様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 仕事を終えてブライヒレーダー辺境伯本軍が本陣を敷いているエチャゴ草原に戻るとブライヒレーダー辺境伯がご機嫌な表情で出迎えてくれる。

「報告は聞きましたよ。ブロワ辺境伯に一泡吹かせたようですね」

「身代金だけで、相当に取れますよ」

「死者がゼロなのに捕虜が膨大ですからね」

 ブロワ家側の貴族が繰り出していた軍勢は、全てエリアスタンで麻痺させられて捕虜になっている。
 貴族の当主や重鎮の数も多く、多くの身代金が取れるわけだ。

「ところで、ヴェルたちは?」

「まだ帰ってきていませんね」

「そうか・・・俺が早かったか」

 ヴェルが帰ってきたのは、これから11日後であった。

「やったな」

「ああ・・・お前ら早かったな」

「ああ」

「しかし、物凄く彼らの怒りを買ったようですよ」

 ブライヒレーダー辺境伯に合わせて前方に視線を送ると、かなり距離を置いて対峙していたブロワ辺境伯軍が目視できる距離にまで接近していた。

 と同時に敵軍から数十名の騎士や陣借りの傭兵達が姿を見せる。

「我こそは、ブロワ辺境伯家にその人ありと言われたライヒアルト・シュタイナウアーである! ブライヒレーダー辺境伯軍の勇者に一騎討ちを求める!」

 次々と名乗りを挙げて武器を掲げる若い騎士や感状目当ての浪人達。
 だが、彼らの武器はやはり訓練用の刃が丸まった物であった。

「腕比べが始まりましたね」

「腕比べですか?」

「ええ、前の大惨事を教訓に考えられた物ですね」

「皆さん、出て行きますね」

 ブロワ側の要求に答えるようにして、ブライヒレーダー辺境伯軍や行動を共にしている貴族家からも陣借り者や騎士達が出て行く。
 両軍が見守る中、数十もの模擬戦形式の一討ちが始まり、すぐに勝敗が着く者、逆に長々剣を交わす者達など、様々な光景が展開される。

 基本的に負けて馬から落とされると捕虜にされて終わるようだ。
 戦況を見ると、ほぼ互角に見えていた。
 
「ブロワ家側の騎士を捕らえて戻るようです」

「感状と褒美を出すか」

 これも士気を鼓舞するための物なのであろうが、味方が敵の騎士を捕らえてくるとブライヒレーダー辺境伯も他の諸侯軍に参加している貴族達も、みんな側近などが準備した感状にペンで記載を始めていた。

 何時に、どこで、誰が、誰を一騎討ちで捕らえたかと、その功績を称えて感状と褒美を与えると記載するのだ。

「こういう方法で、士気を鼓舞するのか……」

「はい。感状は自分の武功を証明する大切な物。仕官を目指す陣借り者なら余計にです」

 俺の横で護衛をしているモーリッツが答えてくれた。

「戻ったようです」

 捕らえられたのがよほど悔しかったのか?

 睨み付けるような表情を崩さないブロワ家側の騎士を連れて、トーマスは戻って来る。

「ご苦労様。ええと、この捕虜になった騎士の名前は?」

「クリストハルト・レッチェルトです」

「お館様。トーマス殿に褒美と感状を」

「そうだったな」

 俺は急ぎペンで記載した感状を渡し、魔法の袋から以前にリッドから教えて貰って購入していた鋼製の剣を渡す。
 かなり高価な一品で、このレベルの剣に騎士などは家紋などを施し、常に帯剣するのだそうだ。

「これからもトーマスの働きに期待する」

「ありがたき幸せ」

「あとは……(モーリッツ、相場がわからん!)」

「(金貨二〜三枚になります)」

 金貨なども渡すのだが、その相場がいまいち不明なのでモーリッツにそっと聞いてみる。

「(良く知っているな)」

「(軍系の貴族の子供でしたので)」

 しかし、平均でも日本円で二百万円から三百万円だ。
 そう滅多に紛争などないので、その時には貴族も貯えた金から奮発して褒美を出すのであろう。
 周囲の目もあるから、余計にそうなのだと思う事にする。

「あとは、お見合い会への参加許可も出すから」

 ヴェルの気になる発言に興味が沸いた俺は聞いてみた。

「ヴェル、お見合い会っていうのは?」

「ああ、じつは」

 どうやら、自分に来たお見合い話を断り、次にエルやローデリヒにお見合い話が来て、2名だけだとということで急遽、未婚の家臣一同を集めてお見合い会をする予定だそうだ。

「それって、俺たちも参加できるか?」

「ああ」

「ファブレ伯爵家もお見合い会に参加するよ」

「分かった、ローデリヒに伝えておく」

「というわけでトーマス、お見合い会参加を許可する」

 最後のはどうでも良いような気もしたが、トーマスはスキップでもしそうな笑みを浮かべながら戻って行く。 

「こういう場面を見ますとファブレ伯爵やバウマイスター伯爵も貴族の仲間入りですね」

 ブライヒレーダー辺境伯は、そんな俺の様子を見て一人感慨に耽っているようだ。

「ところで、リッドは?」

 女性陣は他の貴族達の手前もあって、うちの陣地で食事の支度をしていたのだが、なぜか俺の護衛であるはずのリッドの姿が見えなかった。

「リッド様なら、あそこにいますが」

 モーリッツが指差した方角では、リッドが前に出てブロワ家側の騎士と一騎討ちをしている光景が見えていた。

「あのバカ……」

「リッド君も若いので、手柄は欲しいでしょう」

 ブライヒレーダー辺境伯の言う通りなのだろう。

「・・・ルーク、実は」

 ファラの説明によるとリッドは、立ち位置の不安があるらしいのだ。

「・・・それで家臣として手柄獲得か」

「若いですね」

「優勢みたいですね」

 リッドの相手は、思ったほど強くなかったようだ。
 十分間ほど剣を交えるとリッドに馬から落とされて捕らえられていた。

「お館様、敵の騎士を捕らえてきました」

 他の貴族もいるので、リッドは俺の事をお館様と呼びながら得意気に戻ってくる。
 捕まった捕虜も若造に負けたとあって心なしか悔しそうな表情をしていた。

「一言ぐらい、言ってから、一騎討ちに出ろよ!」

「悪かったけどよ。俺だって、手柄欲しいんだ!」

 功績は功績なので、ちゃんと感状と褒美は出したが先に注意するのを忘れなかった。
 こうして初めての特殊な戦争の日々は続いていたのだが、この争いが終わる気配も一向に見えないのであった。



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