様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「トリスタン様」

「ヴィルマ、久しぶりだね。ファブレ伯爵様の側室になるのだから呼び捨てで構わないよ」

 ファブレ伯爵家の仕官者や警備隊、作業者を連れてきたのはあのエドガー軍務卿の四男トリスタンさんであった。
 彼は、父親のコネでうちに押し込まれたわけだ。
 妾腹だそうで、これ以上軍内で燻っているよりはということらしい。
 能力の方は、ちゃんと精査したので問題なく、人柄もハヤテと周囲からの聞き込みにより評判なので問題ないはずだ。

「トリスタンさんに警備隊員の指揮を任せる」

「分かりました」

「基本的に野生動物から作業員を守ることだから」

「分かりました」

「えっと・・・たくさんいますよ」

 ハクカが困った顔で言った。
 リッド、ファラ、リーリン、ヴィルマも頷く。

「まず作業員たちは、荷の積み下ろしをしてから、分類事に保管してください。宿泊用のテントを指定の場所に・・・」

 ハインが指示を出していた。ハインの孫でアルスは、ハインの補佐である。
 俺達が見ている前でハインが事前に立てた計画通りにみんなを動かしていく。
 測量技師やみんなが作る調理人にも指示を出していた。

「お館様、本陣が完成しましたな」

 こちらに生活の拠点を置けるようになるまでの本陣となるテントが1時間ほどで完成した。

「スズネ様方は、しばらくは通いですな」

「ここは男性ばかりなので、警備隊の指揮官としてはそうしていただきたい」

 本陣のテントが完成したので、トリスタンさんたちも打ち合わせのために姿を見せた。

「お茶をどうぞ」

「すみません、スズネ様、ハクカ様」

「まずは開発計画の概要を説明するのですが、その前にどうなのですかな?トリスタン殿」

「まあ、みなさん国の中枢で要職を占めている方々ですから、計画に遅延等はありませんね。ついでに色々企んではいるようですが・・」

「色々ね」

「ええ・・・とはいえ、今のところファブレ伯爵様には関係ないお話ですよ。全てローデリヒ殿やバウマイスター伯爵様に関係するお話ですね」

「なるほど」

「というわけですので、今は開発に注視しましょう」

 話を開発に戻し、ハインが説明する。

「船便を増やしてもらえることになりましたが、正式な港がないと対応が難しいですな」

 ブライヒブルクから中型魔導飛行船が15日1便ほどだそうだ。
 ちなみに王都の大型魔導飛行船が17日1便である。
 現在、ブライヒブルクでは港の拡張工事を急いでいるそうだ。

「道路の建設も急務です」

 ファブラブルクを中心とした道路網の建設、海沿いには海上船舶専用の港が必要になる。これが整備できれば多くの海を持つ貴族領から船便で荷が運べる。
 東部や西部の海沿いに貴族領を持つ貴族たちも交通量の増加を大いに期待しているそうだ。
 さらに領内の大型河川などは、大雨が降ると氾濫しやすい箇所もあるのでその工事も必要だ。

「お館様、ファブレ伯爵家は寄り子を複数抱えることになります。彼らへのフォローも必要です」

 ファブラブルクからリョウ兄さんが開発する準男爵へと続く道、ルパン兄さんが新領主になったファブレ騎士爵領へと続く道、他の都市建設予定地点などへと続く道への整備も必要だ。

「大計画だな」

「ああ、凄い大規模だ」

 トリスタンは、そのような大計画に家臣として参加できることに喜びを隠せないようだ。
 興奮しながら同僚たちと話している。

「でも、時間がかかりそうね」

「大変そう」

「リーリン様とヴィルマ様の仰るとおりです。普通に行えば大事業となるでしょう。時間も費用も掛かります」

 並みの貴族が計画して実行しようとしても成功率はかなり低いとハインは語る。

「ですが、お館様の資金力と魔法があればさほどの難事でもありませんな」

「「「「「おおっ」」」」

 ハインの強気の発言にみんなが一斉に声を上げる。

「そうだな。お館様がいらっしゃる」

「必ず成功させるぞ」

 翌日から、工事関係者が来たので本格的な未開地の開発が始まった。
 最初は、測量に、人員の受け入れ、警備隊は野生動物狩りなどで忙しくまだ工事作業自体は、始まっていない。
 物事には準備が必要であり、いきなり工事からスタートというわけにはいかない。

