様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「ルールは、日が落ちるまでに狩猟と採集で得た成果の評価額だ。5日間あるから、ペース配分を忘れるなよ」

 翌日の朝、元ベテラン冒険者であったブランタークさんの挨拶から、仕切り直された勝負が始まろうとしていた。
 参加チームは、ヴェルとカタリーナと導師は個人で一チームとなり、エル達は6人でチームを組んで戦う。漆黒の翼もチームを組んで戦うのだ。

「イーナ、無理するなよ」

「勿論、私だってそこまでバカじゃないわよ」

「というと?」

「うちは、数で補う。あと、採集をメインにね」

 なるほど、実に上手い手を考えたものだ。
 大型の魔物を狩ると単価は高いが、手間がかかる。
 ならば、狩猟は自衛的手段に限定して、フルーツ類や高価な薬草などの採集に絞って数を稼ぐべきであると冷静なイーナらしい作戦でもあった。

「上手く、単価が高い物がある場所を見付けるのがポイントね」

「随分な啖呵を切ったかと思えば、随分とセコい手ですわね」

「あなたこそ、冒険者は派手に魔法をぶっ放して魔物を狩れば良いとだけ思っているのだから、単細胞よね」

「何ですって!」

 カタリーナがイーナを挑発するが、逆にイーナに反論されて逆上してしまう。
 確かにイーナの言う事は正しい。
 冒険者が派手に強力な魔物を討伐すれば、素人目には格好良く見えるのであろうが、何もそれだけが冒険者の仕事ではないからだ。
 冒険者の仕事とは、とにかく売れる物を獲得する事にある。
 それは、竜や強力な魔物を倒せればお金にはなるが、そんな事が出来る冒険者は少ないわけで、実は大半は採集物から得られる収入の方が多かったりする。
 冒険者ギルド側としても、無謀な討伐で大怪我をしたり死なれてばかりでは困るわけで、なるべく長期に渡ってコンスタントに稼ぐ冒険者は大歓迎であった。
 超一流の冒険者とは、少数しかいないから超一流なのだから。
 実際、一度も魔物の領域に入らず、地味に人里離れた森などで高価な産物を効率良く集め、生涯収入が一千万セントを超えた冒険者なども過去には存在している。
 そういう人は超一流冒険者の影に隠れてしまうが、隠れた成功者であるのは事実であった。

「お嬢ちゃん方、喧嘩は禁止だからな。勝負でそういうのは晴らすように」

「わかりました」

「わかりましたわ」

 さすがのカタリーナも高名な冒険者であったブランタークさんの注意には素直に返事をしていた。
 文句の付けようがない実績を持っているので、下手に反論などできないのであろう。

「それじゃあ、スタートだな」

 ブランタークさんの合図で勝負は始まるのだ。
 昨日と同じく、採取に狩猟に精を出していた。
 魔物が魔法障壁をガリガリとやっている最中で昼食を取っていたのだ。
 セイとハクカの手料理を堪能していた。
 その日の午後も効率良く狩りを進め、それが5日間も続く。
 成果を入れた魔法の袋はギルドの職員に預け、前世のクイズ番組のように成績の途中経過発表とかは無いようだ。

「いやあ、これだけの成果。毎日、勝負してくれませんかね」

 今回の勝負に際して、えらくギルド側が協力してくれたのだが。
 彼らからすると5名もの魔法使いが成果を競うのは実入りが増えて好ましい事のようだ。

「全然、需要を満たしていませんからね」

 魔の森に侵入可能になったのは良かったのだが、難易度が高くて未熟な冒険者であると屍を曝すだけ。
 というか、簡単に一攫千金に飛び付くような冒険者だと、この手の輩が多くてなかなか成果が増えないのだそうだ。
 他の地域から乗り込んで来る超一流のベテランも居ない事は無いのだが、そういう人材の大半は元々活動拠点にしている領域で稼げているので、わざわざここに移る人が少ないというわけだ。

「あと、ここって何も無いですからね……」

 魔道飛行船は定期的に来るが、元々魔の森に潜る冒険者目当てで作った町なので、まだ全く整備されていないそうだ。
 冒険者ギルド支部ですら掘っ立て小屋なので、当然とも言える。
 娯楽施設も同じくまだ掘っ立て小屋の宿屋に、冒険者目当ての行商や飲食屋台くらいであった。
 口の悪い冒険者などは、『町? まだ村にもなってねえよ!』と言っているほどであった。

