様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「では、そういう事で」

「私にも異存は無いな。ファブレ男爵達が、この領地の発展に寄与する事を願おう」

 天地の森での浄化を終えてから一週間後。
 俺達はファブレ家本屋敷で、再び父との交渉に臨んでいた。
 とはいえ、父は基本的に反対などしない。
 事前にブライヒレーダー辺境伯の使いとして来たセイから条件などを伝えられていたからだ。
 それに、まだ領主である父からすれば、領地の発展に繋がる上に領民達の支持も得られる良案ばかりである。
 トニーの感情など無視しても、それに賛成するのが領主としては常識であった。
 その結果、色々と複数の案件が解決したのだ。
 その隣で蚊帳の外になっているトニーが、一人顔を真っ赤にさせながらプルプルと小型犬のように震えている。
 何か文句を言いたいのであろうが、これ以上の暴言はファブレ家の評判に関わると父から止められているようだ。
 交渉の間、何も言わずに俺を睨み続けていた。

「(まだキレないか?)」

 まず、ブライヒレーダー辺境伯に預けていた遺品の選別と獲得した持ち主不在の遺留品や戦って得た魔物の素材などの鑑定が終了していた。

 事前の交渉により、ファブレ家側の取り分は三割となっている。
 トニーは、相当に期待しているようだ。
 詳細な内訳の書かれた明細書を渡すと引っ手繰るように俺から奪い取ってある数字を探していた。
 彼は簡単な計算しか出来ないので、合計欄を見て幾ら貰えるかでしか判断が出来ないのだ。
 しかし、それで良く誤魔化すなとか言えるものだ。
 自分で確認できなければ、誤魔化すもクソもないと思うのだが。

「これほどとはな……」

 合計 3564万セント

 である。
 それだけ師匠の成果が凄すぎたのだ。

「ヒルゼン、この計算に間違いは?」

「ありませんな」

 南方の責任者であるブライヒレーダー辺境伯が、隣の貧乏騎士爵家に渡す金を誤魔化すなど、まず普通はあり得なかった。
 多少のお金を誤魔化したところで、それで得られる利益よりも失う評判の方が大きいのだから当然だ。

 ミスもあり得ない。

 ブライヒレーダー辺境伯家には、ヒルゼンレベルかそれ以上の財務系の人材が複数存在しているのだ。

「ですが、いくらかの借金は清算できます」

 だが、それを聞いたトニーは激怒していた。

「いつ返すかなど、我らが決める事だ!」

 とは言っているが、間違いなく返す気など無いのであろう。
 そういう事をしているから、ブライヒレーダー辺境伯に全く信用されていないという。

「貴族が借金をするのは普通ですけど、利息がたまるだけですので返済は早い方が良いのでは?」

 トニーに何か言っても無駄に時間を使うだけなので父に聞いてみる。

「そうだな」

 父のこの一言で、天地の森での仕事に関わる話は終了していた。

「あとは、今後のファブレ男爵達の冒険者としての活動であるか……」

 この領内に拠点を作り、そこから俺の『瞬間移動』の魔法を使って天地の森で狩りを行う。
 他にも定期的なバザーの開催や領内には一切のギルドがないので、その他の業務というのを俺達が引き受けられるようにという話もあった。

 そして、それらの仕事で得られた報酬から、いかほどを税としてファブレ家に納めるのか?

 これも既にブライヒレーダー辺境伯も挟んで税率は決まってたのだ。

「我が領内での換金は難しいからな。天地の森で獲得した素材などは、ブライヒブルクの冒険者ギルドで換金後。その額の二割を納める事とする」

 本当は、ブライヒブルク支部にも換金額の二割を上納金として納める必要があった。
 だが、合計で四割も取られてしまうと俺達冒険者の方から不満が出てしまう。
 そこまで搾取されるのは、さすがに嫌だからだ。
 なので、ブライヒレーダー辺境伯がその辺をギルドと上手く交渉していたのだ。
 結果、ブライヒブルク支部側への上納金は無くなっていた。
 こうなるとギルド側の一方的な損失にも見えるのだが、冒険者から買い取った魔物の素材の転売でギルドも十分に利益を得ているので、特に問題にはなっていないようだ。
 それに今回の件は政治的な意図も絡んでいる。
 王宮の意向もあり、俺やブライヒレーダー辺境伯に無理に上納金を要求しなかったらしい。
 この話は、あとでブランタークさんから聞いたのだ。

「とにかく得た利益の二割を納める事と詳細な明細の提出を月に一度求める」

「わかりました」

 その明細の確認はヒルゼンの仕事なのだが、彼は仕事の部分では手を抜くような男ではないし、父やトニーのために俺に難癖を付けて利益を掠め取るような真似もしない。

 その点では、彼は信用できた。

 何しろ、内心では父を恨んでいるのだから。

「ルーク様が、この領地で冒険者として活動を開始する。実に素晴らしい事ですな」

 父から明細書のチェックを頼まれたヒルゼンは、間違いなくわざとであろう。
 オーバーアクションで大喜びしをしていた。
 正式には、冒険者としての活動を隠れ蓑に後々厄介の種になりそうなトニーの排除が目的なのだ。このままだとこの領地で近いうちに反乱が起こるのは目に見えているのだ。この反乱でハクカの親が巻き込まれては困るのだ。ぶっちゃけ領主は、ルパンになってもらえばいいのだ。少なからず、領民に休みがない開墾といった失政は侵さないからだ。休みさえあれば、この領地の食だけはよくなるのだ。
 ヒルゼンは、間違いなくそれに気が付いているのであろう。
 彼からすれば、俺の決断は万々歳な出来事なわけだ。
 そして、そんなヒルゼンをトニーが鋭い目付きで睨み付けるが、彼はまるで気が付いていないかのように振るまう。

「久々に計算し甲斐のある明細書なので楽しみにしています」

 普段は、各家の麦の収穫量からどのくらいの税を納めるのか? 

 いつもはこのくらいしか計算が無いので、久々に会計役らしい仕事が出来ると喜んでいる風に見える。
 だが実際には、父やトニーの領主としての能力をバカにしているようにしか見えなかった。
 それに気が付いたトニーは、顔を更に真っ赤にさせながらヒルゼンを睨み付けていたが、父は特に表情に変化は無い。
 ヒルゼンもトニーに睨み付けられている事にすら気が付かないフリを続けていた。

「(ヒルゼンは、やはり油断ならないな……)」

 俺が、トニーを暴発させようと挑発しているのに気が付き、それに何も言わずに手を貸しているのだから。

「あとの細かい件は、また相談して決めるという事で」

「そうだな」

 こうして、父との交渉は無事に終わっていたのだ。
 ただ一人、トニーは蚊帳の外に置かれ、顔を真っ赤にさせながらその場に立ち尽くしているのであった。



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