様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「私がですか?」

「この時期に、こういう事を頼むのは悪いとは思うのだが……」

 リョウの領地へと戻った私は、妻や孫にお土産を渡してから、その人物を密かに人気の無い場所に呼び出していた。
 その時に妻は嫌な顔をした。
 私が隠居をしてここに引っ越す時にレイナを連れて来なかったので、今度は彼女に手を出すのではと思っているようなのだ。
 確かに女は嫌いではないが、さすがにその辺の部分は弁えているつもりだ。
 レイナの件だって役得ではあったと思うが、ファブレ騎士爵領の安定した統治のために冷静な判断して決定したのだから。
 間違いなく、レイナの方もそういう風に思っていたと思う。
 ちゃんとヒルゼンの跡取りとなる息子達を産んでくれたが、それは彼女の中では仕事であったのだと。
 現に当時から、本屋敷に住めなくても何の不満も漏らさなかったのだから。
 子作りのためにだけ顔を合わせるくらいで、ちょうど良かったのであろう。
 それでも、彼女はちゃんと仕事をしたのだ。
 隠居した私に付いて来なくても特に不満はなかった。
 レイナの事はそれで良いのだ。
 問題は妻だ。
 五十歳の半ばを超えたジジイに余計な心配をして欲しくない。
 今の私は孫に弓や剣などを教え、空いている時間に開発の手伝いや狩猟や採集による食料の確保などを行っている。
 あとは、五十の手習いで漢字や計算なども習っていた。
 教師役は妻であったが、今にして思えば彼女にこういう仕事をやらせておけば良かったようにも思える。
 領主の時は、いつも精一杯で気が付かなかったのだ。

 あとは、当時のファブレ騎士爵領では、保守的な領民達の反発であろうか?

 今では、その手の連中はルパンによって意図的に隠居させられて力を失っている。
 このリョウの領地は、まだ開発が始まったばかりで常に人手が不足している。
 なので、妻などの女性が書類仕事を手伝ってもあまり問題視されていなかった。

 これも時代の流れなのであろうか?

 話を戻すが、父親としてファブレ伯爵になったルークに『あてがい女』を付けなければいけない。
 しかも妻や他の女性達にあまり知られないようにコッソリと行う必要があるのだ。
 どうせ隠し切れないが、あまり堂々と頼むのもおかしいので、こういう風に密かに候補者を呼び出す羽目になってる。
 大貴族だと信頼できる陪臣などが勝手にやってくれるのであろうが、生憎と今の我が家では不可能であった。

「夫を亡くしたばかりなのに、こういう事を頼むのはすまないと思う……」

 私がルークの『あてがい女』になるように頼んでいたのは、自爆したトニーの妻であったフェイトであった。
 彼女は、かなり条件合致するのだ。
 まず、トニーの元妻で子供もいるので経験者である。
 未亡人で騒ぐ旦那もいないし、暗殺未遂事件の主犯であるトニーの妻であるが、他の共犯達の妻と違って彼女は貴族である。
 もし周囲に知られても亡くなった夫の代わりにルークへの罪滅ぼしをしているという風に受け取られるので得であった。
 年齢も25歳で、しかも彼女は童顔で若く見えるので大年増には見えない。
 それほど美人ではないが、可愛らしいタイプでルークとも仲が良かった。
 彼女も本を良く読む人間なので、ルークと趣味も合っている。
 彼女なら、最適だと思うのだ。

「あのルーク様、お引き受けなさらないとおもいます」

「・・・・・・・・・・・・」

「ハクカ様や婚約者たちである女性の方々もおられるので、宛がい女はお断りになるとおもいます」

「しかし、ルークは」

「アルト様、ルーク様は、女性に無防備でいらっしゃいますが、他の女性と食事をしたりするぐらいはなさるとおもいますが、そこまでだとおもいます」

 冷静に考えてみればそうかと納得できる部分もある。

「そうか、すまなかったな・・・一応ルークには、宛がい女の件は伝えておくので、もしルークが引き受けるようなら」

「はい。お引き受けします」

 彼女はすんなりと私の要請を受け入れていた。
 安堵していると彼女はその理由を話し始める。

「お義父様には申し訳ないのですが、当然打算はあります」

「当然だな」

 彼女には、トニーとの間に残された息子がいる。
 ルークの甥にあたり、成人後には彼女の実家であるテスタロッサの姓を継いで領地を分与される予定であった。
 ただ、その約束が確実に履行されるかと聞かれると私もすぐに首を縦に振れなかった。
 ルークには、これからも妻が増えていくと思う。  
 あいつがどんなに断っても全くゼロになど出来ない。 
 なぜなら、それが貴族社会という物だからだ。
 当然、子供が沢山生まれるであろう。 
 そして彼らは妻の身分によって分家を立てたり、まだ未開発の土地が多い領地を分与されたりするはずだ。

 もし自分の子供達を優先した結果、甥に領地を分与するのが惜しくなったとしたら?

 酷い話だが、その時点で大貴族になっているルークに苦情を言っても無駄であろう。
 だからこそ、彼女は自分の身を差し出して子供の未来を確実な物にするのだとルークにも立場がある以上、そういう関係になった女性の願いを無下にする可能性は低くなる。

 打算と言えば打算だが、そこには母親としての優しさもあったわけだ。

「すまない。苦労をかける」

 うちに嫁いだばかりに彼女には苦労のかけっ放しだ。
 まさか、貴族の娘が藁で縄を編むなど思いもしなかったであろうし、食生活は春夏秋冬に定期的にルークによって差し出される食料品の支給で3日ぐらいは豪華ではあるが、普段の食生活は貧しいし、我が息子ながら夫のトニーは駄目な男であった。

 もう手に入れたも同然の爵位と領地を失い、弟への暗殺を企んで逆に始末されるなど、私としても庇いようがなかったからだ。
 更に、あいつの死後に私が密かに後始末をした問題もある。
 普通なら問題にもならないのだが、あいつがバカな事をしたせいで余計に評価を落とす事になっていた。

「ルーク様が、いつお渡りになられるかはわかりませんが……」

 それは、私でスケジュールを調整しないと駄目であろう。
 あまり妻にも大っぴらに言えないし、ルパンやリョウには伝えておく必要があるが、彼らの妻にもなるべく最初は伝えたくない。
 どうせ暫くすればバレるが、最初は騒動は少ない方が良いであろう。

「心の準備だけはしておいてくれ」

「わかりました」

 私は義娘にそれを伝えると急ぎ準備を始めるのであった。
 王都にいる息子達に事情を説明する必要性があるのだ。



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