「カイエンと申します」

 金髪の若者が俺に挨拶してくる。

「カイエン殿はレンブラント男爵のご紹介で建築に詳しいとのことで」

「そうか・・・じゃあ、ファブレ領の開発長を任せるがいいか。仕事内容は、ファブレ領全土の開発計画を建てて、現場の材料等の確認と視察だな。開発計画の細かい所は、ハインと相談していいから話し合ってくれ。ファブレ領の開発計画書とか後で構わないから提出しておいて・・・どうせ領主のサインがいるだろうから、目に通しておく・・・・人数がいなくて大変だろうが、頑張ってくれ」

「その大役、しかとお引き受けいたします」

「指揮系統としては、カイエンの上に家宰のハインがいてその上に俺がいる形だ・・・・後、必要な家臣がいるなら俺に話しを通してくれれば、家臣を新たに雇う」

「分かりました」

「それと区画割を行おうと思う」

「区画割ですか?」

「ああ・・・100m事に区画を分けておこうと思う区画と区画の間に道路を付ける」

「なるほど・・・・所で100mの意味は」

「1世帯で管理できる畑や田んぼの広さがこれぐらいだから」

「そういうことですか・・・それでしたら少々修正をいたします」

「ああ」

 1区画ごとに103mとなったのだ。
 正直すまないと思ったが区画を管理するためには必要である。
 たくさんの測量技師達が、いたが、彼らの最初の仕事は

「ファブラブルクの距離を測定し、そこから中心点を出す作業が最初ですね」

「なぜ?」

「中心点さえ測量できれば、お館様の地図に書いてあるとおり大通りの測量が行えます。後は、区画割で分かりやすく測量できますからね」

「なるほど・・・しかしそんな地図使えるのか?」

「地図そのものよりは、お館様の要望が書かれていることが重要なのです。何しろファブレ領は真っ白ですからね・・・それにその後にハイン様によって伯爵邸や政庁や魔導飛行船の港等が書き足されていますので、大丈夫ですよ」

「そうか」

「今なら、景観とか整えやすそうだよな」

 リッドが声に出して言う。

「出来ますね」

「しかし・・・政庁が一番大変だよな」

「その辺は仕方ありませんよ。何しろファブレ伯爵領は受け取ったばかりですからね」

 現在の政庁の間取りには、俺とハインの執務室と応接室と食堂と台所とトイレしか存在しないのだ。本日、カイエン(開発)の執務室が追加されたのだ。一番大きいのは、トリスタンたちの警備員の建物である。
 ちなみに伯爵邸と政庁は南大通りに存在する。平安京や平城京に習ってやったが誰からも疑問の声が上がらないな。
 
 俺は、マサ土と石灰と土とニガリの配合を混ぜ合わせ、魔法で叩き、乾燥させていく。何十回の試行錯誤のすえ、固い『三和土』が完成した。

 ポイントは、水はにがりが溶ける程度のひたひた強でやると簡単に固まるのである。

 マサ土60%、土10%、石灰30%、にがり0.3%程度である。

 さらにもうひとつ土と海藻糊と焼成にがりを配合し、魔法でたたき、乾燥させていく。何十回の試行錯誤のすえ、問題ない強度を持つ『マグ土』が完成した。

 配合割合は、土が9、焼成にがりが0.9、海藻糊が0.1ぐらいの割合で混ぜ合わせると問題ないのだ。ちなみに文献によると焼成ニガリの正体は酸化マグネシウムであり、土を配合することで固まるそうだ。ただこれだけでは粘りがないので海草糊を入れることで粘りがある土になるそうだ。名前を『マグ土』と命名したのである。

 雇われた左官達がカイエンの指示でマサ土、ファブラブルクの土、石灰、ニガリを混ぜ合わせていく。

 大工は、3万人である。
 南方が1万人、中央が2万人らしい。
 多いなと思ったのだが、実際には少ないらしい。ブライヒレーダー辺境伯経由で聞いた所

「これは1本取られましたな」

「そうだな」

 ヴェルが王都やブライヒブルクの大工に家の建築を依頼しているそうだ。
 完成した家は、レンブラント男爵が移築で適宜送る手はずになっているそうだ。
 これなら王都や南方の大工たち3万人が使えるはずである。また西方や東方の大工たちも王都やブライヒブルクに行けば仕事にありつけるので実質使える大工の人数は、最大7万人である。弟子の数を含めれば14万人近くも使えるかもしれないのだ。バウマイスター領で働く大工の数はファブレ領と大して変わらない。ブライヒブルク周辺や王都周辺は、活性化するので上手い手でもある。

