様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「基本は出来ていますね。番えた矢から手を離す時に僅かに揺らしているから狙いがブレる時があるのです」

「なるほど」

 これだけの騒ぎを起こしておいて、未だにブロワ家側からの使者は来なかった。
 仕方が無いので、一部東部側領域の保障占領を続けながら、俺達はファブレ伯爵家諸侯軍本陣で暇潰しに没頭していた。

 トーマス達は、占領を宣言した村や町に条件付きで開放した貴族達の領地に軍政官として出向いて忙しい日々を送っていたし、モーリッツは陣地の守りにブライヒレーダー辺境伯の手伝いが忙しい。

 俺はいつもどおりに近いのだ。
 書類のチェック、魔道具の製作、魔法の訓練、剣の訓練、客人扱いのカルラから弓を習う日々になっている。

 ルイーゼは、暇になったのか?

 ヴィルマに初歩的な魔闘流の型などを教えているようだ。

『うわぁ。才能あるなぁ……』

 英雄症候群のせいでパワーファイターに見られやすいヴィルマであったが、実は器用なタイプだったりする。
 魔闘流の覚えも良いし、カルラからナイフの投擲術や弓なども教わって、彼女から才能があるとも言われている。

『その代わりに兵を指揮する才能はありませんけど』

 実の兄であるモーリッツの評価によると兵を指揮する指揮官としての才能は皆無らしい。
 とにかくパワーと武芸に優れていて、俺の傍で護衛をする状態が一番上手な使い方なのだそうだ。

『そこで、一気に魔力を放出するなよ。糸のように細く、なるべく長く魔力を流すイメージで』

『はい』

 そしてカタリーナは、ブランタークさんから魔法の特訓を受けていた。
 俺と同じく経験が浅いので、苦手な魔力のコントロールを毎日長時間習っていた。

「こうですか?」

「段々良くなってきたな」

 カタリーナは目に見えて効果が上がっている実感があるらしく、ブランタークさんからの指導を真面目に受けている。

「大分、的の中心部に纏まるようになったな」

「良い調子ですね」

 俺の方も僅か二〜三日の指導で、自分でもわかるほどに弓の腕前が上達していた。

「ですが、意外でした。魔法の他にも弓がお上手だとは」

「実家は、田舎だからな」

 子供の頃は魔法はなるべく隠していたし、魔力が尽きた時の事を考えて懸命に習っていたのだ。
 あとは、実家の空気的に『弓くらいは上手く使えないと』という物もあったと思う。

「獲物が獲れないと肉が食えない」

「私も同じでした」

 カルラも王都にある母の実家が貧しく、弓で獲物を獲って来ないと肉は食べられなかったそうだ。

「そうでなくても居候状態で肩身は狭いですし」

 ブロワ辺境伯から来る僅かな仕送りを期待している癖に、祖父母、次期当主である伯父、伯母、従兄達と万遍なく、邪魔者扱いされていたそうだ。

「かと言って、ブロワ家でもいない人扱いだったので……」

 急に呼び出されて、好きでも無い父親の世話にお飾りの総大将まで押し付けられ、正直なところ、早く王都に戻って母と二人だけで生活をする算段をつけたいそうだ。

 暫く練習をするとお昼の時間になり、ハクカが呼びに来たので昼食を取る事にする。
 相変わらずののどかなお昼であったが、これも頑張って広域エリアスタンに成功したおかげであろう。

「で・・・お前、何しているんだ?」

 俺が魔導具を研究しているとブランタークさんが聞いてきた。

「・・・これですか、教会が製作している浄化の補助魔法陣です」

「あれか」

「所で、何かあったんですか?」

「明日ブロワ家から、裁定交渉のための交渉団が来るそうだから」

「えっ? それって、大事件じゃないですか」

 一度開始した裁定交渉を駄目にした挙句にあれだけの事件を起こし、どういう顔をして来るのかは不明であったが、これでようやくこの長い紛争も終わりの糸口が見えたというわけだ。

「そんなに上手く行くかな?」

「でも、まずは交渉を開始しないと意味が無いわけで」

「それはそうなんだがな……」

 ブランタークさんの懸念は、翌日に現実の物となって俺達に圧し掛かってくるのであった。



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