様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「開きましたわ」

「早いな」

「このくらいの鍵など、私にかかれば」

「一人で遺跡にも潜れないのに良くぞここまで修練して」

「いい加減、気を悪くしますわよ!」

 鍵は僅か十秒ほどで開き、俺達は更に遺跡の奥へと進む。
 暫く歩くと、通路はまた行き止まりになっていた。

「また行き止まり?」

「いや、魔導エレベーターが設置されている」

「魔導エレベーター?」

「魔力で下の階層まで送ってくれる便利な装置さ」

 首を傾げるイーナにブランタークさんが答える。
 魔導エレベーターとは、簡単に言えば魔力で動くエレベーターの事である。
 古代遺跡にはたまに設置されているらしいが、ちゃんと動く物は今までほとんど無かったそうだ。

「これは生きているな。珍しい」

 ブランタークさんが行き止まりの壁にある埃塗れのボタンを押すと石壁だと思っていた物が横にスライドして開く。
 確かにエレベーターに良く似た作りになっていた。

「ボタンに『開』って書いてありますね」

 その下にもボタンがあって『閉』と書かれているので、これはエレベーターで間違いないようだ。
 横にスライドして開いたドアの中に入ると、その壁には『開』・『閉』の他に階層数の書かれたボタンが付いていた。

「ここは一階で、地下二十階までか」

「実は、大遺跡とか?」

「大倉庫だと思うんだよな。鍵が単純だから、ほぼ外れの」

 食料品や衣類などの倉庫ではなかったのかとブランタークさんは推理していた。
 古代魔法文明時代には、大規模な倉庫を持つ大資本の商会が多数乱立していたそうだ。

「もう中身が空っぽだから、金にはならないと?」

 一万年以上も時間が経っているのに中身の食料品や衣類などが無事なはずもなく、ほぼ空っぽのケースが多いらしい。

「魔導エレベーターは売れるかもな」

 魔道具ギルドが、研究のために買ってくれる可能性が高いそうだ。

「研究ですか?」

「ああ。王城に魔導エレベーターは設置されていなかっただろう? この魔導エレベーターもロスト技術で、魔道具ギルドがバラして研究している内に全部オシャカにしてしまうんだよ」

 数少ない現存品も、そのせいで全て壊れてしまったそうだ。

「そんなに複雑な構造には見えませんけどね」

 ここにある魔導エレベーターのように階層をボタンで指定するとそこに止まるとか、そういう機能が再現できないらしい。

「荷物を一階から二階に上げるくらいのエレベーターなら、王城でも裏方では使っているさ」

 あくまでも荷物用で、それでも値段はバカみたいに高いのだそうだ。
 生産数も少なく、王城や一部公共施設、大貴族や大商人が持っているくらいらしい。

「しかも荷物専用か」

「魔導エレベーターは、維持に技術と金がかかるからな。大貴族でも、いらないと割り切っている人も多い。うちのお館様も持っていない」

 そういえば、3階層以上もあるブライヒレーダー辺境伯の屋敷でもエレベーターなど見た事が無かったのを思い出す。
 辺境伯などの上級貴族の屋敷は、高層屋敷の場合が多い。一部屋が最低、縦横高さ10mと高くて広いのだ。俺の伯爵邸は、割とこじんまりとしたお屋敷なのだそうだ。ちなみに王城は、確認した限り、6階層はあるのだ。

「あれ・・・?ルークは魔導飛行船で使ってなかった」

「あれは魔導エレベーターではないぞ。技術的には全く別物だな。あえて名称をつけるなら『浮遊板』かな」

「もう下の階に着きましてよって! 誰です! 私のお尻に触れたのは!」

「ああ、俺」

「少しは、申し訳無さそうに言いなさい!」

「しょうがないだろう! 狭いんだから」

 思ったよりも広く、全員が入れたエレベーターは無事に地下一階へと到着していた。
 人数が多いので鮨詰めにはなってしまい、ヴェルの手がカタリーナの尻に触れたので彼女が文句を言っていたのだ。

「ルーク、ありがとう」

「ありがとう」

「ありがとう、ルーク」

「助かったわ」

 俺がエレベータに乗る際、ハクカとセイとミュウとキャロルを守るために壁際にやり、盾になったのだが、結果的にセイとハクカとミュウとキャロルを抱きしめることになり、心臓がドキドキと早鐘のようになった。リッドを見るとファラの盾になっていた。

「ねえ。ボクの胸に触れているのは?」

「俺だ。えっ? 胸?」

「ブランターク様、後でぶちのめしても良い?」

「すまんかった!」

 狭いエレベータのせいでアクシデントがあったようだが、一向は無事に地下一階に辿りついていた。

「また通路だけ?」

「典型的な地下倉庫だな」

 幅三メートルほどの先が見えないほど長い通路が伸びていて、その両側に五十メートル間隔くらいでエレベーターのドアと同じように『開』・『閉』のボタンが設置されていた。

「ドアの動力も魔力なんですか?」

「そういう事になるな。あとは……、珍しいな! 魔蔵庫になっているのか!」

「魔蔵庫ですか」

 魔蔵庫が何なのかは、さすがに俺でも知っている。
 要するに魔法の袋の倉庫版だ。
 小さい袋に大量に収納するという部分を省き、その部屋にある物の経年劣化を防ぐ機能だけを付けた物である。
 ドアを開けて中身を取り出す時にはその機能は停止し、またドアを閉めると中の物の時間の経過が止まる。
 古代魔法文明時代には、冷蔵庫と並んで普及していた物だと書物には書かれていた。