「ただ」

「・・・どうかしたのか?」

「レンブラント男爵様が酷使されますな」

「・・・そうだな」

 俺は、レンブラント男爵の無事を祈るために黙祷を捧げるのであった。
 ちなみに土工たちも同じ数だけいる。
 他にも炭焼職人や瓦職人や左官などもいる。
 工事関係者に気になったことを聞いてみた所

「なるほど・・・俺が伯爵領を受領した時点ですでに魔導飛行船で移動していたのか」

「はい」

 通りで早く動けるはずだ。
 導師に領都をどこにするか聞かれた時に希望として中央付近といっていたからね。
 導師なら大型魔導飛行船に連絡取れるな。

 工事関係者のためのお茶酌みメイドが9000人である。
 第1陣 110名
 料理人等を含めて10万人近くいるのだ。
 これから商人たちが来ることを含めれば、さらに数万人増える計算である。

 5週間目。
 1日目 俺、スズネ、アスナは、ファブラブルク中心の四方に伸びる大通りの工事入っていた。とはいってもやることは、1m30cmほど道路の土を取る作業である。取った土は、専用の魔法の袋に入れてある。この大通りの横幅は、30mであるが、実際には馬車道:20m、左右に二つの用水路があり、溝幅は50cm、左右に歩道があり、その歩道が3mである。道路の掘削は1日で終わった。

「最初に砂利を敷き固める。次に小石と砂を混ぜ固める。次に小石と土を敷き固める。用水路と車道と歩道の間には縁石を置く。その上に土と海藻糊と焼成ニガリを混ぜ合わせた土を敷き固める」

 ちなみに土を敷き固める舗装方法を地道舗装という。
 ヘルムート王国では、いくつかの舗装方法が存在する。
 1つ目が地道舗装。土を転圧して固める舗装方法である。
 2つ目が石畳舗装。整形した石を置いて固める舗装方法である。
 3つ目が砂利舗装。砂利を転圧して舗装する方法である。
 俺が選んだ舗装方法は、地道舗装に分類される。強度は大丈夫なのかというと焼成ニガリ=酸化マグネシウムと土を混ぜると自然と硬くなっていくのであるが、これだけでは十分な強度があるとはいえないので海藻糊を使うことで粘りを生み出すのである。元々、しっかりと転圧されている地道舗装であれば、馬車が通っても雨でぬかるんだりする可能性は低いのである。

「はい、分かりました」

 カイエンの指示で、土工が大道路に砂利を敷いていく。

「では、棟梁・・・後は任せる」

「はい」

 カイエンが棟梁に後を任せたのであった。
 1層の厚さは、30cmだそうだ。最後のマサ土のところだけ40cmの幅だそうだ。
 左官の彼らは、『三和土』製作と『マグ土』製作と三和土用水路製作である。
 大工の方々は、1万5千件分の水汲み場の建物の木材加工である。ちなみにファブラブルクの水汲み場は1万を越えているのである。
 ちなみに『マサ土』を入れる理由は、水はけをよくするためであり、これによって雨が降ってもぬかるんだりしなくなるのだ。もうひとつの効果としては、草が生えぬくくなる効果もあるのだ。
 
『募集した警備隊の第一陣ですが、予想よりも精鋭揃いですね』

 それは、アスガハン家の人材斡旋でエドガー軍務卿が推薦する人材ばかりなので当然であろう。
 軍人家系で良く鍛えられている上に軍や警備隊を辞めてまで来ているのだ。
 第一陣なので、将来発足するファブレ諸侯軍の幹部候補という点も含め、彼らは治安維持のためにパトロールを行い、工事関係者などを野生動物から守るために狩りも率先して行い、工兵訓練の名目で工事の手伝いまでしていた。
 
『酒が飲めるので好評ですな』

 その日の夜、俺はハインやハヤテやアスナやスズネとセイと警備隊の主だった幹部達と食事を食べながら話をしていた。
 こんな状態なので皆同じメニューであったが、彼らは特に不満もなく食べているようであった。

『普段の食事からすれば、ご馳走ですな』

『ええっ! そうなの?』

『軍や警備隊の食事は、質よりも量ですから』

 そういえば、以前にグレードグランド討伐で軍の駐屯地にお世話になった時。 
 量ばかり多くて、味は微妙な飯を出されたのを思い出す。

『ショは、王都で買うと高いですからな。未だに軍や警備隊は塩でしか味付けしませんので』

 幹部候補達は、みんな軍や警備隊で出る不味い飯に苦労していたようだ。

『その点、トリスタンの家は良いよな。実家が裕福だし』

『みんなが思っているほど、素晴らしい飯なんて出ないさ。パーティーとかで見栄を張っている時ならともかく、軍務系の貴族家は、普段はあまり豪勢なご馳走は食べないのはお前らも知っているだろう?』

