインウェポンとなる弓の方が得意という有様であった。

 そして、この傾向は、トニー以降の子供達全員の特徴でもあった。
 領内に天地の森があるものの別に中に入らなければ魔物が脅威になる心配もなく、ならば肉を確保するための弓矢の腕前を上げた方が役に立つという結論に至ったらしい。

 その天地の森に到達するには、何百キロにも及ぶ行軍が必要であったがのだ。

 なるほど、僕ばかりかアンディ兄さんの剣の稽古がいつもすぐに終わってしまうわけだ。
 騎士なのに剣を使う機会が少ないと言うかほぼ無いので、余計に訓練に身が入らないのであろう。
 もっとも毎朝一緒に訓練しているアンディ兄さんなどは、剣が苦手なので助かっているとも言っていたのだ。

 その分、アンディ兄さんは弓の腕前では領内では一番と言われるほどであったし、僕と同じく時間が空けば父の書斎で本を読んでいるので、ひらがなとカタカナしか読み書きできない他の家族とは違って、僕と同じレベルで読み書き計算が可能であった。

『もう少ししたら、王都に出て下級官吏の試験を受けるつもりなんだ』

 なるほど、彼は僕のように魔法ではなく、堅実に公務員の道を目指しているようだ。
 とまあ、こんな感じの我が家であったが、実はその家庭環境に大きな変化が生じようとしていた。
 トニーに、嫁が来るという話が父から成されたのであった。

「トニーの嫁は、テスタロッサ家のフェイトに決まった。来週には結婚式を行う予定だ」

 いつもの白パン、野菜と野菜スープ、ホロホロ鳥のロースト、自家製の山ブドウジュースとワインという僕のおかげで多少豪勢になった夕食の席で、父は家族全員にルパンの結婚を発表する。



「いよいよ、来たるべき時が来たか……」

 夕食後。
 兄姉弟四人のベッドが置かれている部屋で、ヘルムートとアンディ兄さんは、ベッドの上で自分の私物を纏め始めていた。
 こんな貧乏貴族家なので自分の持ち物は少なく、その作業はあっという間に終わってしまったのだ。

「アリス姉さん、アンディ兄さんとヘルムート兄さんは、どうして荷物を纏めているのですか?」

「この家の跡継ぎであるトニー兄さんが結婚するからね。式が終われば、アンディ兄さんとヘルムート兄さんは、この家を出ることになっているのよ」

 僕の質問に、アリス姉さんが詳しい説明をしてくれる。
 この世界における成人の定義は、大体十五歳から十七歳くらいであるらしい。
 多少の幅があるが、早くするか遅くするかは親の裁量一つらしい。

「天地の森の出兵の後始末で結婚が遅くなったのもありますけど、うちは嫁ぎ先としては人気が無いのよね」

 確かに隣の領地とは山脈一つ隔てたこんな田舎の寒村に好き好んで嫁ごうと考える貴族のお嬢さんは皆無であろう。
 生まれた子供を使って、バウマイスター家を嫁の閨閥に引き込むという貴族の常套手段も下手をするとバウマイスター家への援助で大赤字になる可能性を秘めていたからだ。

「結婚できるだけトニー兄さんはいい方かしら」

 もっと可哀想なのは、長男に万が一の事があった時のためにと飼い殺されている次男ルパンの存在であろう。
 彼は、兄トニーと嫁との間に子供が出来れば自由の身となれるのだが、それまでは開墾の手伝いでもしながら部屋住みの苦渋を味わい続けなければいけない。

 こう考えると僕はまだ恵まれた身なのだなと思っていた。

 まだ一回しか顔を見た事がない、妾のレイナとその子供達などは母の身分のせいで正妻の子供が全滅でもしないと相続の目が無いし、そんな奇跡にも期待していないので、実家を継いだり、適当に他の名主の家に婿に入ったり、嫁に行ったりして貴族にはならないらしい。

 正直、少し羨ましいと考えてしまう僕であった。

「アンディ兄さんもヘルムート兄さんも結婚式の後は王都に行く事になっているわ」

「ルーク、アリス。急に寂しくなるけど、元気で暮らすんだよ」

「はい」

「はい、今までありがとうございました」

「手紙くらいは送るから」

「僕も返事を書きます」

「私も書きます」

「いいね。この家でちゃんと手紙を書ける人は少ないから。ルークとアリスはちゃんと書けるけど」



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