「資金や資材が無いわけではない。時間が、時間が足りないんだ……」

「他にも開発が必要な場所も多そうですしね」

 元々何も無い未開地だったので、どうしても最初はバウルブルク周辺を優先してしまうわけだ。

「今のところは、何とか生活できているから問題は無いですよ。その内に人も集まってくるでしょうし」

「それでは、結果を発表する」

 まずヴェルであったが、カタリーナの三倍ほどの成果をあげていた。

「圧倒的ですね」

「くくっ……」

 カタリーナも懸命に狩りをしたのであろうが、やはり魔力量の差が大きかったようだ。
 成果の中に超高額になりそうな個体も無い事から、オークションにかける前に勝負あったというやつであろう。

「えーーーと、次にエル達だけど……」

 カタリーナの成果にどれだけ迫れたかがポイントであったが、成果のカウントをしているギルド職員は意外な結果を口にしていた。

「カタリーナさんよりも、ほぼ間違いなく評価額は上ですね」

「なっ! どういう事ですの!」

「いや、そこは数で補ったとしか……」

 需要が多くて単価が高いカカオやフルーツ類を大量に採取し、他にも高額になる薬効の高い薬草類を大量に集めていたようだ。
 薬草については、教会で治療の手伝いもしていたエリーゼが大きく貢献したらしい。
 この薬草は、こういう場所に良く生えているとかそういう知識を上手く生かしたようだ。
 そして、予想よりも狩った獲物の数も多かった。

「サーベルタイガーも何頭かいますね。しかも、傷が無い」

「有るには有るんだけど、ヴェルと同じだね」

 サーベルタイガーは、全てルイーゼが狩ったようだ。
 その突進や攻撃を優れた動体視力を生かして最小の動きでかわし、後方に回り込んで魔力を篭めた一撃で倒す。
 外傷が無いのは、魔闘流の極意である内部破壊で延髄だけをズタズタに引き裂いているかららしい。
 見た目には、まるでわからないのだが。

「何それ、地味に怖い」

「ある程度魔力が無いと使えない技なんだよ。導師の指導も役に立ったね。6人で採集して、ボクが周囲の監視役。数が多いとイーナちゃんやミスミやミリィに応援を頼むのが基本だったかな」

 ルイーゼは、一番の脅威であるサーベルタイガーを専門的に狩っていたようだ。
 他の魔物を見ると綺麗に首を切り落とされているのがミスミの成果で、頭部や心臓部分近くに刺し傷があるのがイーナやミリィの成果なのであろう。

「現在、魔の森産のフルーツなどは価格が上昇傾向にありますからね。これだけあると大商人などがオークションで値を吊り上げると思います」

 大商人は、汎用の魔法の袋を幾つも持っている。
 入れておけば鮮度が落ちないので、生鮮食品でも買える時に大量購入するのだそうだ。
 価格が安い時に購入し、高い時に放出する事で利益をあげるのが目的である。
 在庫を大量に抱えても資金力があるので経営を圧迫しないし、魔の森産の品は暫く価格の下落などはあり得ないらしい。
 何しろ、天地の森の街やここでしか採れないのだから。
 なので、今は買えるだけ買う。 
 他のライバル達に負けないようにオークションで競り値を上げる事にも躊躇しないのだそうだ。

「あとは、ルイーゼさんは運が良いんですね……」

 ギルド職員の視線の先には、サーベルタイガーの白子が一体置かれていた。
 これで二匹目であったが、その大きさはヴェルが狩った個体よりもまた一回り大きかった。

「しかも、全くの無傷ですし」

「内部は無傷じゃないけどね」

「次に漆黒の翼ですけどね」

 俺達はカカオの実などを大量に出したのだ。
 現在もギルド職員が懸命に査定を行っていた。倒した魔物の数は、1万6800個である。取った果物やカカオの実の数は48万2400個、薬草類は4824個、樹皮や葉っぱは、9648個である。

「多いですね」

「次にアームストロング導師なんですけど……」

 もう一人、勝手に参戦した導師であったが、その戦果は驚異的であった。
 恐ろしい数の魔物の死体が、全て苦悶の表情を浮かべた状態で並べられ、数名のギルド職員が懸命に査定を行っていたからだ。

「あの……。導師?」

「昔から、某はこれで大量の魔物を狩っていたのである!」

 導師は、自分の拳を前に突き出していた。
 簡単に言うと魔力を篭めた拳で殴り殺し、蹴り殺し、首をへし折ったようである。
 単純明快で時間もかからないのであろうが、この世界でそんな事が出来る人は間違いなく導師くらいであろう。やろうと思えばヴェルや俺もできなくもないのだ。