 軍務系の貴族達は、普段から体を鍛えてパーティー以外であまり豪勢な食事を取らないのだそうだ。
 節約という理由もあったが、軍務系の貴族やその子弟が太っていると外部からあまり良い印象を受けないからだ。
 特に出世したい人は、定期的にある閲兵の儀式などで見た目が良くないと、この時点で出世コースからは外れてしまう。
 軍人の能力と体型に関係は無いと思うのだが、そういう人は補給や参謀コースに進む事になっている。
 そこでも出世は可能であったが、やはり軍人は若い内は前線で剣を振るい、ある程度年を取ったら指揮官になる事こそが花形だと思われていた。

 ただ、この二百年ほどは演習以外であまり指揮官の出番も無かったのだ。

『トリスタンの家は、侯爵家だからな。例外かと思った』

『あの親父が、そんな無駄遣いなんてしないさ』

『確かにエドガー軍務卿に似ている』

 俺は、配給された酒を飲み干してから、スズネとアスナとセイをつれて転移でファブレ領の屋敷に戻るのであった。
 尚、第1陣が来たことでリッドたちの狩猟は終わり、天地の森にセイと共に行っている。

 2日目 

「というわけだけど」

 俺は、ブライヒレーダー辺境伯様の許可を得てファブラブルク図書館にあった古文書のコピーをカイエンに見せた。

「そうですね。自然乾燥させるよりは早いですね」

 ヘルムート王国でも自然乾燥させるという手段はあるのだが、ものすごく時間がかかるのだ。
 大体、2年〜3年ほど乾燥させれば強度のある建材になるのだ。ただし割れたりするのであまりおススメされていない。そこでヘルムート王国で考案されたのが魔法使いによる強制乾燥や炭焼職人による高温乾燥である、多少高くつくが自然乾燥建材を使うよりは圧倒的に早いのだ。その中で今回俺が使う方法が低温燻煙乾燥法と呼ばれる古代魔法王国時代の手法である。ヘルムート王国では、使わない手法である。貴族や大商人が好んで使うのが石造りの広い屋敷だからである。ちなみに下級貴族たちは、木造屋敷が大半である。貴族や大商人が立てる木造屋敷は、中温乾燥法である。

「ああ・・・・開発状況が修正されるわけだがいいよな」

「それは大丈夫です・・・炭焼職人が来ていたわけがこれですか」

「ああ・・・彼らの領分だからな」

 オカクズや草木などを材料に燃やし、さらにクズ魔石を少量ずつ足し一定の火力。65度程度の低温に保ち部屋を燻煙させて、木材を乾燥させるのだ。この作業で2週間ほどかかるのだ。そして1ヶ月ほど天日干しをすると使えるようになるのだ。高温燻煙乾燥法ならば1週間で使えるのだ。

「お館様・・・本日は近くを流れる河川の工事ですな」

 ハインから図面を渡される。この世界にも当然治水工事の概念はあるのだ。
 河の流れを変えたり、川底を浚渫したり、遊水地を作ったり、堤防を築いたりと生活用水の確保のために用水路やため池が必要である。そのため基礎工事が必要であった。

「いつの間に図面を」

「測量技師の方々に頼んで、河川の方の図面をしてもらいましたな」

「この設計図どおりにやればいいのか」

「はい、細かな補修作業などは、後日、人を送りますので」

 横幅200mの河川まで行く。

「広いね」

「そうだな」

「ルーク、大漁だよ」

 俺が川底を浚渫を行っていると魚が大漁に逃げたので、逃げ道にヴィルマたちが網を張って漁をした。

「ナンボウマスも少しいるな」

 本当は、もうすこし南の川に大量にいるのだが、この辺でもいないわけでもない。

「ハクカ、スズネ、卵は大切に扱ってくれよ」

「うん、醤油につけておくね」

 スズネたち女性陣がナンボウマスの内臓を取り、身は味噌漬けに、卵はザルで粒を分けてから、醤油、酒、ミリンを混ぜた液に漬け込んでくれた。
 他の川魚は、内臓を取って塩漬けにしてから、作業員たちへの食料の予定だ。
 食べられそうにない小魚は、放流した。