「でも、そんな昔の魔蔵庫とやらがまだ動いているんですか?」

「動いていないな」

 古代魔法文明時代の遺跡から見付かった魔道具は、見た目は古ぼけていても今でも使える品が多い。
 元々長期間使う事が前提の品が多いうえに経年劣化を防ぐ魔法がかかっている物が多いからだ。
 さすがに一万年以上も前なので、それがかかっていないと見付けても使えないのだが。
 ブランタークさんは、腕の良い魔道具職人は魔道具の性能だけでなく、付属させている魔晶石の燃費も格段に優れているのだとエルに説明する。 

 早速一番手前のドアを開けて、魔蔵庫の中に入ってみる。
 室内は、幅五十メートル、奥行き百メートル、天井の高さ五メートルほどと大きい。床も壁も天井も大理石のような白っぽい石で出来ていて、とても細かい魔法陣のような物が沢山描かれている。一階層に最低でもこの大きさの部屋が十以上もあり、それが地下二十階層まであるのだ。



「亡命はしませんわ。私には、守るべき家臣達やその家族がいるのですから」

 カタリーナの実家であるヴァイゲル家は、祖父の代に派閥抗争の余波で、王家からの転封命令を断ったという理由で領地と爵位を奪われてしまったそうだ。それと、彼女の言う家臣達とは。
 その時の従士長以下の家臣やその子孫達が、王国の直轄地となっている今でも、いつかヴァイゲル家が貴族として復帰できるように領地を頑なに守っているらしい。

 何というか、恐ろしいまでの忠誠心とも言える。

「祖父が陛下からの命令に背くなどあり得ませんわ! あの悪辣なルックナー侯爵家の所業なのですから!」

 今のルックナー財務卿の先代が、同じく財務閥で当時揉めていたリリエンタール伯爵家の勢力を落すために、そのような工作を行ったのだそうだ。ヴァイゲル家は、在地領主にしては珍しく法衣貴族であるリリエンタール伯爵家の寄子であったらしい。
 領地が王都に近く縁戚関係でもあったようで、万が一の時にある程度の兵力を期待できるヴァイゲル家をルックナー侯爵家が疎ましく思ったようだ。

「あの人、色々と恨まれているな」

「大貴族というのは、それなりに敵がいるのであるが」

 しかもヴァイゲル家が改易された当時は両家の当主は先代同士で犬猿の仲であったらしいが、今ではそれほど仲も悪くないらしい。
 導師に言わせると代が変わると極端に貴族家同士の関係が変わってしまう事があるそうだ。
 逆に『不倶戴天の敵だから絶対に許すな!』と必ず後継者に申し送りして、数百年間も仲が悪い貴族家同士も同じくらいあるそうだ。

「改易当初は、リリエンタール伯爵家も援助はしてくれたのですが……」

 『必ず領地と爵位は復帰させるから』と援助をしていたのに代が代わると見捨てられてしまったらしい。
 それ以降は、家臣達は土着して名主などをしながら懸命に没落したヴァイゲル家を支えてくれたそうだ。
 多分、リリエンタール伯爵家はルックナー侯爵家との仲が修復したので、ヴァイゲル家の事は見捨てたのであろう。
 大の利益のために小の利益を切り捨てる。
 どこの世界でも良くある話ではあった。

「彼らへの恩を返すため、私は貴族にならなければいけないのです!」

 とは言え、このままではカタリーナが貴族になれる可能性は無いわけで、その辺の焦りが最初の傲岸な態度。
 いや、最初からあんな物なのかもしれなかったが、冒険者としての活動を西部にしていたのも王都周辺だと色々と煩かったからなのであろう。

「とにかく、その話は後だな」

 ブランタークさんの意見で、俺達は昼食を取った後にこの地下倉庫にある全ての部屋を回って保管されていた物資の回収を行うことにした。

「一階層に二十室の同じ大きさの倉庫部屋があって・・・・全て埃と殻箱のみか」

「この資料を見ると、ここって第四地下倉庫らしいですよ」

「捜索を続行するか……」

 俺は、翌日から周辺の探索に参加し、同じ地下遺跡という名の倉庫を八つ見つける事に成功する。
 全て同じ作りで、二十部屋×二十階層で魔蔵庫完備。

「もうダイヤル嫌……人が律儀に0000から回しているのに、9987とか喧嘩売り過ぎ……。次は、9999から回したのに0007だったし……」

 一人だけジャンケンに負けまくり、7つの地下倉庫全てのダイヤル鍵を自力で開ける羽目になったエルは、

「ルーク、手伝ってくれよ」

「残念ながら忙しい」

 俺は、経年劣化防止の魔法陣を書き記していた。
 1回だけ、暇つぶしにやって魔法で読み取ってから速攻であけたのが悪かったのか、俺に言ってくる。

「それともこの魔法陣を書くか?」

「謹んで、あけさせてただきます」

 エルは、顔を引きつらせていた。
 俺の場合は、ハクカ、セイ、リッド、ファラ、キャロル、ミュウに頼まれたらあけるな。一応、エリーゼに頼まれたら開けてもいいかなという程度にはある。
 今のところ、誰からも頼まれてないな。



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