「あと、森の奥に遺跡を見付けたのである! 明日にでも、探索に行こうと思うのだが」

「何だ、導師が圧倒的に一位じゃないか」

 まさしくエルの言う通りであった。 
 獲物の数は漆黒の翼と同数、更に未発見の遺跡まで見付けているのだ。
 さすがは、勝手に参戦しただけの事はあるのかもしれない。

「導師、あまり若い者の仕事を奪うなよ」

「そうは思うのであるが。実は、二番目の妻と三番目の妻が妊娠していたらしく、転ばぬ先の何とやらで稼いでおこうと思ったのである!」

「ええと? 二十人目だっけか?」

「然り。今度こそは、女の子が欲しいのである!」

 導師の大戦果を見て、ブランタークさんが若い冒険者の稼ぎをあまり奪わないようにと窘めるのだが、それに導師は子供がまた生まれるから物入りだと反論するというか、導師はうちの父以上に家族計画など考えてもいないようだ。
 ただ、甲斐性は超一流なので誰も困らないのであろう。

「女の子が生まれたら、バウマイスター伯爵かファブレ伯爵に嫁がせても良いのである!」

「えっ?」

「ちょ?」

「(導師似の女の子が、ヴェルとルークの奥さんに?)」

 導師の娘を嫁にする。
 まず年齢差云々よりもエルがボソっと漏らした一言の方が気になってしまう。

「(導師似の娘?)」

 すぐに頭の中で思い浮かんだのは、筋肉ムキムキで顔も導師ソックリの女の子であった。

「(それは勘弁して欲しい)」

「あの導師様、エリーゼの前でその発言はちょっと……」

「おおっ、そうであったな。子供や孫の婚姻は考えておいて欲しいのである!」

 どう返事をしようかと迷っていた時に助け舟を出してくれたのはイーナであった。
 可愛がっている姪のエリーゼの名前を出して、遠まわしに断ってくれたからだ。

「ちょっ! ヴェル!」

 ヴェルがイーナに抱き付いていたのだが、導師以外は物凄く納得したような表情を浮かべていた。
 やはり皆、導師の娘のイメージは女装版導師その物であったようだ。

「まあ、勝負は無事についたわけで」

 一位が導師、2位が漆黒の翼、3位がヴェル、4位がエル達。
 導師は元は超一流の冒険者なので、これは仕方が無いであろう。

「別に順位なんてどうでも良いんだろう?」

 ブランタークさんが傍にいたギルド職員に尋ねると彼は肯定とも受け取れるような返事をしていた。

「これだけの大量の品が、王都でオークションにかけられて高額の値段がつく。すると他の地域に噂が流れますからね」

 地元よりも稼げると知れば、超一流の連中が集まってくる可能性は高い。
 だからこそ、冒険者ギルドは勝負を手伝ったのであろう。

「あとは、遺跡か」

「はい。魔の森の探索は始まったばかり、他にも未知の遺跡は複数あるはずです」

 もし導師が見付けた遺跡から多くの成果が挙がれば、これも多くの冒険者達が集まって来るようになる。
 未知の遺跡とは、それだけ稼げる可能性が高いからだ。
 つまり、冒険者ギルドも導師も魔の森周辺に腕の良い冒険者を集めて開発を助けようとしていたようだ。
 稼げる冒険者が家族と共に来て、そこに家を立てて生活をする。
 高額の納税もするし、彼ら目当てで商売人も来るので、地域の活性化に繋がるわけだ。

「では、明日に遺跡を探索するのである!」

「メンバーは、ルークたちを加えた面子で良いよな?」

 前の死にかけた地下遺跡探索よりも導師が加わって戦力は増している。
 よほどの事がなければ大丈夫なはずだ。

「では、明日も早いし帰りますか」

「某も泊めて欲しいのである!」

「俺もだな。瞬間移動で運んでくれ」

「良いですよ。最近、瞬間移動で運べる人数が増えましたし」

「俺も増えたな」

 黒い煙のアンデッド巨人との戦闘や、その後の土木魔法の駆使などで魔力量と魔法の精度が上がったらしく、一度に自分を除いて8人まで運べるようになっていたのだ。尚、瞬間移動専用の魔法の杖を使えば、一度に81人まで運べるのだ。ファブレ領の開発にはなくてはならない一品である。

「そりゃあ、便利だな。じゃあ、頼むわ」

「わかりました」

 俺達は明日の遺跡探索に備えて早めに休もうと瞬間移動の魔法で屋敷へと戻っていく。



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