様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「バウマイスター伯爵、ファブレ伯爵。何か、良いアイデアはありませんかね?」

 魔法使い同士による勝負もカタリーナがブロワ家お抱えの中で筆頭とナンバー2を捕らえたので、判定はブライヒレーダー家側の勝ちとなっていた。

 元々魔法使いの数も少ないので勝負もすぐに終わり、それから三日間も両軍は無駄に対峙を続けている。
 さすがにブライヒレーダー辺境伯も焦れて来たようで、俺たちに何でも良いから向こうの士気を落とす策は無いかと尋ねてくる。

「士気が落ちるかは不明ですけど、相手に多少の動揺は与えられるかと」

「魔法でもぶっ放すのですか?」

「まさか、そんな無駄な事はしませんよ」

 ヴェルの話を聞き、俺も参加することにした。
 ブライヒレーダー辺境伯の許可を取ってから、ヴェルと俺はその策を実行する。

「ヴィルマ。書けたか?」

「結構自信ある」

「確かに綺麗だな」

 俺は、ファブレ伯爵家の本陣で大きな布に字を書いていたヴィルマに声をかける。
 意外なのだが、実は俺の妻や婚約者達の中で一番字が綺麗なのがヴィルマであったので、俺が頼んでいたのだ。
 普通ならばあまり女性はいない諸侯軍において、魔法使いで暫定当主であるカタリーナ以外の女性陣は、兵士達への食事の準備や、お茶を飲むブライヒレーダー辺境伯達への給仕、エリーゼは臨時の従軍司祭としてその時間を過ごしていた。

 ヴィルマはハクカの護衛をしているのだが、長対陣で彼女たちの治療の仕事が減ったので、今はこうして俺の手伝いをしているわけだ。
 ヴェルが考えた敵の動揺を誘うアイデアとは、ここで新しい人を仕官させようという物であった。
 対象は陣借りをしている浪人達で、採用数は能力と人格が一定以上に達している者なら全部。
 一応、求人広告には五十名と書いているが、採用基準に達していれば全て採用する予定であった。
 どうせ俺に人を見る目などないので、判定はモーリッツに任せる事にした。

「へえ、陣借り者の中で優秀なのを雇うのか」

 ブランタークさんが、良い案だと感心していた。
 紹介状無しなので試用期間は設けるが、うちの人材不足を少しは解消できるかもしれないからだ。
 駄目なら雇わなければ良いだけだし、採用がゼロでもうちに不利益はない。
 何しろ、ここ三日間ほど魔法の鍛錬と魔道具開発と紛争におけるモーリッツたちの時給の計算以外では暇だったのだから。

「日常業務を行って余裕を見せ、向こうの陣借り者達が動揺するな」

 ブライヒレーダー家側に参加していれば面接が受けられたのにブロワ家側なのでそれも出来ない。
 陣借り者だけとはいえ、相手の士気を落とせる可能性は高いと思ったのであろう。

「ああ、別にどちらでも採用試験と面接は受けられるようにしますから」

「マジでかよ! 前代未聞な事をするな。でも、悪くないアイデアか……」

 数分後、ヴィルマとルイーゼが大きな布に書いた求人広告が両軍の間に掲げられる。



 来たれ! 仕官希望者達! ファブレ伯爵家では、臨時に紹介状無しの採用試験を行います。

 採用数:こちらの採用基準に満たせば、上から順に五十名まで。

 待遇:面接の時に説明します。

 職種:文官系の能力や経験を持つ人も募集。警備隊の人員も募集。優秀者には、幹部登用制度もあり。

 備考:現在ブロワ家側にいる人でも、採用試験を受ける事は可能です。



「何か、凄いな……」

 この求人広告が張り出された直後、両軍の陣借り者がほぼ全員殺到していた。
 あまりに多いので、ブランタークさんやブライヒレーダー辺境伯からも人手を借りて採用試験や面接を行ったのだ。
 場所は一騎討ちが行われた両軍の間にある草原で、武芸の腕前を見たり、計算や文章作成の筆記試験を行ったり、最終面接もモーリッツとブランタークさんによって行われていた。

「俺かよ」

「ブライヒレーダー辺境伯の許可は取ったから、恩の消費」

 人柄判定は、ブランタークさんとエリーゼとブリュアである。俺は、大体の人柄判定ぐらいしか出来ないので、それが可能なブランタークさんといろいろな人物を見てきたエリーゼとブリュアに頼んだのだ。エリーゼも悪い人物なら特定可能で、教会の情報網は侮れないのだ。ブリュアもまた紋章官として、いろいろな情報を知っているので活用できるのだ。

 この常識破りの行為にブロワ家側は唖然として見ているだけであった。
 慣習しか決まりが無いこの手の人が死なない戦争において、相手の陣借り者を採用試験に誘ってはいけないという法は今まで無く、俺たちに文句を言う根拠もなかったからだ。

「簡単に言えば、想定外なわけです」

 急遽始まった採用試験の様子を見ながら、ブライヒレーダー辺境伯は笑っていた。

「確かに自分達で囲っている陣借り者達までバウマイスター伯爵家やファブレ伯爵家の採用試験に向かってしまえば……」

 飯と寝る場所、あとは一騎討ちなどで敵の騎士でも捕らえれば感状と褒美が出るが、陣借り者とは基本的には軍勢の数増し程度の役割りしか期待されていない。

 新規雇用など、いくらブライヒレーダー・ブロワ両家でもそう簡単に行えないからだ。
 それでもブロワ家側の陣借り者達はこの紛争が終わるまでは雇用はされている。
 それがこぞって、敵側であるバウマイスター伯爵家やファブレ伯爵家の採用試験に参加している。
 彼らの困惑と動揺を広げる策としては、有効だと俺は思うのだ。

「これで、彼らから裁定を持ち出してくれると嬉しいのですが……」

 結局、二日間にかけて行われた採用試験において12名の陣借り者達が雇用される。
 1年間の試用期間があり最初は一番下っ端からのスタートであったが、彼らはとても嬉しそうであった。

「その下っ端にも普通は紹介状やコネがないとなれませんからね」

 新規で余所者を取る前に陪臣や領民の子弟などを優先するからだ。

「しかし、凄い光景でした」

 新規採用された12名は、今日の早朝に魔導飛行船に乗ってファブレ伯爵領へと向かっていた。
 現地で新人研修を受けてから、それぞれの職場に配置。
 1年後に問題が無ければ正式に仕官となる。
 結局ブロワ家側に居た陣借り者達もほぼ半数が雇用され、駄目だった連中は何食わぬ顔でブロワ家側の陣地に戻り、ブロワ軍の兵士達も唖然としていたようだ。

 とはいえ、彼らを放逐など出来ない。
 彼らが抜ければ、コストが安い兵力が減ってしまうからだ。

「ブロワ家の連中からすれば、途中で敵の採用試験に抜ける陣借り者達など信用に値しないと思うけど、陣借り者達にすればチャンスだったわけで受けない道理もないと」

 これにより、ブロワ家側の士気はまた落ちているようだ。
 策は成功したのだが、俺としては早く裁定に入って貰いたいと心から願うのであった。



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