 翌朝
 ファブラブルクのテントで

「なあ、ハイン」

「何でしょうか?お館様」

 作業員も警備隊もテント生活なのはどうかと思い相談したのだ。
 家に関しては、新築を建てるので当面の間の家をということである。

「それを解決するためには、王都まで行ってもらいたいですな」

「王都にか・・・もしかして」

「スズネ様方と一緒に行かれてもよろしいかと思います。危険性はほぼないのですからな」

 俺は、スズネ、ハクカ、リッド、ファラ、リーリン、セイ、ヴィルマ、コレットと共に王都まで瞬間移動で飛ぶことにした。
 ハインに指定された場所に行くと、あの男が待っていた。

「いやあ、あのファブレ男爵様が伯爵様になられると、これはめでたい」

 不動産屋のリネンハイム氏が揉み手をしながら俺たちを待ち構えていた。

「(ルーク、大丈夫か?)」

「(さあな・・・確かにこの男なら最適だろうな)」

「ハヤテ様からお話は伺っております。ささ、どうぞ」

 リネンハイム氏の紹介で、またいくつかの物件を見せてもらった。

「取り壊す予定の住居をレンブラント男爵に頼んで移転だろう」

「はい、時間優先というわけです。修理をすれば30年は使えますし、お値段も格安。移住して生活が安定してから建て直してもいいわけでして」

「あの、リネンハイムさん」

「何でございましょうか、ハクカ様」

「普通の住居はこれでいいと思うけど・・・」

 街の中に作る役所、警備隊の駐屯地などの建物にするのはというやつである。

「そちらもすでに手はうってありますです、はい」

 びっくりするほど豪華な建物であった。
 屋敷というより役所に近いような建物である。

「よう、ファブレ伯爵様じゃねえか。ヴィルマも元気そうだな」

「ルーク様といると楽しい」

「そうか、よかったな」

 その豪華な建物の前で俺達を待ち構えていたのは、エドガー軍務卿であった。

「エドガー軍務卿がこの建物の持ち主なのですか?」

「いや、それは違ってだな」

 俺からの問いに珍しくエドガー軍務卿が口を濁らせる。

「私が代わりに説明いたします。やんごとなき方々は、時に様々な事情によりですね・・・」

 日本でもあったな。
 財源不足のためといいながら消費税や所得税や国民年金を値上げしているのに、なぜか無駄で豪華な箱物がたくさんあったな。
 この王国でも少し前までは軍縮気運で足りなかったはずの軍事費になぜか使いもしない軍の施設、高級将校用の保養所などが王都郊外や地方の直轄地には存在するらしい。

「一度作ってしまうと維持費が掛かりますでしょう?こういう施設も大変お買い得なのです。王国軍といたしましても世間様におおっぴらになる前に密かに売り飛ばして少しでも費用を回収したいでしょう・・・」

「エドガー軍務卿、軍事予算は足りないって言っていませんでしたか」

「言うなよ、ファラの嬢ちゃん。俺の前とその前の軍務卿の仕業なんだぜ」

 予算が苦しい時に、あえて豪華な箱物を作らせる。

「陛下に予算の無駄遣いをやめろと言われているというのに保養所は人件費もかかるんだぜ。しかも予算が足りないから宿泊費で利益を出そうとして利用料がクソ高い。だから誰も利用しないときた」

 ここにこの建物が存在するだけでも毎年赤字が出るので、1セントでもいいから引き取ってくれという状況らしい。なくなれば無駄な維持予算を使わずに済むからだ。

「普通に建物を解体すればいいだけの気がするんだが」

「解体すれば世間様にばれますので」

「・・・毎年予算の無駄遣いをするよりはマシだと思うけどね・・・リネンハイムさん、これ建物の売却費用はいくら」

「そうですな」

 リネンハイム氏が建物の売却金額を調べてくれた。
 金板5枚で購入したのである。

「これでいいんですかね?」

「構わないだろう。何しろ公に書類に残すわけにいかねえからよ」

 エドガー軍務卿に金板5枚渡す。

「リネンハイム・・・なぜこの高級保養所の存在を知っている」

「蛇の道は蛇と申しましょうか。ルックナー財務卿閣下、これを機に処分を検討なされては?ファブレ伯爵様やハイン様やアスナ様に恩を売る機会ですぞ」

「わかった。だが、この高級保養所の存在は秘密だからな」

「はい、それは心得ております」

 白金貨1枚で購入したのだ。

「いや・・儲かりましたな。買い取った建物は、レンブラント男爵様に移築していただきますので」

 このような方法で14万件以上も入手した建物は、順次ファブラブルクに移築された。



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